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提供価値宣言してみよう「私は〜を売っています」

投稿日:2009/12/09更新日:2019/04/09

あなたは何を売っていますか

冒頭、次のシートを見てください。私が研修でやっているワークのひとつです。さて、あなたはこの空欄にどんな言葉を入れるでしょうか———?(これに関する解説は本記事の後半部分で)

「還元論」と「全体論」という考え方が科学の世界にあります。還元論は、物事を基本的な1単位まで細かく分けていって、それを分析し、物事をとらえるやりかたです。人間を含め、自然界のものはすべて、部分の組み合わせから全体ができあがっているとみます。

例えば西洋医学などは基本的にこのアプローチで発展してきました。胃や腸などの臓器を徹底的に分析することで、さまざまな治療法を開発するわけです。他方、胃や腸など臓器や細胞をどれだけ巧妙に組み合わせても、一人の人間はつくることはできない。全体はそれ一つとして、意味のある単位としてとらえるべきだというのが全体論です。東洋医学は主にこのアプローチです。

この二つの立場は、どちらが良い悪いというものではなく、バランスよく双方を取り入れて扱っていくのが賢明なやり方です。しかし、現代文明は何かと還元論に偏重してきています。

何事も論理的に分解をして、分析的に、定量的に、デジタル的に、科学的に考えるのが
何かカッコイイ、合理性に満ちたアタマのよいやり方だという認識が広がっています。私たちは、ビジネス現場ではもちろん、日常生活にまで、そうした還元論的な思考を強要しようとしています。

しかし、直感(直観)的に統合をして、俯瞰的に、定性的に、アナログ的に、信念的に考え行動することも、同じように大事なことであり、必要なことなのです(たとえ、合理的でなく、非効率であり、ときに不格好であったとしても)。

さて、私が携わっている人事・組織・人材教育の世界の話に入ります。昨今の事業組織が、そしてビジネス世界がどんどん煩雑化するにしたがって、一人ひとりの働き手たちは、
自分を、そしてキャリア(仕事人生)をたくましくひらくことができず、ますます狭いほうへ狭いほうへ追いやられていく———そんな状況が生まれています。

その大きな理由として、「還元論」的な価値観に基づく方法論の偏重があると思います。

例えば、私たちは優秀な人材をとらえる場合に全人的にとらえようとせず、部分的な知識や技能の集合体としてとらえるようになっています。

人材はスペックの集合体でしかないのか

つまり、 「人材スペック」なるものをこしらえ、細かな知識要件、技能要件を設定して、どのレベルでどれくらいの項目数をクリアしているかによって、その人物を評価し管理しようとする。

また、MBO(目標管理制度)×成果主義の普及も一人の働き手を分解的に、定量的に行動させる促進剤としてはたらいています。

その結果、働き手は、その人材スペックの要求項目にみずからをはめ込み、その枠組みに合わせて成長すればいいという考え方になる。一職業人として伸び伸びと何か一角(ひとかど)の人物になろうなどというおおらかな心持ちで我が道をゆく人間はどんどん少なくなるわけです。

そのくせ会社側は、若手従業員に対し、「5年後どうなっていたいか?」とか「この先10年間のキャリアプランは?」などと問い詰めたりする。従業員が答えられるとすれば、せいぜい、「人材スペックのマトリックス表にありますとおり、3等級の要件a、要件d、要件fの、レベル2+をクリアして、課長になることです」———そんな程度のものでしょう。

「キャリアパス」なんていうのは、そんな中から生まれてきた概念です。組織側が、働き手のキャリアの道筋をいくつか用意してやって、その中から適当に選んで、なぞって上がっていけ。まぁ、サラリーマンの世界が「スゴロク」に喩えられるのも、うなずけるところです。

冒頭のワークに戻ります。

さて、みなさんはこの空欄に何という言葉を入れたでしょうか。

自分の提供する価値を宣言する

自分は自動車メーカーに勤めているから、『私は 「クルマ」 を売っています』。自分は介護事業会社に勤めているから、『私は 「介護サービス」 を売っています』———というような答えを求めていません。

右上に「私の提供価値宣言」としているところがミソで、この空欄には、自分が仕事を通じて提供したい「価値」を考えて、書いてほしいのです。この「提供価値」を考えることが、職業人としての自分のアイデンティティを確認し、それを基軸にしてキャリアをひらいていくという原点になるのです。

少し補助線を引きましょう。この提供価値宣言をいきなりやるのは大変ですから、事前作業を1ステップ入れます。次のシートを見てください。「五つの自己紹介」という質問シートです。

