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試練を乗り越えて歩め-その4)「無念」の敗戦を通しての大きな学び

投稿日:2008/08/07更新日:2020/02/13

「あと三つ勝てば、優勝です。ただ、予選枠抜けしたチームは、強いところばかりなので、油断ができないです。

予選枠抜けは、思ったより激戦で、強豪の東京代表校(3から5段クラスが主将、副将を務めるチーム)が意外にも軒並み負けています。

さすがに、神奈川、埼玉、東京の地方トップ通過組は、決勝トーナメントに残っていますが、北海道、香川、宮城、長崎も強く、強豪校を破って枠抜けしています。決勝トーナメントに残っているのは、三将以上が全員有段者だと思っています。

順調にひとつ勝てば、準決勝で優勝候補の北浦和にあたります。北浦和が、主将が6段、副賞が5段、三将が3段です。これと匹敵する棋力があるチームが残っているものと思われます。実力がほぼ拮抗した中での際どい戦いが待っています。

決勝トーナメントに残った他の7チームは、全部4年生から6年生で構成されているのに、わがチームの場合には、低学年が二人もいるので、勝つか負けるかは精神的な要素が大きいと思います。

いくら三将が強いといっても、まだ小学校1年生です。副将でやっと小学校3年生です。精神的にうまくのせることができれば、実力を発揮していい線行くと思っていますが、気力で勝てるかどうかが、勝負の分かれ目になると思っています。「勝ちたい」という願望が強い方が勝つと思っています。そこの気持ちまで持っていくのが引率者兼親の立場である僕の役割です。

したがい、僕も一緒に戦っている気持ちになっています。
堀3兄弟&パパチームの健闘を祈っていてください。m(--)m

わがチームは、すでに全国8位以内は確定しています。
泣いても笑ってもあと3つです。どこまで行けるかですね。

結果がどうであれ、子供たちを褒めてあげたいと思います。(^^)」

という趣旨のメールを、囲碁仲間のメイリング・リストにアップした。そうなのである。「泣いても笑ってもあと3つ」なのである。いつものように、4人で日本棋院まで歩いて向かった。前日よりは、皆落ち着いていた。

第一回戦の相手は、仙台市立八幡小学校(宮城)であった。主将どうしは、以前別の大会で会ったこともあるので、比較的親しい様子であった。和気あいあいとした雰囲気の中で、戦いが始まった。結果は、ここでも副将が星を落としたものの、2-1で勝ち進めることができた。副将の調子が心配であった。

結局ベスト4に残った小学校は、全て首都圏のチームとなった。東京2チーム、埼玉と神奈川がそれぞれ1チームであった。他の3校は、常連校であった。僕らのみ初出場であった。これから首都圏の強豪校の星の潰し合いが始まることとなる。

僕らの準決勝の相手は、優勝候補筆頭の埼玉県代表の北浦和小学校であった。気合が入る。例によって、審判長の合図で一斉に対局が始まった。決勝トーナメントには、小学生の部8チームのみ残り、中学の部を合わせても16チームしかないので、とても静かな雰囲気である。石を囲碁板に置く「パシ」という音と、囲碁時計を押す「パーン」という音が静かに鳴り響いていた。そして、対局場のまわりを報道陣、親・引率者が静かに見守っていた。

最初に早打ちの三将が終局したようであった。途中の表情は悪くなかったが、結果が気になるところだ。石を整地して、お互いに陣地の数を宣告し合い、お辞儀をして石をしまい、再度お辞儀をして、僕のところに報告に来た。緊張する瞬間である。三男の口からは、「負けちゃった」との言葉が初めて出てきた。僕は、三男を抱きしめながら戦況を説明してもらった。途中まで良かったのに最後に逆転をされた、というのである。今まで、予選を含めて、8戦全勝で来た三将が初めて敗北しことになった。勝利の方程式が崩れ始めていた。主将と副将双方が勝たなければ、勝ちあがることができない。

そして、副将が終局を迎えた。結果は力及ばずであった。この瞬間に、堀チームの敗退が確定した。孤独な戦いをしていた主将も結果がわかってしまっていたので、粘れなかったからか、途中で投了をした。僕らの夏の戦いは、結局準決勝どまりとなった。

