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人を育てることができる人を育てるために――メルカリの挑戦

投稿日:2018/09/08更新日:2019/04/09

前回に続き、先日行われたセミナー「働き方改革のその先へ!人づくりのための学び方改革を起こす人材育成とは?」の内容をお届けします。(全3回)

メルカリの人材育成とは

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井上:今日は働き方改革とともに、その先にある「人材育成」や「人づくり」ということもテーマにしているので、その観点でメルカリが今取り組んでいることと、これからしていきたいと思っていることも教えていただけますか。

唐澤:育成に関しては、うちの会社は今までほとんどやれていなかったと思います。マネージャーが必要ならマネージャーとしての力がある人を採用するという感じで、プロフェッショナルを採用して組織をつくってきたので。でも、最近は内部登用で初めてマネージャーになる人も出てきていますから、そういうメンバーにマネジメント等をきちんと教えていかなければいけない。

ただ、やっぱり重要なのは現場で育てることであって、人事があれこれやるという話でもないんですね。人事としてもいろいろ用意はしますが、結局は「育てることのできる人を育てる」ことが大事なので、そこをどう実現するかという部分にフォーカスしています。そういう意味でも現場のマネージャーが中心です。データドリブンというのも、データを取ったうえで「こういう人はこういう風に育成したらこういう成果になるよね」というものを把握していくという感じになります。

井上:「人を育てることのできる人を育てる」ために、具体的な取り組みとして何かイメージしていらっしゃることはありますか?

唐澤:具体的なトレーニングのロードマップはこれから書いていくという段階です。ただ、それは当然ながら「リーダーシップスキル」と「ファンクショナルスキル」の2軸になりますし、大切なのは、それをどんな風にメルカリらしく伝えていくか。一般的なリーダーシップを教えても仕方がない。「メルカリのリーダーってなんだろう」「メルカリのマネージャーってなんだろう」というのが大事になると思っています。今はその人材像を定義している段階ですね。「メルカリのマネージャーってこうだよね。だったらこういう育成になるね」というような。

井上:スタートアップでは現場で経験を積ませることによる育成の割合も大きいように思います。その、学習させるということと、経験させて育てるということの掛け合わせが重要なのかな、と。その意味で、人材の配置、あるいは新たなチャレンジに向かわせるような仕掛けというのは、制度上どのように運用していこうとお考えですか?もしくは、その点でこれから何か設計していきたいと考えていることが何かあれば伺ってみたいと思います。

唐澤:その辺はこれからですね。たとえば「異動したい」といった社員からのリクエストがあっても、「異動申請書ってあるんですか?」「申請書はないから上司に言ってね」「上司に言っても聞いてくれません」なんて話に今はなったりしていて。ただ、それで申請書等をつくることによって皆が期待して、次々「あれがしたい」「これがしたい」という風になっちゃっても「組織としては違うかな」とか、今はそんなことを考えています。

ただ、とにかく人を育てるという意味では成長し続けることが一番大事だと思っています。成長さえしていればチャレンジはあり続けるし、ポストも増え続けるので。それで海外で成長したり新規事業で成長したり、あるいは子会社へ行ってそこでマネージャーに挑戦してまた戻ってきたり。そんな風にして動かしながらいろいろな経験させたいと思っています。

走りながら課題を見つけ、役割を得る

井上:ここで少し唐澤さんご自身のお話も伺いたいと思いますが、マクドナルドである種の変革に大成功したのち、なぜメルカリという新たな場へ移ろうとお考えになったんでしょうか。

唐澤:マクドナルドには本当に感謝していますし、今でも大好きな会社です。ただ、本当にどん底から立て直してV字回復で最高益というところまで見えたので、ある意味で「一旦はやりきったな」と。そう思ったとき、自分が得ることのできる経験の幅をもっと広げたいという思いが出てきました。当時の僕はマーケティング部長でしたが、たとえばいつかCMOやCEOをやるとなったら、そこで結果を出さないといけないわけですよね。それになること自体がゴールではないので。それなら、このまま純粋にマクドナルドで育つより外で経験を積むほうが結果を出せるようになると思って、その修行がしたくなったという感じです。

