信用の質を高めてキャリアを立体化させる――藤原和博氏が語る人生100年時代の働き方 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

前回に続き、藤原和博氏による「人生100年時代 戦略的モードチェンジのすすめ」をお伝えします。(全3話)動画版はこちら>>

信用の質を高めるには?

このようにして、キャリアをどんな風につくるかという面で情報編集力を応用して、最後は自分の信用を増殖させていく、と。それを、ここまでは概念で述べましたが、今度は各論、または信用の「量」じゃなくて「質」の部分に言及したいと思います。

まず、信用またはクレジットといいますと、一般的には金融的な信用のイメージが7割から9割ぐらいだと思うんですよ。「どれぐらいのお金を動かせる人なの?」「どれぐらい稼いでいるの?」「どれぐらいの資産があるの?」みたいな。でも『45歳の教科書  戦略的「モードチェンジ」のすすめ』にも書いたのは、もっと人間的、人生的、普遍的な信用です。それで、金融的な信用の貢献は、もう1割にまで下げてしまっています。

そして、信用のすべてを100%とすると、まず半分の50点は基本の10項目×5点という採点方法で出します。そこに世間的な評価を40項目×1点で乗せます。基本10項目のほうは、たとえば「挨拶ができるか」みたいなところからはじまります。それが本当にバッチリできるなら5点。ここは結構優しくて、エンジニアリングが可能です。

一方、世間的な評価のほうは、たとえば「学歴なんて信用に関係ありませんよ」なんて綺麗ごとを言う人はいるけれど、「じゃあ、どうして企業が学歴で採用を決めるの?」と。それは、大学の入学試験がどれほど難しいのか、どれほどの偏差値かが分かれば、今日話した左側の処理能力が分かるからですよね。だから厳然としてある。でも、「あるんだけど、そんなものは1か0」という風にしちゃったの。だから、そういう相対的または世間的な評価は1点にしちゃっているんですが、これ、面白いので、あと10分ほどで皆さんに100点満点で採点してもらおうかなと思うんです。

まず、「信用度」を数値化するチェックリストをお見せしますが、そのなかでAとBに分けているのは、Aが基礎編で、Bが金融編ということです。これ、メディアのNewsPicksに寄稿したら3600~3800の「Picks」(ブックマーク)がありました。あ、このリストは書籍に付いているから、無理して今書き写さなくても大丈夫です(会場笑)。

金融面から信用度を見る

金融編

では、まずBの金融編から。これは10点満点。ちょっと手を挙げてくれる?このなかで1銭も借りられない人は?…いないですね。1000円なら人に借りられる人は?…はい。1万円まで借りられる人は?…はい。10万円まで借りられる人は?…はい。100万円まで借りられる人は?…はい。

この辺から面白くなってきます。1000万まで借りられる人は?…はい、結構います。1億でも借りられる人は?…お、まだまだいるよ、数人以上。100億まで借りられる人は?…ちょっとお友達になりたいんで(会場笑)、ほぼ無制限に借りられる人は前に出てきていただいて講師交代みたいな感じです(会場笑)。とにかく、これで10点満点。皆さん自分が何点だったか、ちょっとメモっておいてください。

基礎的な行動から信用度を見る

基礎編

次はAの「基礎編」です。このなかの1番と2番、それと4番は学校の先生が一番大事にすることで、家庭教育でも一番大事なんじゃないかと思うんです。人間関係の基本ですよね。たとえば1番の「挨拶ができる」。挨拶がすごくできるなら5点、ちょっとしかできないか、ほとんどできないなら1点ということで、5から1までの点数を付けてみてください。2番は「約束を守る」。3番は「古いものを大事に使う」。たとえば、おじいちゃんから譲り受けた時計を、ちょっとお金がかかっちゃったんだけど時計屋に持って行って直して、それを身につけてる人って、ぱっと見て素敵じゃないですか。信用できそうな気がするじゃないですか。そういう大事な価値観です。

続く4~8番は、実は情報編集力の5つの要素として、未来を拓くためにすごく大事な力だと僕が言っていることです。4番の「人の話が聞ける(コミュニケーションのリテラシーが高い)」ということについて、また5~1で点数を付けてみてください。次は「筋を通す(ロジカル・シンキングのリテラシーが高い)」。論理性が高いということで、5~1まで。

次は「他人の身になって考える(ロールプレイのリテラシーが高い)」。他人の身になって、他人がどんなことを考え、感じているかが分かるかということで5~1まで。で、次は「先を読んで行動する(シミュレーションのリテラシーが高い)」。たとえば、「こういう天気図なら明日は雨だろう」「こういうことが起きたら、この会社の株価が上がるだろう」みたいな、そういうシミュレーションのリテラシーが高いかどうかを5~1までで点数を付けてください。

そして、次は「気持ちや考えを表現できる(プレゼンテーションのリテラシーが高い)」。論理だけじゃなく感情も含め、プレゼンがうまいという人は5で、ちょっとプレゼン下手な人は2とか1かもしれません。次は「潔さがある」。諦めるところは諦めて、集中するところは集中するような潔さがあること。いつまでも組織の上のほうで役職に掴まって留まったりしないような潔さということで、5~1まで。

