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テレワークでの生産性を高める働き方―“朝メール”で自律的時間の使い方を学ぶ

投稿日:2020/07/23更新日:2021/07/28

本記事は、「【特集】withコロナの時代「新しい時代の働き方」〜小室淑恵氏(ワーク・ライフバランス代表取締役社長)」の動画インタビューの内容を書き起こしたものです。(全2回前編)

パワーの強い側も弱い側も一気に働き方を変える千載一遇のチャンス

――新型コロナにより、働き方が変化しています。最もインパクトが大きいことは何でしょうか。

小室:私たちは起業して14年、働き方改革をやってきました。「こんなにも変わらない社会なのか。そう思って地道にやってきたのに、こんなに急に変わるとは」と、大変驚いています。そういう意味ではいいことだと思ってはいます。

今までは1社1社、もしくは1チーム1チームが「変えたい」と思っても、「取引先が」「上司が」とステークホルダーが「うん」と言わなければ結局変えられない。変わりたいと思ったタイミングがそれぞれ違い、結局変われないままで終わる、ということが起きていました。ですが、今回は国を挙げて、パワーの強い側も弱い側も一気に変わらなくてはいけない。「いっせーのせ」で一緒に変われるということなのです。「Web会議なんて失礼だ」と言い張っていた人たちが、「Web会議でやろう」ということになりましたし、あれだけ強い抵抗を受けてきたオンライン診療も、一気に進んでいる。

パワーの強い側も弱い側も、一気に合意して展開してきているというのが、一番この働き方にインパクトをもたらしていると思っています。千載一遇のチャンスです。この時期に、今まで「ここを変えればいいのに」と思ってきたことを臆せず提案していくべきです。どうしたら少しでも従来のやり方より生産性が上がるかということに関しては、もう偉い人は決めてくれません。個々人がどんどん提案をして、下から上げていくしかないと思います。

偉い人が自宅からWeb会議に入れないなどの状態の企業も多く、経営者だけに期待すると全然変化しません。現場で働いている方たちが、具体的にこの部分を変えてほしいんだということを、ピンポイントでどんどんと提案をあげていって、ゴーサインをもらったらチャレンジしていくべきだと思います。

「頑張っている」雰囲気ではなく、戦略と見える化できる人が評価されるように

――在宅勤務で成果を出し、評価されるためにいますべきこととは。

小室:皆さん、今、不安を感じているのではないかと思います。自分の一日がどれくらい、誰に見てもらえているのかという不安がありますし、生産性が高かったのか低かったのかも分かってしまう。今までの評価は、実は雰囲気でされていたんだなということが明らかになってきていると思います。

ある企業では、評価を「時間当たり生産性」にしてみたら、なんと上位20人のうちの6割が短時間勤務の女性だったということがありました。「あの人は時短だから」といってB評価C評価といったような評価を受けていた人が、実は時間当たり一番稼いでいる人だった、なんていうことが本来はあるのです。

在宅で、家族も帰宅するので残業もできなくなると、「限られた時間でどうやったら成果を出せるか」、そして「成果をきちんと見える化して伝えられるかどうか」ということが、すごく大切になってきます。

これは、本当は在宅勤務とは関係なくやっておくべき習慣なのですが、お勧めしたいのは、朝、自分の仕事を30分単位でブレイクダウンして「何時何分から何時何分までは何をやる」という一日の戦略を立てて、上司、同僚にメールすること。これを弊社では“朝メール”と呼んでいます。自分の時間を自律的に使うトレーニングになります。

そして夜になったら、今度は何が終わり、何が終わらなかったのか。「優先順位の付け替えをしたから、これは終わらなかったけれども、優先順位は下だから大丈夫です」「今日優先順位の高いものを、ここに突発で入ってきたのでやりました」など、こういう振り返りをすると、どういう戦略を立てて一日を始めて実際に何までできたのかというのが、きちんと分かる。

そうすると雰囲気で「あいつ頑張ってるな」というのが見えなくても、きちんと仕事内容が届くので、上司は「大変自律的に仕事をしている人だ」ということで、評価を高めることができます。

一方で、今まで会社に遅くまで残ってすごく疲れた感じでPCに向かっている、朝一番にいつもいるし、自分が帰る時にはまだ帰っていないし、「頑張っているな」という風に思っていた人から、朝の戦略も来なければ振り返りも来ないという状況になると、「あいつは何だったんだろうか」ということになるんです。これは、自分がどれだけ常日頃から戦略を持って、見える化して仕事ができているかということですから。

