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上司をマネジメントする(1)上司は「資源」である

投稿日:2010/05/13更新日:2019/04/09

上司をマネジメントするという発想の転換

春は新期のスタートです。人事異動がそこかしこであり、新しい部署に転属になった人や、新しい上司・仲間を迎える人も多いでしょう。あるいは逆に、新期にはなったものの、相変わらずの顔ぶれでまた1年か、と思っている人もいるかもしれません。

そこで、以降数回にわたって、「上司をマネジメントする」シリーズをお送りします。上司/部下間の人間関係づくりにつき、マインドのリセットを行うヒントとしてください。

念のため書き加えますが、“部下が”上司をいかにマネジメントするかというテーマです。(上司が部下をマネジメントするという方向ではありません)

「上司をマネジメントする」という発想・実践は、職場のダイバーシティ(人種の多様性)の進む米国でいち早く発展しました。米国では、上司が年下であったり、女性であったり、人種の異なる人であったりすることはよくあることですし、また(これは国を問わず)「モンスター」と呼ばれる難物・変人・奇人の上司も多い。ですから、部下側のほうが上司との人間関係をうまくマネジメントしてみる、そんな意識が早くから芽生えたと考えられます。

そしてさらには、部下が上司をうまく活かす能力というのは、リーダーシップとは対になる概念=「フォロワーシップ」であるとした研究が上司マネジメントへの注目をいっそう集めさせる結果となりました。

米国では、書店の棚に行くと「How to manage your boss」とか「Managing upward」などといったタイトルをよく見かけます。また、大学院の中には、いわゆる「ボス・マネジメント」をMBA(経営学修士)コースの科目にしているところもあります。

「賢い部下ほど上司を活かす」——では、上司マネジメントの本題に入ります。

「上司」とは何か?

ここに「1」「2」「3」と書かれた3枚の数字カードと、「+」「−」「×」「÷」と書かれた演算カードがあります。

そして、いまあなたは、業務上の命令として「6」という数字にたどり着くことを会社から要求されています。さて、この3枚の数字カードと四則演算カード(この演算カードは何度使ってもよい)を組み合わせて、あなたならどうやってこの命令を達成しますか。

これに対し、ある人は「2×3」という達成のしかたをするかもしれません。また、ある人は「1+3+2」、さらに別の人は「3×2÷1」とするかもしれません。「6」へのたどり着き方はさまざまあります。

では今度は、業務上の命令が変わって、「8」を言い渡されました。手持ちのカードが変わらないとして、どうたどり着くことができるでしょうか。

さすがに現状、「8」にはどう転んでもたどり着きません。達成のしようがないのです。では、このときどうすればいいとあなたは考えるでしょうか。

——そう、手持ちのカードを増やせばいいのです。

例えば、「4」というカードを一枚増やせば、「1+3+4」や「2×4」などの方法で達成が可能になります。

いかに自分の外にあるカードを増やすか

私たちが職業人としていかに多くの命令や目標、ゴールを達成できるかどうかは、ひとえにいかに多く手持ちのカードを持っているかにかかっています。

手持ちのカードとは、一つには自分自身が持ついろいろな知識や能力、体力、人脈です。そしてもう一つは、自分以外、つまり他の働く人々が持つ知識や能力、人脈と、会社組織が持つ資金力や設備力、情報力、信用力といったものです。

手持ちのカードの種類や枚数が豊富で多様であれば、自分が成就できることも豊富で多様になります。ただ、いくら努力しても自分一人が習得できるカードは限られています。

そうしたとき、考えなくてはならないのが、他者の持っているカードや会社組織の持っているカードをうまく活用することです。これは自分の身に取り込んだカードではなく、借り物のカードですが、成果を出し、目標を達成するためにはどんどん使っていいカードなのです。

なぜなら、個々の社員が成果を出すこと、目標達成することは、組織全体の好業績に直接つながっていくので、組織としても、個々の社員が組織内にある資源を最大限活用してくれることをおおいに望んでいるからです。

上司は仕事を成すための「資源」である

さて、自分の外からカードを引き出すとき、その最大のカードホルダーは何でしょうか。それは間違いなく、あなたの「上司」です。

確かに、会社という組織も潜在的には多くのカードを持っています。しかし、会社の資源を引き出すためには、目の前にいる上司の承認が必要なのです。上司自身から引き出せるもの、そして上司の承認を通して会社組織から引き出せるもの、これらを合わせて考えると、上司は潜在的に非常に大きな「資源」の固まりということになってきます。