堀チームは、三位決定戦で、東京地区予選で撃破したチームにも敗れ、結局無念の全国4位という結果であった。本来ならば、初めてチームを組み、東京予選に出て、全国大会にも出場し、しかも決勝トーナメントにも勝ち進んだのだから、「大健闘である」、と言いたいところだが、僕らは優勝を狙っていたので、とても残念であった、というのが正直なところである。

最後には、精神的弱さが出てしまった感じがしていた。子供の囲碁は、棋力が拮抗していれば、最後は精神力の差で勝敗が決まる感じがする。囲碁を始めて実質2年間強なので、その経験の少なさの分が、最後は勝敗の差となって表れたのだと思う。

思い起こせば一昨年の7月に、友人の囲碁サロンに頼み込んで子供囲碁大会を開催してもらった時のことである。長男・次男が初心者ながらも参加して、参加者が少なかったから、弱くてもトロフィーをもらうことができたのである。これがきっかけで、囲碁に真剣に取り組み始めたのである。大会に出始めたのも、一昨年の12月が初めてである。

他のチームは、数年間辛酸をなめながらも、負けずの精神で歯を食いしばりながら挑戦を続けた。最後に栄冠をつかむことを夢見て努力してきたのである。囲碁を始めてたった2年間程度で僕らが栄冠をつかめるほど、囲碁の神様は甘くないのであろう。

「無念」とは言っても、子供たちにとっては、大きな収穫を得たことになった。今回は、凄いプレッシャーの中で戦う試練、という格好の機会を得たのである。また当然、これを目標に努力をしてきた結果、多少は棋力がついた。努力が必ず実る、ということもわかってきたことと思う。この「敗戦」を機に、これから更に実戦を積んで、ギリギリの中で勝ち切る精神的強靭さを身につけて欲しいと思う。

そのためにも、全国4位で喜んでいてはいけないのである。この悔しさをバネに、次に向かっていって欲しいのである。だからこそ、「無念の4位入賞」なのである。

来年は、長男が6年生になるので、長男・次男・三男チームで団体戦に出場できるのは最後になる。もしも、そのチームで念願がかなわなかったら、次男・三男・四男チームがある。そして、最後が三男・四男・五男チームである。全部で3つの組み合わせがあり、それぞれ2年間、合計6回のチャンスがある計算になる。

最初の1年目は残念ながら全国4位の結果であったが、幸いにもあと5回、堀3兄弟チームのチャレンジができることになる(ただし、全員が小学校の代表に選ばれることが前提になる。最近、我が小学校もレベルが上がっているので、代表争いも熾烈になる可能性がある)。

そういう厳しい体験を子どもの時にしてくれると、大人になってからも試練を乗り越える精神力が身についていくのだと思う。

このコラムの「試練を乗り越えて歩め〜その1)豊かさの中での人間的成長」で述べたが「愛情があるならば、試練を与え続けるべきだ」と、僕は思っている。試練を経た分だけ、人間的な成長を遂げることができるのである。

大会の表彰式が終わり次第、大きな盾と賞状を手にして、会場を後にした。徒歩の帰り道に、小学校に立ち寄り、学校で勤務していた先生に盾と賞状を預けて、戦績を報告し、家路についた。

家に着くなり、荷造りの総仕上げであった。堀家は、その日の夕方の便で豪州のパースに向かう予定となっていたのである。これが、昨年の夏、今年の春に次いで3回目のパース滞在である。今年の夏も、冬のパースにて、一カ月間子供たちは現地の小学校に通学するのである。日本は夏休みだが、パースは冬なので普通に授業をしている。従い、冬の豪州は英語の修得と異文化交流には、格好の場所なのである。

3人の棋士たちとその弟は、翌日から異国の地にて、異文化の中、異言語の学校に放り込まれるのである。
これも親が与える、試練の一つなのである。囲碁も大事だが、世界で活躍できるようになることも大事なのである。

飛行機がゆっくりとゲートを離れ、成田を飛び立った。
機内では疲れをいやすように、すぐに眠りについた。その上に毛布をかけてまわり、僕も眠りにつくことにした。

「コラム:試練を乗り越えて歩め」は、まだまだ続くのである。

2008年8月5日
パースにて執筆
堀義人

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