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論点を把握する(10)〜広げる(7):合意形成のステップを細分化する(5)〜

投稿日:2011/02/10更新日:2019/08/15

前回は「合意形成のステップ」の<アクションの理由の共有・合意>における論点の洗い出しの中で、「問題解決のステップ」の「Where(問題箇所の特定)」を見てきました。今回はその次に来る「Why(真因の追求)」のステップについて詳しく見ていきましょう。

「原因の把握」にこそ、「衆知」が必要

Whereで問題箇所が明らかになったら、なぜそうした結果が起きているのか?原因を考えることになります。しかし、第18回でも見たように、原因を考えるのはとても難しいことです。結果に対して影響を与え得る原因はとてもたくさん考えられること、いくつかの原因が複合的に絡み合って結果に影響を与えていること、そしていくつかの原因の中でどれが最も強く結果に影響を与えているのか判別するのが難しいことなどが、因果関係の把握を難しくする理由として挙げられます。

同時に、ある結果に対する原因を考えるためには、その分野での専門的な知識がある程度必要になってきます。たとえばある製品の製造において不良が発生している場合、材料や設備、製造の方法などを全く知らない状態では原因を想像することすら難しいでしょう。また、どんなに優れた専門知識を持っている人でも、結果が生じている状況、環境を観察しなければ、原因を特定することはできません。逆にいえば、優れた知識を持った人であれば、「現場」を見ることで、問題の原因をある程度正確に推定することができます。このように、「原因の把握」には、幅広い知識と具体的な情報が不可欠であり、そのためには多くの人の持つ知識や情報を集めて考える、つまり「衆知を集める」ことが最も必要かつ効果的なのです。

しかし、人は自身の専門の立場からの視点のみに囚われたり、たまたま目についた状況の影響を強く受けたりして、原因を「決め打ち」しがちでもあります。人事を担当している人は様々な問題の原因を人に求めがちですし、技術者はものの特性や設備などといった点に着目しがちです。こうした個々人の視点の偏りや決め打ちを乗り越え、衆知を集めて考えるためにこそ、ファシリテーターの存在意義があると言えます。

原因把握の生産性を高める「広げる→絞り込む→深める」

原因を考える議論を生産的に行うためには、「流れ」を意識し、モードを明確に切り替えて論点を提示していくことが重要です。

最初は、ある結果に対して考え得る原因を洗い出し、可能性を「広げる」。次に洗い出した原因の中で、結果に対する影響が大きな原因に「絞り込む」。最後に絞り込まれた原因のさらにその原因となっている事象を明らかにするために、さらに「なぜ?」を「深める」というステップです。これらを意識して思考を進めることによって、複雑な事象の関係を解きほぐしていきます。

この「広げる→絞り込む→深める」という思考の流れを、様々な立場、専門性をもったメンバーの知識と情報を引き出しながら創り上げるのがファシリテーターの役割です。ここでファシリテーターに求められるのは、「これが原因だ」という「答え」を持っていることではありません。大事なのはむしろ、様々な専門家や関係者の持つ知識や情報を十二分に引き出すこと。そして特定の視点に偏った判断をしたり、安易な結論に飛びつかないように考え得る可能性を広げる手助けをすることです。そのためには、思考の方向性がはっきりと伝わる論点として質問を投げかけることが重要です。それぞれのステップでの典型的な問いを見ていきましょう。

思考の方向性を示す「問い」

議論の出発点では、まずは「広げる問い」を中心にします。「○○が原因だという意見ですが、他の原因は考えられないでしょうか?」「○○が原因ということですが、○○であればいつもこうなる訳ではないですね。他に何が影響しているのでしょうか?」「○○のほかにも、△△のようなことは影響していないでしょうか?」「まずは影響がありそうな要因を洗い出してみましょう」など、粘り強く可能性を洗い出していきます。

ある程度まで考え得る原因が洗い出せたら、「絞り込み」に質問のモードを移していきます。「この中で特に影響が大きい原因はどれでしょうか?」「問題があるときと無いときで一番違っているものはどれですか?」「あえて原因を一つに絞り込むとすればどれでしょう?」などの質問が有効です。また、ここで十分な根拠を持って絞り込めない場合は、一旦議論を打ち切って「では、○○の影響について次回までに調べてみてください」など、「調査すべき事項を明確化する」ことも重要です。

原因が絞り込まれてきたら、「深める」質問を投げかけ「本質的な原因=真因」を見出すことにチャレンジしたいものです。忙しいビジネスの現場ではあまり意識されないことも多いですが、「なぜ」を繰り返し、様々な事象が繰り返し起こる構造的な原因を明らかにすることができれば、組織として大きな財産を手に入れることができます。すなわち、「そこに手を打つことで、以後同様の問題の発生を継続的に防げる原因」(問題の再発防止)、「そこを仕組み化することで、同様の成果をいつでも、誰でもできるようにする」(成功の再現性向上=標準化)に繋げるのです。

こうした一般的な問いの投げかけ方を知り、実践することで、ある程度思考の方向性を示すことができます。適切な方向性を示せれば、具体的内容はメンバーの知識や情報を活用することができます。

但し、最終的にはメンバーの知見を頼りにするにせよ、何も準備しないままでは、議論の場において出てくる意見に漏れや偏りがないかを瞬時に判断することは難しいものです。またある方向に固まった思考は、抽象的な問いかけだけではなかなか動かないので、「たとえば・・・」といったイメージに訴える質問が必要になることが多いものです。こうした例示をその場で考えて出すのは至難の技です。このため、ファシリテーターが事前にそのテーマに関し、因果関係を推定し「仮説」を持っておく必要があります。準備段階である程度考える予行演習をしておくことで、議論の場において出てくる様々な意見に対しても判断・対応のスピードが上がります。

前にも述べたように、原因を考えるには知識や情報が必要です。必ずしも特定の知識や情報を持たないことも多いファシリテーターは、どのように考えることができるのでしょうか?次回はそこを考えてみたいと思います。

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