実際弊社では、「朝夜メールを立てている人しか在宅勤務はできない」というふうに、権利と義務の関係性にしています。コロナ禍に関係なく、ずいぶん前から、在宅勤務は、事前申請なしで、その日の都合でその場で在宅勤務に切り替えてもよいという形でやっています。でも、朝夜メールをしない人にはその権利はないとしています。

これをやるといいことは、メンバー全員の朝夜メールも見ることで、業務の効率化が進むことです。実は月末には全員で同じボールを拾いに行ってしまっていたといった業務の重複がわかります。他のメンバーに頼んだ仕事をその人がちゃんとやってくれるか不安なときもありますよね。そういう時は、その人の朝メールを見に行くとちゃんと入っている。

「でもなんで午後に入れたんだろう、午前にやってほしかったのに」ということがあると、「私は、その仕事を受け取って、午後に体裁を直して提出しなきゃいけないから、午前にやってほしいんです」ということを朝一番にリクエストする。そうすると2人のバトンがちゃんと渡って、夜に仕事がきちんと完了されるというようなことができます。チームメンバーの連携を良くするためにも、朝夜メールはすごく大事なのです。

オフィスだったら「ねえねえ、ちょっと」というような感じでやっていた連携を、この朝夜メールで上手にできますし、自分の評価も上がります。この朝夜メールで2割ぐらいの残業は減るというのが、私たちのコンサルの結果なので、騙されたと思ってぜひやってみてください。

働きやすさのために、お互いの事情を開示し寛容になる

――在宅勤務をする際に「仕事」と「家庭」をうまく両立させる方法とは。

小室:いま、家の中が一番の非常事態になっていると思います。

テレワークは本来、子どもは基本的には預けて、仕事に集中できる体制を整えてやるべきもの。これが平時のテレワークです。今回のような、学校も保育園も閉まって子どもだらけの中で仕事をするのがテレワークの概念ではないのです。「やっぱりテレワークなんて生産性は上がらないよね、だめだよね」と、今回のことでトラウマになってテレワークの本格導入をやめてしまうことのないようにしていただければと思います。

今回は非常事態です。そうすると、家族がいる中で仕事をしていくことになります。夫婦共働きの家庭だと、なぜかお父さんは自分の書斎にこもって昼ご飯だけ食べに出てきて、シンクに食器を置いてまた部屋に戻っていくというような、「あなただけ通常業務ですか」みたいなことが起きるんです。「パパが会議しているから、子どもたちを静かにさせなきゃ」といってママがすごく苦労していたりする。

でも今は、家族一丸となって、いかに仕事もやれる環境を作りながら、子どもたちにも精神的なトラウマを与えないように楽しい日常が提供できるか、工夫して乗り切っていくしかありません。

まず前日の夕飯の時に「明日のあなたの重要な会議何時?」と聞きます。そして先に配慮を示します。「2時~4時ね、分かった。2時~4時は、子ども2人とも静かにさせとく」。「ところで私は午前なのよ。私の会議の間は、あなたお願い」というふうに、子どもの声が入っちゃいけないような何かとてもお堅い会議があった場合は、そこの時間をお互いに助け合うということで、夫婦でやっていけたらいいなと思います。

もう一つは、社内会議や、少し古くからのお客様であれば、家庭の状況をお互いに開示していくことが大事だということです。こっちも苦労して子どもの声を入れないようにしていたら、向こうも苦労していたなんてナンセンスですので、「何歳の子がいるんで、声が入ってしまったらすみません」なんていうことをお互い最初に言ったり。

自分に事情がない方で、会議の相手側が子どもに「ママ~飽きちゃった~ねえ~~!!」と話しかけられてしまって対処に困っているときは、「飲み物を取りにいきたいので3分間休憩にしませんか」というふうに提案してあげる。「3分後にまた再集合で」といって、画面をオフにして立ち去ってあげる。そういうふうにすると、相手も3分間で子どもの状況を立て直してまた会議を始めることができる。

0歳、1歳、2歳の子どもがいるようなご家庭は、大体12時から1時半ぐらいまでは寝かしつけにすごく苦労する時間帯ですので、ランチタイムミーティングは入れない。2時ぐらいまでは、あんまりシビアなミーティングを入れないというふうにしてあげると、ぐっと働きやすくなると思います。

こんなことを、お互いが寛容になってやっていく。子どもがいるということだけではなく、ペットを飼っている場合もあります。ピンポンが鳴るとすごく吠える犬もいますよね。別に子どもの事情だけではなくて、いろんなお互いの家のことを開示しあう。平時に戻ったときに「あのワンちゃん元気ですか」と言ってみたり。そうやって、その後ぐっと親しい関係になれるというようなポジティブな感じで、お互いの家庭環境を把握していかれるといいのではないかと思います。

後編につづく)

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