小さくは日々の業務で成果を上げるため、大きくは自分の仕事上の思いや夢、志をかなえるために、上司という資源を有効に活用することが賢い職業人なのです。

しかし、私たちは往々にして上司を貴重な「資源」としてみることができません。なぜなら、「とっつきにくい」「ノルマばかり押し付ける、「権威主義だ」「優柔不断で困る」などなど、上司個人が持つ性格や人間性が高い壁となって、そこから部下がカードをなかなか引き出せないでいるという現状があるからです。

こうした状況は、上司と部下、そして会社にとっても好ましい状況ではありません。この状況を脱し、部下が上司を資源とみるためには、意識を変える必要があります。すなわち、上司を分解してとらえるという転換です。

上司は次の三つの層に分解してとらえることができます。

(1層)権限、機能を持った存在…… 「一役職人」としての上司
(2層)知識、能力、経験、人脈を持った存在…… 「一能力人」としての上司
(3層)個性、人格を持った存在…… 「一人間」としての上司

私たちは、組織において“上に仕える”といった場合、何に仕えているでしょうか。おそらく大部分の人は、(1層)から(3層)を一緒くたにした上司に仕えていると認識しているのではないでしょうか。

ですから、その上司が(3層)、すなわち一人間として問題が多いとついつい毛嫌いしてしまい、少なからず持っているかもしれない(1層)や(2層)からの資源を引き出せずに終わってしまうのです。

その「人間」ではなく、「役職」に仕えるという発想

したがって、私たちにとって重要なことは、部下は上司であるその「人間」に仕えるのではなく、その「役職」に仕えるという発想からスタートすることです。

まず目の前の上司を(1層)のみで見つめてみる。

上司が持っている「権限・機能という引き出し」の中には、自分が仕事をやりやすいようにヒト・モノ・カネを動かしてもらえる資源がたくさん入っています。チームに人を増員してもらう、業務上の効率化のために設備を増強してもらう、何か自分で身につけたいスキルがあればセミナーへの参加費を出してもらう、また、社外の交渉でてこずっていたら、上司に同伴してもらって援軍をしてもらう、など、一役職人としての上司が持つ資源はいろいろと使い手があるものです。

それらを活かすことで、自分の仕事がラクにはかどり、アウトプットに幅が出るのであれば、上司の性格的な違和感などは「しょうがないか」と寛大に構えることです。

次にもし、上司が一能力人として優れた点があるとすると、例えば、本人の蓄えた知識や技能を教わる、人脈を紹介してもらうなど、(2層)の資源を引き出しにかかればいいわけです。

そして、最後に、その上司が一人間としても尊敬でき、親しくできるなら、交流を(3層)レベルにまでもってきます。仕事のもろもろの相談をはじめ、プライベートの相談にものってもらうことができるでしょう。

また、上司/部下の関係がなくなった場合にでも、人生のアドバイザーとしてその後も貴重な存在になるでしょう。

要は部下がどれだけのものを引き出せるか

私たちは、上司とはそれなりに仕事経験・人生経験を持ち、自分よりも高い給料に見合ったパフォーマンスを上げ、人格的にも優れているという理想・べき論のもとに、その人間に仕えようとします。しかし、その理想・べき論による上司への期待をいったん捨てたほうがいいでしょう。

——現実の上司は欠点、不足だらけです。

ですが同時に、部下が引き出すべき資源はたくさん持っているのも事実です。その引き出し方を最大限うまくやろうというのが「上司マネジメント」です。

まずは、上司を「一役職人」としてみること。ここから引き出せるものがあれば、あなたは幸運です。次に、上司を「一能力人」としてみる。本人から学ぶべきものが見つかれば、あなたは相当に幸運です。最後に上司を「一人間」としてみる。仕事を離れてもいい付き合いができそうなら、あなたはきわめて幸運な出会いをした人です。

いずれにせよ、よい上司なら教官、コーチ、メンター、支援者、師となってくれ、部下の引き出し方いかんによって、いろいろな資源カードを与えてくれる。わるい上司であっても、それを反面教師としてさまざまなことを考えさせてくれる。そんな上司を会社は自動的に付けてくれ、指導料も取らない。(むしろ給料さえやるという)

そう考えると、会社とは何とありがたいシステムではありませんか。自営で事業を始めた私には、もはやタダで上司を付けてくれる人などいないのです。

上司は「資源」です。それを最大限活かさない手はない。そうでなければ自分のキャリアが「モッタイナイ!」。

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