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はなまる 髙口裕之氏「パッションを持って人々の意識や感情を変えていく」

投稿日:2024/02/19更新日:2024/02/21

MBAの真価は取得した学位ではなく、「社会の創造と変革」を目指した現場での活躍にある――。グロービス経営大学院では、年に1回、卒業生の努力・功績を顕彰するために「グロービス アルムナイ・アワード」を授与している(受賞者の一覧はこちら)。

今回は2023年「変革部門」の受賞者、髙口 裕之氏にインタビュー。ミツカンやおやつカンパニーなどを経て、現在はなまるほかで手腕を発揮する髙口氏のキャリアの歩み、そしてマーケティングの面白さを聞いた。(インタビュアー:清水 香奈慧)(前後編、前編)

「自分で売る」営業から「人を通して売る」マーケティングへ

清水:この度は受賞おめでとうございます。まずは感想をお聞かせいただけますか。

髙口:思ってもみなかったので、驚きしました。目の前のことを無我夢中でやっていただけなので、受賞の連絡をいただいたときは「え!?」と。

清水:髙口さんは現在までFMCG領域を中心としたマーケターとしてキャリアを築いていらっしゃいます。ミツカンへ新卒入社した当初から、マーケティング部門を希望していたのですか?

髙口:元々「社会に触れることが好き」だったようには思いますが、当初はまったく考えていませんでした。学生時代に居酒屋の厨房でアルバイトをしていたのですが、当時は効率的にメニューをさばくオペレーションを考えたりするのが楽しかったんです。また居酒屋のアルバイトは、同僚の年齢も性別もバラバラで、その中で仕事をするとなると武器となるコミュニケーションを磨く機会にもなりました。

この経験から、臨機応変に人を相手にする仕事はできそうだぞ、ということで「卒業後は営業だな」と思っていましたね。実際、卒業後入社したミツカンでは26過ぎまで営業でした。

清水:その後、社内異動によってマーケティング部門に進まれます。

髙口:営業時代に挙げた成果を評価して頂き、マーケティング部門へ異動することになりました。ただ、ミツカンはB2B2C。営業時代にコミュニケーションをとっていたのは問屋さんや小売店さんで、マーケティングでメッセージを届けるべき消費者ではありませんでした。しかし、「流通の業者さんに買ってもらえばいい」という観点で成績も良かったものですから、頭はそのモードのまま。その状態でマーケ施策を打つと、売上は立つものの、店舗で在庫になってしまうんですよね。するとそのあと注文が来ず、売れません。そこで、「これはまずい」「マーケティングってなんなんだ」と。頭の切り替えを含めて、当初は苦労していました。

でも、あるとき先輩に「自分で一件一件売るより、人的リソースを介して一気に売る戦略を考えるほうがスケールが大きくないか?」と言われたんです。この言葉で自分のなかに火が点き、商品をお客さんの口に入れてもらうためにどうすべきか?を1丁目1番地で考えるようになりました
そうして最初に担当したみりんで売上をあげ、次に担当したしゃぶしゃぶのタレで過去最高売上を記録し、その後当時鳴かず飛ばずだった「鍋つゆ」を担当したという流れになります。

「こういうものだ」で終わらせず、問題点を掘り起こす

清水:現在はかなり一般的な「レトルトパウチに入ったストレートタイプの鍋つゆ」ですが、これは髙口さんが鍋つゆを担当されていた当時に開発されたものだそうですね。

髙口:その頃は環境問題が大きく取りあげられ、ゴミ分別も厳しくなりつつあったのですが、当時の「鍋つゆ」は、容器が瓶、キャップがプラスチック、ラベルは糊で貼られ剝がしにくい紙のままでした。また、水で薄めるタイプでしたが、核家族化や女性の社会進出によって家庭で料理をつくる機会が減っていたこともあり、たとえば「濃縮3倍」と言っても「原液1に水が2」と「原液1に水が3」のどちらが正しいか、わからない人が増えていたのです。調理例を記載するにしても、小さなラベルに細かな字で書いてあるだけなので読まれないのですよね。

このように、普段「こういうものだろう」と思っているものも、ユーザーが実際にどのように商品を使うのか?どのような商品がほしいのか?とインサイトを探るといろいろ問題点が出てきます。私はそれをすべて解決しようと考えたのです。分別が大変ならレトルトパックにする。水の割合が分からないなら濃縮でなくストレートにする。字が読みづらいなら写真で見せる。そうしてできあがったのが現在のような商品で、2年目ぐらいから一気に売れ、今では定番となりました。

こうしたことができると、仕事も更に面白くなってきます。 例えばミツカンでは昔から、マーケターの評価はブランドのP/Lに応じて行われていました。経費が一緒で売上が上がれば、利益も上がります。マーケティング施策で売上の効率を伸ばし、効果があがればP/Lが改善する。まさにマーケティングと経営が表裏一体の感覚でした。

リブランディングとは感情をグリップし、人々の認識を変えていくこと

清水:今回のアルムナイ・アワードでは、おやつカンパニーにて「ベビースターラーメン」を「お菓子」ではなく「食材」という新たな着眼点でリブランディングし、ブランド価値を再活性化。加えて健康系新ブランドである「BODY STAR」の創出によるブランドポートフォリオの拡充などによって、会社の変革に貢献された点を受賞理由とさせて頂きました。ここで改めて、リブランディングの難しさや面白さについても教えていただけますか?

髙口:リブランディングでは、ある程度“固定観念化”された意識を変えなければいけません。「こう見えていた」を「ああ見える」という知覚を形成できて初めてリブランディングできたということ。だから時間はかかりますが、人間の心理を変えればいいのならそこに算数はいりませんし、私としてはワクワクします。

私はフィリップ・コトラーの「人は良いものを買うのではなく、良いと思ったものを買う」という言葉が好きです。大切なのは事実でなく認識。つまり、事実を変えなくても認識・イメージを変えればいいとも言えます。人の感情をグリップできれば狙い通りに進んでくれるのです。

また、与えられた課題への解がFMCG市場で文化やトレンドになったりもします。「鍋つゆ」もそうです。今は売り場にあのタイプしか並んでいないような商品を最初に手掛けることができたと考えると、時間と労力をかける価値があると思います。

清水:そのように「文化を創る」こともできると思うと、マーケターは夢のある仕事ですね。

(つづく)

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