私個人の例でやってみますと、

1.【勤務先】(ここは雇用されている会社名がきます)
・私は「キャリア・ポートレートコンサルティング」に勤めています。

2.【雇用形態】(ここは正社員とか契約社員とかフリーランスとかですね)
・そこで私は「事業主」として働いています。

3.【職種】(具体的な職種がきます)
・そこで私は「人材教育コンサルタント」をやっています。

4.【業務内容】 (担当業務を書きます)
・日々の私の仕事は「人材育成研修を開発し実施する」ことです。

ここまでは誰しも簡単に書く事ができます。さきほど触れた、「私は何を売っているか」という設問に対し、大方の人は、4番目の設問の答えを書いてしまいがちです。しかしそれは業務の客観的な説明であって、提供価値を宣言しているものではありません。次の5番目の設問は、自分の言葉で噛み砕いた主観的な意志の造語をしなければなりません。例えば私は自分自身の提供価値を次のように考えています。

5.【提供価値】
・私は仕事を通し、「向上意欲を刺激する学びの場」を売っています。
・私は仕事を通し、「働くとは何か?に対し目の前がパッと明るくなる理解」を売っています。
・私はお客様に 「働くことに対する光と力」を届けるプロフェッショナルでありたい。

この問いを通して考えさせたいことは、私たち一人ひとりの働き手は、目に見えるものとして具体的な商品やサービスを売っていますが、もっと根本を考えると、その商品やサービスの核にある「価値」を売っているということです。

大目的の設定が、持続的な成長につながる

例えば、保険商品を売っているというのは、根本的には、「安心」を売っているとも言える。また、新薬の基礎研究であれば、その仕事を通して、「発見」を売っている、あるいは、
「その病気のない社会」「健康」を売っているととらえることができます。会計レポートの作成は、取締役に対し、「正確さ・緻密さ・迅速さによる判断材料」を売っているのかもしれません。

その他、スポーツ選手であれば、彼らは「感動」や「ドキドキ」「勇気」を売る人たちでしょう。コンサルタントは「知恵・情報」や「解決」を売っています。料理人は、「舌鼓を打つ幸福の時間」を売っています。コメ作りの農家の人は、「生命の素」を売るといっていいかもしれません。

いずれにせよ、5問目の欄には、主観的で意志的な言葉が入ります。この言葉づくりを、時間をかけてじっくりやらせることが、一人ひとりの働き手たちを全人的に目覚めさせます。

細分化された人材スペック項目に合わせて、そこに自分をはめ込んでいくアプローチ
とはまったく正反対のアプローチが、この提供価値宣言です。なぜなら、この宣言によって、「自分は何者であるのか?(ありたいのか?)」、「丸ごとの自分を使って何の価値を世に提供したいのか!?」が打ち立てられる。すると、そのために、今の自分はどんな知識、能力を新規に習得せねばならないか、補強せねばならないか、あるいはどういうキャリアチャレンジを起こした方がよいか、という思考が始まるからです。

宣言をまっとうするために、今の仕事のやり方・方向性でいいのか、今の会社がいいのか、会社員でやっていたほうがいいのか、日本に住んでいた方がいいのか、業界を変えた方がいいのか……。そんな発想がたくましく湧いてくるわけです。そういう発想のもとでは、もはや会社側が用意する規定のキャリアパスなど意味をもたなくなる。白紙の未来キャンバスに、まったく自由に絵を描かざるを得なくなる。そして、もがいてもがいて切り拓いた道が、結果的に自分のキャリアパスになる———。そういうたくましい働き様、生き方に転換するのです。

最後に追加のワークをひとつ。次のシートの空欄にみなさんはどんな言葉を入れるでしょうか——?

これは先程の提供価値宣言の発展形です。自分の存在価値宣言を一言で表現するワークです。私自身のサンプルを紹介すると、こういう表現になります。

・私は「“働くとは何か!?”の翻訳人」として生きる。

このワークは言ってみれば、自分の現下の人生の「最上位の目的」をキャッチコピー的に表現することです。私は「“働くとは何か!?”の名翻訳人」になることを8年前に決意した後、それを実現するために、サラリーマンからの独立、コンサルティングサービスの研究、ビジネス著書の出版、教育心理学の勉強、人事(HR)業界での人脈づくりなど新規の知識習得や技能磨きをやってきました。

これらはすべて上の一大目的の下の手段であり、実現のための最適解と思われる行動だと思ったからです。私はいま、小説を一本書いていますが、これもその目的を果たすために閃いたものです。

人は、全人的に投げ出すに値するものをこしらえれば、部分でやるべきことはいかようにでも見えてくるし、やれるものです。ですから、大目的に対し情熱を燃やしているかぎり行き詰まりがない。

働く個人も組織も経営者も、偏重した「還元論」ではなく、「全体論」の視点に寄り戻しをかけて、働くこと・キャリアを今一度見つめ直す時期にあると思います。

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