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【日経コラム】TPOに応じた装いを楽しむ

投稿日:2017/05/10更新日:2019/04/09

「さあて、今日はどういう服を着ようかな」。毎朝スケジュラーで誰とどこで会うか確認し、着る服を決めるのがルーチンになっている。

グロービスは、大学院とベンチャーキャピタル(VC)を運営している。大学院の学長として企業の経営者に会ったり省庁や官邸で会議に参加したりするときは、スーツやネクタイが適切だ。一方、VCの代表パートナーとして起業家に会うときは、ジーンズやTシャツのカジュアルな装いの方が適切なのである。業務によって着ていく服装がまったく違うのだ。

20~30代の起業家の服装はカジュアルが基本だ。そこに50代の資本をもったキャピタリストがスーツで現れたらどう思うだろうか。ビビらせてしまうに違いない。VCは株主や投資家の立場だから相当な力を持っている。資金調達を目指してプレゼンテーションに来る起業家の緊張感はすごい。だから僕はなるべくカジュアルな服に身を包み、可能な限り率直な対話ができるような雰囲気をつくりたいと思っている。

大学院の学長としては、スーツを着ることが多かった。だが、最近ではTPO(時と場所、場合)にあわせて着る服を変えている。在校生だけを対象とした「学長セッション」ではなるべくカジュアルな服装にし、大学院生とフランクに意思疎通できるよう気をつけている。スーツではどうしても相手との間に壁をつくっている感覚があるからだ。

入学式では紋付き羽織はかまを着る。大阪校と名古屋校とで1日に2つの入学式を実施するときは新幹線での移動が大変だ。だが、学長が羽織はかま姿で式辞を述べると式典の格式が上がり、普段とは違う空気感を醸し出せる。

卒業式にはアカデミックガウンを着る。学生は黒のアカデミックガウンに身を包み、学びを得た充実感に浸るとともに新たな門出に向けて気持ちをぎゅっと引き締めることとなる。

日本版ダボス会議「G1サミット」のドレスコードはカジュアルだ。スーツもシャツもドレスも脱ぎ捨ててTシャツやセーター、ジーンズで話し合う。大臣やノーベル賞学者であっても胸襟を開いたオープンな会話ができ、互いに親しくなり、皆で協力していこうという共同体意識が生まれるからだ。

僕がオーナーとなっているプロバスケットボールチーム、茨城ロボッツの応援時は必ずロボッツのチームカラーの真っ青なTシャツに身を包み、スニーカーで飛び回っている。選手や他の観客と一体になれる。応援で出す声も自然と大きくなるからだ。

グロービス社内の服装は原則自由であるが、社内のパーティーや社員旅行では、あえてドレスコードを設けて一体感を醸し出すこともある。普段とまったく違う装いを全員ですることで、仕事の延長戦から脱して異次元空間に入り込んだ感覚になり、盛り上がるからだ。

海外の起業家の中には常にグレーのTシャツしか着ない人がいる。毎朝服を選ぶことにエネルギーを使いたくないからだという。その主義主張を否定するつもりはまったくない。

だけど、自らを表現する手段としての服装を活用しないのはもったいないと思う。何よりもTPOに応じて服装を変えて楽しんだ方が、人生が豊かになると思っている。

園遊会などの式典ではドレスコードにしっかりと合わせたフォーマルな服装が適切であると思う。一方、比較的自由度が高い場においては、可能な限り明るい色を選び、人と違う格好をした方がよいと思う。その方が場が華やいで明るくなるし、多様性が増し面白くなるからだ。

これからは差異化と多様性がますます重要な時代になる。常に同じ格好をするのではなく、TPOに応じた装いを意識したい。装いにより相手を尊重し、場の雰囲気を変え、自らを表現することを楽しみ続けたい。
 

※この記事は日経産業新聞で2017年5月5日に掲載されたものです。
日本経済新聞社の許諾の元、転載しています。

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