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ベストセラー『お金2.0』『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』編集者が語る本の未来とコミュニティ

投稿日:2018/04/10更新日:2019/04/09

先日行われた「ビジネス書グランプリ2018のトークセッションの内容をお届けします。リベラルアーツ部門賞を受賞した『お金2.0』の編集者・箕輪厚介氏、マネジメント部門賞を受賞した『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』の編集者・中川ヒロミ氏に、制作裏話や本の未来について語っていただきました。モデレーターはグロービス経営大学院 教員の荒木博行です。

自分は何者かを知り、相手の立場になりきる

ビジネス書グランプリ

荒木:まずは、これまでどんな本を手掛けてこられたのか教えてください。

箕輪:もともと双葉社で営業をやってたんですけど、秒速で1億円稼ぐ男から「3000万とりあえず払うから雑誌作ってくれ」って話を取り付けて編集部に投げたんですよ。これは喜ばれると思って会社に意気揚々と入ったらすげえ嫌な顔されて。それを半年以内に出すって話しだったけど、「雑誌なんて1冊そんな急にできません」「箕輪が作れ」って言われて、「いいよ、作るよ」って。

レスリー・キーや筧美和子を呼んで、普通に考えたら出てくれるはずがないんだけどそこをゴリゴリやって、3万部刷ったら3万部完売したわけですよ。それで、編集部来いっていうことになって編集部行って、1年目で見城徹の『たった一人の熱狂』と堀江貴文の『逆転の仕事論』っていうのを2冊出して、両方ともちゃんと売れて。

で、「幻冬舎来い」ってことになって、NewsPicks Book立ち上げて、『多動力』出して、『日本再興戦略』とか『お金2.0』とか出して今って感じで、もうスター街道まっしぐら(笑)。

荒木:やっぱり見城さんとの出会いが人生を変えたのでしょうか?

箕輪:フェーズは変わったとは思いますけど、出会いで人生は変わりません。こっちが何を持っているかなんで。見城さんと出会う人って1日何百人もいると思うんだけど、その化学反応なんで。自分が何者かであれば絶対出会うし、出会った瞬間変わる。

荒木:見城さんや堀江さんをどうやって口説き落としたのでしょう?

箕輪:そこは見城徹の言葉で言うと「他者への想像力」で、本当に想像しますね。見城さんは熱狂の人だから俺も熱狂して前のめりで1秒でも早く編集するし、何かあったらすぐ会いに行くし、過剰なまでに人間対人間を追求する。だけど、ホリエモンって異常なまでにそれを嫌うので、ホリエモンの稼働ゼロで本が作れるんだったらいいだろうと。俺がイノベーターにインタビューしてホリエモンがコメントする本だったらスマホをいじればできるから、数々のオファーの先に行くだろうなと。無名なときはこの人が何を求めてるか徹底的に肌触りを感じるぐらい想像して、ドンピシャだねっていうことをいかに提供するかっていう。

荒木:『お金2.0』は、どのようなターゲット、プロセスで作ったのでしょう?

箕輪:NewsPicks Bookっていうレーベルが毎月1冊出すんで、常にネタを探し続けて、書かせ続けて、口説き続けるっていう地獄絵のような毎日を送ってるわけです。

ずっとそんな状態で1年駆け抜けてきたわけですけど、途中でVALUとかが出てきて「おもしれぇな」って思って、俺も70万ぐらい儲けて。そしたら人づてに「佐藤さんが会いたいって言ってる」って来たんですよ。タイムバンクっていう有名人が時間を売るサービスを佐藤さんがやるから、有名人を紹介したりサービスのコンサルみたいなことをやってほしいって。

佐藤さんに会ったら本当に目がキラキラしてて、少年のように「お金の未来、VALU、タイムバンクで変わります」って。その話が超面白くて瞬間的にスマホで盗聴して。僕オンラインサロンの「箕輪編集室」っていうのをやってるんですけど、そこにすぐ投稿したんですよ。そしたら「何これ!? 面白過ぎる」って異常なまでにバズって。まさにこのタイミングだと思って、佐藤さんに「本出してください」って。9月頃の打ち合わせで「11月に出してくれ」って言って、3週間ぐらいで書いてもらってという感じ。

中川:原稿来ないときは、どうするんですか?

箕輪:「事故りますよ」って言って(笑)。でも「べつに事故ってもいいっす」って感じじゃないですか、あっちは。「そっちのビジネスモデルじゃないですか」って思うから。でも、それは自分ごとにしてもらいますね。要は「タイムバンクがリリースする11月に出さないと意味ないっすよね」という言い方をする。

だから、今の業務においては、俺はモチベートが一番の仕事ですね。「腱鞘炎になってもいいから出せ」と。で、「俺らで日本を変えよう」と。やっぱ、緩やかに攻めても時代って変わんないんで「怒濤のように攻めて現象にしよう」と。

荒木:『お金2.0』を出す前と出した後で、空気が変わった感じはありましたか?

箕輪:『お金2.0』ほど感じたものはなくて。『お金2.0』はNewsPicks Bookの若者のバイブルみたいになってて、初速も本当良かった。そしたら佐藤さん頭いいから「NewsPicksを読むネットリテラシーが高くて能動的な人と、新聞を読む年配で能動的な人は取りきった」と。その時点で5万部以上売れてたんで。「でも、ただ普通に働いてて『なんで今、仮想通貨とか言ってんだろう』って人は電車広告以外でリーチできませんよね」って。

実際、電車広告で全線ジャックしたら、異常に数字が入って。それって肌感覚で分かるもので、うちの母親から「ビットコインが下がって不安」ってメールがきた(笑)。何かで『お金2.0』読んでビットコイン買ってたんですよ。だから、違う面を完全に取ったなと思って。

マネジメントの次のキーワードは「OKR」?