井上:そのなかでメルカリを選んだのはなぜだったんでしょうか。

唐澤:勝負や修行をするという意味では極力「真逆」に振った方がいいと思いました。それで「今度は日本企業で」と。規模が小さいから意思決定の修行もできますし。また、それまではリアルな店舗のビジネスでしたけれども、今後はテクノロジーを避けて通れない。だからテックやオンラインのビジネスを学ばなければいけないとも思っていました。そういった背景もあって真逆に振ったという感じですね。

井上:今、メルカリにおける唐澤さんのミッションというのはどんどん広がっている感じがします。経営陣からの信任を得たうえでポジションを広げているということだと思うんですが、それができているのはなぜだとお考えですか?

唐澤:当初は社長室に入ったんですが、社長の小泉文明とは入社前に2回ほど話をしていたんです。そのときは、「うちにおいでよ。どんな仕事がしたいの?」「経営をやりたいんですよね」「オッケー」なんていうやりとりだったんですが、3日後ぐらいに「社長室作ることにしたからおいでよ」と言ってもらえて。それで「何をするんですかね」と聞いたら「好きなことやんなよ」みたいな(笑)。それで、特にアサインもなく好きなことをやっているうち、人事周りで課題が多いと感じて、そこにかなり突っ込んでハンズオンで仕事をしていました。社長室にいたので経営と直接話す機会も多く、人事の話をしているうち、「じゃあ(人事を)やってみる?」という話になりました。

井上:まさに自走で進めていくなか、課題を見つけてそこを改善しながら、経営陣の承認を得て役割を広げたという感じだったんですね。

唐澤:気が付いたらそうなっていましたね。「人事をやりたい」と言ったわけでもなく。

井上:そういう経緯を経て今まさにチャレンジしている、と。では、唐澤さんとしてこれからの5~10年という長期のスパンを考えたとき、どんなチャレンジをしていきたいとお考えですか?まずはメルカリというベースのうえで考えていらっしゃると思いますが。

唐澤:今はとにかくメルカリを「最強の組織」の会社にしたいということしか考えていません。それに5年かかるのか10年かかるのか、3年でできるのか分かりませんが、Googleみたいな会社にしたい。テクノロジーで世界を変えるプラットフォーマーであると同時に、Googleが新しい仕組み等を入れたりすると皆がベンチマークして真似するじゃないですか。「Googleがやることは新しい」と思って。それが本当に正しいかどうかは分かりませんが、「そんな風にベンチマークされるような会社にメルカリがなれたらいいな」と。そうすれば、次に続くスタートアップがまたそれを目指して伸びていったり、僕らがその人たちを支援したりもできる。そういう存在になりたいと思っています。

主体性を発揮できる人材か採用段階で見極める

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井上:では、ここで会場の皆さまからもご質問をいただいきたいと思います。

会場:「自由に主体性を発揮してもらうため、あえてルールをつくらない」とすると、そこで潰れてしまう人も出てくるのではないかなと思いました。実際のところ、自ら考えて行動できる人間と、何をしたらいいか分からなくて潰れてしまう人間の2つがあるように思います。そこで、後者の潰れてしまいそうな人たちには、どういったケアをなさっているのか教えてください。

唐澤:その点は、まず大前提として採用段階で見極めることが大事だと思っています。自走できる人材なのかどうかという部分は採用段階からすごく注意して見ています。そこもバリューに沿っているかという意味で考えながら、必ず「Be Professional」を満たすことができるかという目で見ています。ですから、入ったときにそのレベルでないと「採用のエラーだね」という判断を僕らはします。早い段階でその芽を見つける。そこはもちろん伸ばしてあげなければいけないんですが、そのときアサインされている仕事とは別の役割が合うかもしれませんし、他の役割を探してあげるということも結構します。

それと、ケアという意味でも、当然、カウンセリングですとか、そういうケアは労務としてかなり手厚く行っています。ただ、今後はそこも、特に組織が大きくなればそういう課題も増えるので、もう少ししっかりやっていかないといけないということは感じています。

