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日本のエネルギーの現実、知っておくべきこと~原子力・安定供給・環境負荷

投稿日:2015/07/02更新日:2019/04/09

日商会頭・三村明夫氏×日本エネルギー経済研究所特別顧問・田中伸男氏×国際環境経済研究所理事・竹内純子氏×地域から国を変える会理事長・朝比奈一郎氏
G1サミット2015
第5部 分科会B「エネルギー政策」

2014年4月に閣議決定されたエネルギー基本計画では、原子力発電所の再稼働の方針が明記された。しかし将来的な電源比率については、今後の課題として残されている。東日本大震災後、日本のエネルギー自給率は6.0%まで落ち込み、化石燃料への依存増大は国富の流出を招き、2013年には過去最高となる11.5兆円の貿易赤字を記録した。原油供給が中長期的に逼迫し、温室効果ガスの排出増大が懸念される中で、安定的なエネルギー供給を確保し、持続的な経済成長を実現するために、日本が取るべきエネルギー・ミックスとは何か。その実現に向けて、どのような点を考え、実現していくべきか(視聴時間1時間14分37秒)。

竹内 純子氏
国際環境経済研究所 理事・主席研究員
田中 伸男氏
財団法人日本エネルギー経済研究所 特別顧問
三村 明夫氏
新日鐵住金株式会社 相談役名誉会長
日本商工会議所 会頭
朝比奈 一郎氏(モデレーター)
NPO法人地域から国を変える会 理事長

【ポイント】
・原発事故の直後、エネルギーのベストミックスをテーマにした委員会で話し合いを重ねた。提言のうちでどういうベストミックスが日本に必要なのか、政府が責任をもって国民を説得するべきだったが、当時の民主党政権は結局、2030年までに原子力技術をゼロにするべくありとあらゆる努力をすると結論づけた。委員長であった私は、はっきりした民主党の意見が出るまでは会議を中断すると申し上げた経緯がある(三村氏)

・エネルギーの価格は大きく乱高下するのが常識。省エネや、中東に依存しない多様なエネルギー構造を持つことが、先進国のエネルギー安全保障上の問題。その際には、原子力が大変重要。まったく何もない日本がどうやって生き残るかを真剣に考えねばならない。原子力を動かすリスクもあるが、動かさないリスクも大きい。イラン危機は、1000年に1度の津波よりは頻繁に起こる。政府はこれに対してほどんど何も準備していないが、想定外をつくらないことが大事(田中氏)

・前職の東京電力での勤務から、停電が社会にとってどれだけ大きな損失かということと、電気料金の負担の大きさを頭と身体にたたきこまれた。その後、エネルギー政策と温暖化を担当したが、当時は温暖化がエネルギー政策の最優先課題。1990年比25パーセント減の目標を掲げた裏では、原子力に5割を頼まざるを得ず、20年で原発を14基新設することに。ある意味、単一の価値観での議論の結果であったと思う(竹内氏)

・「エネルギーは水や空気と一緒。なくなると非常に関心が高まるが、あるときにはほとんど関心がない」と言われてきた。民主党政権時に出た「日本再生戦略」では、エネルギーが頁数として20パーセント近くを占めて重点3分野の1つであるのに対し、自民党政権における「日本再興戦略」では、ページ数の5パーセントに過ぎない。原発事故があった直後の関心が薄れてきていることを示している(朝比奈氏)

・原子力発電所稼動時は、18パーセントから19パーセントほどだった日本のエネルギー自給率は、最近では6パーセント。国際的には非常に低い。経常収支という論点からは、2014年は現統計上で最小の数字。10兆円ある貿易赤字のうち、エネルギー関連だけで3割ほど。また、CO2排出量や燃料輸入額も震災以降、増加している。電力料金は高騰(朝比奈氏)

・エネルギー政策の基本視点は、安全性(Safety)を前提に、安定供給(Energy Security)、コスト低減(Economic Efficiency)、環境負荷低減(Environment)を追求・実現すること。70年代から順にこれらの視点が出てきた。2000年代は本来、資源獲得が大きな問題であったが、事故の影響もあり、安全性が叫ばれている(朝比奈氏)

・ヨーロッパのエネルギー政策および環境政策は、非常に参考になる。隣の国と電力線を結び、パイプラインを連携させている。今後は、全体28カ国でエネルギーユニオンをつくり、今までよりさらに一歩踏み込んだ協力体制を作ろうとしている。サスティナビリティとセキュリティを同時に得るのがエネルギーユニオン(田中氏)

