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カスタマイズ品は意外にコストパフォーマンスが悪い

投稿日:2018/03/10更新日:2019/04/09

カスタマイズ品『法人営業 利益の法則』から「カスタマイズに潜む、負の側面」を紹介します。

BtoBの営業担当者を悩ますのが個々の顧客からのカスタマイズ要求です。営業担当者は仕事を取りたいですし、顧客にしっかり便益を提供して満足してもらいたいということもあり、往々にして際限なく顧客のカスタマイズ要求を飲んでしまいがちです。しかしこのようなことをしていては、コストは際限なく膨らみ、「仕事は取れたけれど、会社全体として頑張った割には儲けが出なかった」ということになってしまいます。事実、それで収益性を下げている企業は少なくありません。安易なカスタマイズによる営業に頼らないためにも、営業担当者は、標準品のメリットを正しく理解し、それを顧客にもしっかり伝えることが大切です。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

◇    ◇    ◇

カスタマイズに潜む、負の側面

カスタマイズを顧客に提供するか否かは、法人営業における利益実現の方法(利益化シナリオ)に大きく影響する意思決定です。法人営業にとって功罪の両面を併せ持つカスタマイズという営みに焦点をあてて見ていくことにしましょう。

カスタマイズのプレッシャー

「自分のニーズは他人とは違う」という意識は、一般消費者にも当然ながら存在します。ところが一般消費者との取引金額は小さく、関係も単発取引で終わることが多いため、買い手(一般消費者)の交渉力はさほど大きくならないのが普通です。また個人営業の役割は「作られた提供物を販売する」点に絞られているため、顧客側も製品やサービス自体に関するカスタマイズを営業マンに対して強く求めてくることは少ないものです。

一方、法人営業の相手は取引金額が大きく、関係が継続的な大口顧客が多いことに加え、購買担当者が豊富な製品知識を持っており、買い手の交渉力は俄然大きくなりがちです。しかも法人営業の担当者は販売のみならず、提供物の設計までを担う「会社の代表」であるため、営業マンは顧客からの製品・サービスに関する要求に、直接さらされることになるのです。

ところで本来なら、カスタマイズせずに標準品のまま売買することは、提供側の企業のみならず、顧客企業側にもメリットがあることです。非カスタマイズの標準品を買う側のメリットとしては、図のようなものが挙げられます。

図1
実際に法人向けのビジネスで、徹底した標準化戦略で成功した事例もあります。企業向けにERP(統合基幹業務システム)ソフトウェア「COMPANY」シリーズの開発・販売を手がけるワークスアプリケーションズは、オーダーメイド開発が常識だったソフトウェア業界において、創業以来ノーカスタマイズの姿勢を貫いています。同社が創業した当時、日本の大企業の多くは、「自社には自社だけの業務のやり方がある」と信じ、大手ベンダーに自社向けのソフトウェア開発を委託していました。あるいはSAPやオラクルといった海外ベンダーの汎用パッケージソフトを導入した後に、日本の業務プロセスに合わない部分を、巨額のコストをかけて自社内でカスタマイズして利用する企業が多数派でした。

1996年に発売されたワークスアプリケーションズの製品は、多数の顧客の要望を吸い上げて開発されており、日本企業の業務手順のほぼ100%を標準機能として搭載し、標準品ならではの高い完成度を実現しています。しかも導入に関わる費用は数千万円であり、数億~数十億円規模となる従来のオーダーメイド型に比べて、顧客企業のシステム投資効率向上に大きく貢献しました。さらに購人後も、ユーザー企業からの声を拾いながら定期バージョンアップを繰り返して、さらなる利便性向上を図っており、ノーカスタマイズならではの顧客メリットを存分に提供しているのです。

標準化戦略成功の条件

ただし、こうした標準化戦略が成功するには、一つの前提があります。それは「標準の製品やサービスが、機能面で十分差別化されていること」です。

個人向けビジネスであれば、製品の基本機能面での差別化が難しい場合も、情緒的便益や自己表現的便益による差別化の道が残されています(製品の機能から直接得られる効用を機能的便益と呼ぶのに対し、製品の購買や使用を通じて顧客が得る感情面での価値が情緒的便益です)。

例えば高級自動車のBMWで言えば、車の性能のおかげで楽しめる抜群のハンドリングは機能的便益で、その走りから得られる疾走感や昂揚感は情緒的便益にあたります。またその製品から得られるライフスタイルや自己イメージを自己表現的便益と呼び、例えばBMWを所有することで自身の社会的成功を確認することがそれにあたります。

このように、消費財では機能面以外での差別化余地が大いにあるのですが、法人顧客の購買意思決定においては、情緒的便益や自己表現的便益が影響することは稀です。顧客は、あくまで経済合理性に基づいて判断をするため、標準品が機能面もしくは価格面で十分差別化できないのであれば、製品・サービスの基本機能や提供方法に何らかの機能やバリューを付加(つまリカスタマイズ)して差別化を訴求せざるを得なくなるのです。

(本項担当執筆者:山口英彦 グロービス経営大学院 教員)

『法人営業 利益の法則』
山口英彦(著)
1382円

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