会場:創業60年以上のメーカーに勤めています。弊社の場合、昔からの人事制度で自縄自縛のような状態になっていて、ゼロからルールをつくるのが難しい状況です。昔からの習慣やルールを変えるアクションを起こした経験がもしあれば、その進めかた等を教えてください。

唐澤:マクドナルドにいたときは組織風土改革のようなことも行っていました。業績が最も悪かった時期は皆が下を向いて仕事をしていたし、新しいこともまったく出てこないような状態だったんですね。それに、悪いときは他部署の批判がはじまる。「あの部署のせいでこうなってる」みたいな。そういう感じだったので、制度というよりは今日お話ししたようなバリューを、外資でしたけれども日本独自で本社スタッフのバリューというのをつくってみたんです。現場がある会社には現場を中心としたバリューがありますし、もちろんそれは大事なんですが、本社からすると「それ以外にもあるよね」と。その議論を、全本社スタッフを巻き込んで行っていきました。

そのときの肝だったのは、まずトップを“握った”こと。変えていくときは社長を握らないと「次の階層」が乗ってこない。2階層目が乗らないと無理なんです。その上で次はミドルの方々も。特に長く働いている、いわゆるおじさんたちのなかで影響力の大きい人たちをきちんと抑えることが大事だと思います。僕はその人たち一人ひとりに頼み込みました。「一緒のチームでやってください」と。それでプロジェクトチームを握ることができたんですね。「有志でやります」と言いながら個別にお願いしました。すると「あいつがやってるなら俺も仕方がないから乗るか」となるので。

最後に大事なのはその旗振り役です。誰かが旗を振って「がんばります」と言わなきゃいけない。ただ、それを「僕はやらないほうがいいな」と、そのときは判断しました。当時の僕は社長室長だったんですが、それだと「どうせ社長がやってるんだろ?」「どうせ人事がやってるんだろ?」となって皆が乗ってこないので。それで、そのときは言い出してくれた若手の女性社員に「私がやりたいです」と皆の前で話をしてもらったりして。結構細かく計算しながら、そういう建て付けで進めました。それで共感してもらったのがポイントだったと思います。

会場:キャリブレーションを行うにあたって特に注意している点を教えてください。どれほど長い時間をかけてキャリブレーションを行っても、結局はマネージャー同士の交渉力や、彼らの力によって組織の評価は結構ぶれたりすると感じていて。

唐澤:これ、難しいんですよね。やっぱり声の大きい人に「俺が言ってるんだからこうだよ」と言われたら、その意見が通ったりすることは現実としてあります。ただ、そうならないよういろいろな目が入ることは大事なので、人事は必ず同席するようにしますし、ときには「それ、おかしいよね」ということも言わなければいけない。あと、キャリブレーションはいろいろなレイヤーでやります。現場でやって終わりではなくて、もう1つ上の階層でマネージャーがまた同じ人を見たりして、最終的には社長も会長も含めて全員が目を通すという形にしています。

あと、僕らは今システムの内製をはじめていて、人事評価システムも社内のエンジニアにつくってもらっているんですね。それでデータが回るようになれば、たとえば「この人の部門だけ昇給が何%になっています。これは上がり過ぎですね」といったことをグラフにできたりもしますので。そんな風に数値化していくということも結構やっています。

井上:では、時間がそろそろ迫ってきましたので、最後に唐澤さんから会場の皆さまへ向けたメッセージをいただければと思います。

唐澤:やはり人が組織をつくり、組織が会社をつくり、それで事業がつくられます。ですから一人ひとりが本当に大事ですし、とにかく個人の成長が組織を成長させ、会社を成長させると、僕はずっと信じてきました。メルカリをそういう組織にしていくため、そこを目指して精一杯頑張りたいと思っています。僕にとっては、皆さまはそういうことを一緒に目指していけるような仲間だと思っていますので、共に頑張っていけたらと思っています。

井上:ありがとうございました。(会場拍手)。

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