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仕事の効率アップにもつながる根回しのコツとは?

投稿日:2018/06/09更新日:2019/04/09

根回し『社内を動かす力』から「利害関係を見極め、健全な根回しをする」を紹介します。

「根回し」と聞くとあまり良いイメージを持たれない方も多いでしょう。不透明なプロセスの中で非合理的に物事が決まっていくというイメージを持たれやすいからかもしれません。しかし、本来「根回し」とは樹木の植え替え後の活着を促すためにする作業であり、ポジティブな意味合いを持つものです。実際のビジネスでも、適切な方法で重要関係者に事前に相談したり合意を取り付ける、あるいは反対しないように説得するというのは、物事を進める上ではやはり必要な活動です。

「外堀を埋めてから反対しそうな人を説得する」「シンパを多くの部署に作る」「返報性を利用する」など、その方法論はいろいろあります。手順の一般論化はなかなかできない部分もありますが、社内の状況を客観的に見極めながら、適切な人に適切に働きかけ、根回ししていくことが、結局は仕事の効率を高めるということは意識しておきましょう。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

◇    ◇    ◇

利害関係を見極め、健全な根回しをする

「根回し」というとネガティブなイメージを持つ人もいるかもしれませんが、「健全な根回し」はどんどんやるべきだと私は思います。日本に留学経験があり、グローバル企業の日本法人でトップを務めていたアメリカ人が、「ヘルシー・ネマワシは大切」という趣旨の話をしていたのを印象深く覚えています。

では、「健全」とは何でしようか。私は、「私利私欲に走らない、社会、会社のためになる」ことだと考えます。「根回し=自分だけの立場を有利にもっていく」という悪いイメージにとらわれず、Win-Winの関係を作りましよう。

ステークホルダーの分析をする

大きな企業になればなるほど、部署間で利害が相反することも珍しくなくなってきます。担当役員同士がぶつかるなど、意思決定者の意見がまとまらないこともしばしばです。関係者が多いほど、背景が多様なほど、それぞれの目標や価値観、見解が異なるからです。

このような場合、当然「微妙な」調整は必要不可欠です。この際、対象となる事柄に対し、関係者がどのような興味関心を持っているか、または影響力を持っているかを冷静に分析しなければなりません。しっかりとステークホルダーを分析し、見極めなければ、根回しのしようがありません。

詳細は後の章で後述しますが、たとえば、ある改革を実施する際、反対する人が出ることは必然です。なぜなら、失うものがあるからです。誰が何を失うのか、失うものの大きさはどのくらいか、何かで補完できるのかなどを事前に把握しておかなければ、有効な手が打てないのです。

効果的な道筋でステークホルダーに根回しをする

実際に根回しをするにあたっては、人脈が非常に重要な意味を持ちます。たとえば、いきなりトップに根回ししたいと考えても、現実的に無理でしょう。そうであれば、トップに話を入れることができる役員は誰なのか?その役員に話を通せる部長や課長は誰なのか?というように、人脈の連鎖で根回しをすることが大切です。

最終意思決定者が部長や課長であっても、基本的な考え方は同じです。大切なのは、「意思決定者やキーパーソン」にたどり着く道筋を押さえられているかどうかです。

一方、キーパーソンへの根回しが成功しても、現場で反対する人が出て膠着状態に陥った、という話もよくあります。いくら話がオーソライズされても、実行されなければ水の泡です。最終的に実行しきるところまで考えれば、上だけではなく、下、横、斜めと、複数の方向に根回しをしておくことが不可欠です。

図
以下の談話は、工場の生産性改革プロジェクトに社長の命を受けて派遣された、あるメーカーに勤める知人の話です。

「社長肝いりのプロジェクトだったにもかかわらず、最初は総スカン状態でした。しばらくの間、工場の人からまったく口をきいてもらえなかった。そこで、改革プロジェクトに実際に着手する前に地ならしをすることにしたのです。3週間かけて工場内のキーパーソンを見つけ出し、一人ひとり丁寧に説明して回り、かなりの回数飲みに行った。最後は組合とも握った上でようやく始動にこぎつけました」

今やビジネスはますます複雑なものとなりつつあります。一つの仕事に関わるプレイヤーが増え、一つの意思決定に影響を及ぼすステークホルダーも多岐にわたり、さらには、グローバル化がこの流れに拍車をかけています。

中には、「根回し」的なことを嫌う(あるいは好む)国民性の人もいるかもしれません。実際、グロ-ビス経営大学院の卒業生で、ある外資系製薬会社に勤める方からも、「国籍の異なる外国人の上司が2人いて、一人は事前調整を好み、一人はミーティングでの一発勝負を好むので対応に苦慮している」という話を聞いたことがあります。

様々な思惑が錯綜する中、自らの信頼の残高を積み上げ、人脈を作り、健全なる根回しをいつでもできる状態に準備しておくことが重要なのです。

根回しと下ごしらえの注意点

最後に、根回しを含む「下ごしらえ」に関する注意事項を挙げておきます。

1.時間
根回しは表立ってやる活動ではなく、明確な区切りや終わりはありません。つまり、いつ潜水艦状態をやめ、正式に浮上するか、そのタイミングがカギとなります。時間をかけすぎると浮上する勢いを失ってしまいますし、短すぎても根回し不足となり、うまくいきません。「潮目」を見定めることが重要です。

潮目は、自分の味方をしてくれる人がどの程度の割合になったか、キーパーソンの発言がどのように変化してきたか、強く反対している人の態度がどのように変わってきたか、といった変化を敏感に読み取りつつ、総合的に判断してください。

2.リソースの確保
リソースとは、すなわち、お金や人です。ありがちなのは、「コンセプトには理解を示してくれたのに、実際に動こうとしたら予算も人もつかない」といった話です。改革提案にせよ、新商品提案にせよ、使命や効果やコンセプトを語り広めることに熱中し、肝心の「兵糧」をつい忘れてしまいがちです。

すべてを根回しレベルでやる必要はないですが、実行段階に入ればいずれ必要になるものです。会社や事業部の財務状況、利益推移からみてどれぐらいの予算が確保できそうか、人員を回してもらっても大丈夫そうな部署はあるか、といったことを日頃から意識しておきましょう。

3.安易な迎合をしない
下ごしらえの期間に、後で身動きが取れなくなるような安易な「迎合」「約束」を絶対してはなりません。腹を割って話をしているうちに、相手に取り込まれるケースはしばしば見受けられます。取り組みを前に進めたいという想いが強ければ強いほど、目先の協力を取り付けたいがために視野が狭くなり、後で自分のクビを絞めるような取引をしてしまうのです。

説得が難しそうな相手、海千山千のベテランを相手にする時ほど、そうした心理状態に陥りやすいようです。常に一歩引いた目を持っておくよう注意しましよう。

(本項担当執筆者:田久保善彦 グロービス経営大学院研究科長)

『社内を動かす力』
田久保善彦(著)、ダイヤモンド社
1620円

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