・日本単独では同じことはできないので韓国・ロシアとネットワークを結び、パイプラインをつなぐ。アジアの中に入り、日本のエネルギーセキュリティを考えねばならない。この論点が、今の議論にかけている。

・ロシア・韓国・中国は信用できないというが、アメリカも信用はできない。多様にして分散することが重要(田中氏)

・エネルギーは量が足りなければ話にならない。3E+Sとはいうけれど、基本は2E+S。量が足りて、安いのが大事で、最後に環境性。セキュリティの部分は本来、3つのEすべての観点で追求しなければならないはずだが、3・11以降は「S=放射能からの安全」と理解している消費者が多くなっている(竹内氏)

・他国とのエネルギーユニオンにおいては、EUとアジアの違いは考慮するべき。アジアは、各国の需要が伸びている。また、エネルギー政策だけの議論は危険。以前、尾瀬に太陽光発電パネルを置こうとしたら景観の問題から反対された。エネルギーをつくる側の価値観だけでなく、多様な価値観を意識した議論が必要(竹内氏)

・3E+Sは、歴史に裏づけられてきた1つの常識。いずれにしてもこのバランスをとらなくてはいけないのは絶対的な事実。どのエネルギーも3E+Sを満足させない。日本の6パーセントの自給率は、OECD諸国で最低。産業界も実感しているはず。順調に経済が運行していれば、必ずエネルギーを使う。逆にいえば、エネルギーがなくなったら、今の活動はまったく維持できない(三村氏)

・中小企業は原発事故後、電力消費が28パーセント上昇。ところが、90パーセント以上はこれを転化できていない。従業員の給料カット、設備投資の抑制といったかたちをとっている。また、8000万KWの自然エネルギー導入が許可されており、20年間で50兆円の余計なコストを消費者は払わなければならない。原発反対、あるいは自然エネルギー賛成という意見はあるが、トータルとしてエネルギーミックスをどう考えたらよいかという観点に常に帰ることが必要。日本のような自給率であれば、エネルギーセキュリティという項目が非常に重要(三村氏)

・かつて切り札だった原子力政策を、エネルギーミックス全体の中でどう考えるべきか。去年、「エネルギー基本計画」の中で、原子力は重要なベースロード電源であるとされた。これは、安定的な質のいい電源のこと。この割合が実際にどうなるかが大事になる(朝比奈氏)

・政府が決めたエネルギーミックスについて、電力事業者が実行を担保してきたが、日本の電力業界の自由化が決定すると実行を担保するのは誰か。事業として、何十年後かの電力の相場がわからない状況下で、一基建てるのに5000億6000億、作るのに20年30年かかる原子力事業に投資しなくなる。エネルギーセキュリティを考えて、事業環境をどう整備していくのか(竹内氏)

・自給率が非常に低い日本は、有力なエネルギー源を捨て去ることはできない。これは厳然たる事実。原子力は、技術開発を何とかしてもらい、これを使いきらねばならない。しかし、原子力発電業界の地域独占は変えねばならない。独占によって自主的な合理化努力が損なわれ、他の業者に関する優越的地位の乱用がなされた。いかに問題があろうと自由化を推進するべき。自由化の推進と、日本が絶対に原子力をもつべきだということをどう結びつけるのかが次の議題(三村氏)

・電力会社にコスト意識がない点も多々あるが、修繕費などは、事故が起こるまで放置する形にすれば、削れてしまう。今まで日本の電力会社は事故が起こる前に年数で処理してきた。コスト削減のためにそれを変えることで、事故の可能性があることだけは申し上げておきたい(竹内氏)

・ベストミックスで原子力は、福島前の3割。セキュリティ上はそうするべき。しかしその場合、軽水炉でなくともよい。軽水炉はもともと軍事技術で、そもそも核拡散性が高い。そのため、今の軽水炉を徐々にやめていくのが正しい選択。追加的なサスティナビリティの条件が必要で、万が一のときでも放射能を出さず、ごみ処理を減らし、最終処分が簡単にでき、核不拡散であること。こうした条件を満たす技術はアメリカにある。それを日本が福島第二で実証実験すればいいと考える(田中氏)

・これを実験することで、デブリ処理ができる。デブリは福島県外に絶対持ち出せない。県内での処理の仕方を考えると、福島第二が再稼動できない場合は、そこで燃やして高速炉でできた電力を売るという形の発電がありえる。これは、日本のやるべき第一歩の技術開発ではないか。これをやってみせることが、福島で失敗した日本として、災いを転じて福となす唯一の方法ではないかと思っている(田中氏)

(肩書きは2015年3月20日登壇当時のもの)

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