最後はちょっと難しい。少し宗教的ですが、「感謝と畏れの感覚がある」。たとえば何かを成し遂げたとき、「自分1人で成し遂げたわけじゃないぞ?」と。「いろいろな人に力を借りることができたから」とか、そういうことを素直に受け入れることができるかどうか。あるいは何かを行うとき、「誰も見てないからやっていいんだ」じゃなくて、「やっぱりどこかで何かつながってるんじゃないか?」と考えるような、ある種の宗教心ですね。別に神仏を信じなくても、そういうことを心のなかに持っている人は、やっぱり信用されると思います。

というわけで1番から10番まで、5点満点で皆さんに何点ぐらい付いたか、ちょっと聞いてみていいですか?25点以上、つまり半分以上の点が付いた人は手を挙げてください。(挙手多数)…さすがグロービスですね(会場笑)。一応そう言っておきます。ただ、ここはもっと高めていくことが可能だと思います。

世間的な評価から信用度を見る

問題は次です。今度は世間的な評価になります。面白い項目がたくさん入っています。もうツッコミどころ満載ですよね。一つひとつ聞いていると時間がなくなっちゃうんですけれども、「体力がある」とか「学歴が高い」とか、こういうことが信用に関わるという点については皆さんも文句ないですよね。でも、なかには皆さんが「あれ?」って思うものもあると思うんですよ。…あ、写真撮らなくても著書に入っているんで(会場笑)。

たとえば「ツイッターのフォロワーが多い」というのが必ずしもいいことかどうかは分からない。あるいは「既婚で子どもを育てている」も。ただ、たとえばAlipayという中国のサービスがあるじゃないですか。あれはAIでネット上の各種トランザクションを評価して、プロファイリングをしたうえで、その人が信用できるか否か、つまりクレジットどれほど与えることができるかを決めるわけですね。これが、最終的には仮想通貨をどれほど与えるかという話になってくると思う。この信用の問題は仮想通貨とつながるんですよ。

先日新聞に面白い話が載っていたんだけど、Alipayではネットで定期的に紙おむつを買ってる男性の信用が高くなるらしいんですよ。すごいと思わない?1回大量に買うだけだと、下手するとね、殺人を犯して血を拭くのに使っているかもしれないじゃないですか(会場笑)。まあ、それはあんまり良くない冗談としても、とにかく定期的に注文してるってことは、「この人は子育てをしているんだな」と。「きちんと赤ちゃんのオムツを毎回替えているんだな」というようなことで、クレジットが高くなるんですね。

そんな風にして、今後は皆さんもネット上のトランザクションで評価されて、たぶん10年以内には、それが仮想通貨かどうかは分かりませんが、信用として皆さんに供与されるという時代は、もう今も来ていますが、もっと深まります。実際にはそれでお金を貸すかどうか決めるところまで進んでいる銀行が、アメリカではもう上場しちゃっているらしいし。インドでも中国でもそういうことがどんどん進んでいるんです。日本だけがちょっと遅れていますが、やがてはそうなるでしょう。

ほかにはどうでしょう。「美男(美女)もしくは愛嬌がある顔をしている」。これがYesの人はちょっと手を挙げてみてください(会場笑)、あれ、皆さん遠慮してるの?こういうところが日本はすごいよね。ここで手を挙げちゃうと、あとでイジられたり、いじめられたりするということですね。だから自分のなかで判断してくれればいいです。「犬を飼って世話をしている」というのもあって、「猫じゃいけないのか」とか、いろいろあると思います(会場笑)。

ほかにも、「上品な腕時計をしている」とか、まあ、こういうのはどうでもいいんですが、最後のほうには「酒癖は悪くない」とか、「自分の葬式には多数の参列があるだろう(笑)」とか、たくさんあります。どうですか?これ、ザーッと見て半分以上チェックが入るかどうか。ちょっと1分間で見てみてください。

(1分後)はい、だいたい見てもらいました。どうでしょうか。半分以上チェックが入る、つまり40項目あるので20点以上は取れているという感じの方はちょっと手を挙げてください。…半分ぐらい挙がっています。まあ、だいたいなんですが、いろいろな企業でこれをやらせてみると、30~50代は合計で60~80点ぐらい取るようです。たぶんグロービスに通っている皆さんはもっと高いのかもしれませんが、いずれにしても世間的な評価のほうは、エンジニアリングが可能というよりは、「自分はこんなの気にしない」ということができるわけですね。

また、金融的信用が1割ぐらいというのと、50点の基本10項目というのはかなり納得性が高いらしいので、これは放っておいていただく一方で、世間的評価の40項目は入れ替えてしまって構いません。つまり「自分だったらこういう価値を重んじる」という風に自分で編集してしまって構いません。そこで、また1分与えますから、先ほどのチームでこの40項目にちょっとケチを付けてみてください。

これは別に多変量解析から導き出したものじゃないんです。40年のビジネスライフを過ごして、かつ海外へ行ってそこで子育てもしてきたりした僕が、およそ200項目を挙げたのち、それを1人ブレストで絞って40項目に行き着いたものなんですね。だから僕なりには根拠があるんだけれども、皆さんにはそれを批判してもらいたい。「こんなのいらない」と。

たとえば、以前「よのなか科」の授業で高校生にこれを見せて、精査してもらったことがあります。そうしたらいろいろな声が出た。たとえば「グリーン車かビジネスクラスに乗る」なんて、高校生には関係ないですよね。高校生がビジネスクラスを利用したっていう報告を俺にしてきたら、「お前なんなの」みたいな感じで即座に信用しなくなります(会場笑)。でも、高校生たちはほかにも面白いことを言っていました。「TPOに応じたファッションセンスがある」なんていうのも関係なくて、「靴を見る」って言うんだよね。靴で評価するんだって。

そういうことがたくさんあると思うので、ぜひブレストのなかで「コレとコレはいらないよね」「コレはもう全然関係ないよね」という話をしてみてください。そのうえで自分だったら何を入れるか、何を大事にするか。もちろん基本項目にそれを入れたいということであれば、それでもいいです。とにかく、何を評価することで人を信じるか否かが分かれるのか、あるいは何を一番大事な評価基準とするのか。ちょっと3人から5人で語り合ってください。1分です。いきましょう。3、2、1、はいどうぞ。

(ブレスト7)

富士山型ではなく八ヶ岳連峰型で生きる

エネルギーカーブ

はい、そこまで。この話は、あとでランチのときにでも、ぜひ語り合ってもらえたらと思います。次にお見せする図は、今はもう人生が倍に延びているから、いくつもの山を重ねるというお話です。「富士山型一山主義」では終わらないほうがいい、と。要するに1つの人生では、もう90~100年も続く人生を生ききることができないし、死にきることもできない。ですから「八ケ岳連峰型」ということで、山を重ねていく生き方。あ、大丈夫です。この図も著書に載っていますから(会場笑)。

それと『10年後、君に仕事はあるのか?――未来を生きるための「雇われる力」』(ダイヤモンド社)という去年ベストセラーになった本と、西野君がずっと騒いでくれている『藤原和博の必ず食える1%の人になる方法』(東洋経済新報社)という本も紹介しておきます。で、『45歳の教科書 戦略的「モードチェンジ」のすすめ』には、今日やったことのほぼすべてが載っています。

それと、僕が無名の頃から知っている隈研吾氏に頼んで、2020年に完成する一条高校の新講堂のイメージもお見せしておきます。隈さんも特別に設計料をもらっていないんですが、「公立校として、こういうことができるというのを2人で証明しよう」と。「三万数千におよぶ全国の学校にある10万棟ぐらいの校舎だって、本気になればこういうのが建つんですよ?なぜ、あんな無味乾燥な校舎で満足しているんですか?」と。

あと、僕のホームページも紹介させてください。僕は、FacebookとTwitterはほぼ一方向の瓦版みたいな使い方をしていますが、僕のホームページには「よのなかフォーラム」という掲示板があります。そこに質問を寄せてくれたら僕がカズというハンドルネームで答えます。それと、トップページで上から5番目の一番右にあるリンクをクリックすると、冒頭で紹介した「たった一度の人生を変える勉強をしよう~」という、38万9000回視聴されたセッションも視聴できます。皆さんと一緒につくりあげた今日のセッションも後日アップされると思います。

どうですか?今日ちょっとはエネルギーが入った感じ、ありますか?「エネルギーが入った」という人だけ拍手くれる(会場拍手)…どうもありがとう(会場拍手)。

1955年東京生まれ。1978年東京大学経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任後、1993年よりヨーロッパ駐在、1996年同社フェローとなる。2003年より5年間、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校校長を務める。08年〜11年橋下大阪府知事の特別顧問。16年4月より奈良市立一条高校校長として生徒所有のスマホを100%活用し世界初の「スーパー・スマート・スクール(SSS)」を目指す。著書は『リクルートという奇跡』『つなげる力』(ともに文春文庫)、『藤原先生、これからの働き方を教えてください。』(ディスカヴァー)など累積133万部で講演回数も1200回を超える。人生後半戦の生き方の教科書『坂の上の坂 55歳までにやっておきたい55のこと』(ポプラ社)は12万部を超えるベストセラーに。日本の技術と職人芸の結晶であるブランドを超えた腕時計「japan」(文字盤漆塗り)や「arita」(文字盤白磁)を諏訪の時計師とファクトリーアウトレット方式でオリジナル開発し、第7弾まで完売。高校時代はバスケット部だったが、弱くてもっぱら強い女子バスケ部の相手をさせられた。いまは女子テニス部の練習に参加。3児の父で3人の出産に立ち会い、うち末娘を自分でとり上げた貴重な経験を持つ。詳しくは「よのなかnet」http://www.yononaka.net に。

関連記事

名言

PAGE
TOP