ビジネス書グランプリ

荒木:では中川さん、過去手掛けた本や経緯を教えてください。

中川:日経BPに入ってから最初は通信の専門誌、日経コミュニケーションという雑誌の記者をしていました。そのあと書籍がやりたくて書籍に移ったんですけれど、ちょうどiPhoneが出る前後の時期で。当時は通信業界って通信キャリアがすごい力を持っていたんですけど、AppleがiPhoneを作ってキャリアの上位に立った下克上みたいな状況を見て、「シリコンバレーってすごいな」と思って。そのあとは『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』とか、『フェイスブック 若き天才の野望』とか、『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』といったリコンバレーの本を多くやっています。

荒木:すべて売れましたよね。基本的には、シリコンバレー軸でずっと来ている?

中川:そうですね。そんなに器用じゃないんで、あまり好きじゃないことやっても上手に作れない。シリコンバレーとテクノロジーの話が好きなので、それが売れればそのままやらせてもらえるのでいいかなって。

荒木:『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』は、30年前にインテル元CEOのアンディ・グローブが書いた本で、絶版になっていたところ昨年改めて取り上げて大ヒットしたと。この辺の経緯など教えていただけますか。

中川:ベン・ホロウィッツさんの『HARD THINGS』っていうCEO向けの本を2年前ぐらいに出したんですけれど、その中でこの本が紹介されていて。『HARD THINGS』は、潰れそうになったときに会社をどうするのかとか、親友を降格とかクビにするときどうしたらいいのかといったことを指南していて、本当に深い本です。「経営者しか読まないんじゃないの?」みたいな声もあったんですけど、何かに立ち向かっている人とか新しいことを作りたい人に響いて、10万部売れたんですよね。その著者が部下を教育したり後進を育てるときにはこの本が一番だと紹介していたので、読みたくなる人もいるよねっていうことで。

荒木:元々『インテル経営の秘密』っていうタイトルで出ていて、僕も読みました。すごく良い本なんだけれど全くセクシーじゃないっていうか。もうちょっと見せ方を変えれば結構いけるのにと思っていたらこれがバーンと出て。印象的だったのが、本の書き出しで経営を朝食工場で例えているんですよね。要するに目玉焼きを作ってお客さんに出すっていう、これが経営の本質だっていう。

ところで昨日、OKR(Objects and Key Results)に関する新しい本が出ましたよね?

中川:OKR シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法』です。OKRは、『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』の中でアンディ・グローブが目標を達成するためのマネジメント手法として紹介しているものです。例えば本を来月までに2万部にするといった数字目標やKPIはよくあるんですけど、それだと数字に振り回されて何のためにやっているのかわからず、箕輪さんが得意なモチベーションが上がらないわけですよ。

そうではなく、まず「日本を変える」といった大きな目標を立てる。その上で「この本を2万部売る」といったものを立てて、2段階でやると。大きな目標と、目の前の何をするかっていう小さな「Key Results」、その2つを決めるというものです。

本の未来はどうなる?

荒木: NewsPicks Bookを見ていると「入口」っていう感じがして、本だけで完結させずコミュニティに導線を引っ張っていくかとか、本の位置づけがすごく変わってきているなと感じます。

箕輪:最初はただ月1冊届けようってやってただけで、識者にはコミュニティへの導線だと見えたのが現実なんですけど。でも、コミュニティっていうのはその通りで、本が売れないとかテレビが観られないって何が起きてるかっていうと、情報が爆発してるんですよ。仮想通貨に興味あってもその日に出る仮想通貨のWeb記事、新聞記事、本、絶対読み切れないでしょ。要は、人間が1日で処理する能力が限界を迎えてる。

そうなると、食べログでみんなが「いいね」っていう飲食店を選ぶように、大きなコミュニティで、「この人たちが信頼してるならそれを読もう」っていうふうにするしか決断の数を減らすことができなくなってきて。そうなってきたらコミュニティを組織するしかなくて、「仮想通貨の本いっぱいあるけど、NewsPicks Bookが出してるならそれを読もう」とか、「箕輪が出してるなら買おう」とか、そういうフェーズに入らざるを得ない。

荒木:ファンがいる中に投げ込むみたいな、そんな感じなんですかね。

箕輪:そうです。僕は頭の中で大きな円を描いててて、箕輪のファン、NewsPicksのファン、ビジネス書のファン、ホリエモンのファンとか、それが重なってはいるんですけど、ホリエモンのファンと箕輪のファンは半分以上重なってるし、箕輪のファンにはあちゅうのファンもちょっと重なってるし、その面を取っていくイメージです。で、取ってくためにはここと対談するとか、コミュニティを一面ずつ埋めてく。

荒木:NewsPicksアカデミアは、本をすべて会員に送っていますよね。相当手間掛かると思いますが…。

箕輪:NewsPicks BookとかNewsPicksアカデミアの仕組みをやりたいって出版社とか書店が言うんだけど、「ぜひ真似してください」と。「死ぬよ?」と。絶対真似できないからって思う。誰よりも考えて誰よりも働く以外ねぇんだよと思う。その次に「コミュニティだな」って気づくってことです。それを言って誰かが「コミュニティなんだ」って真似してもすでに時遅し。僕はまた手を動かして、考えて、新しいことに気づき、言ってるときにはまた時すでに遅し、その繰り返しです。

中川:コミュニティの話は箕輪さんが言う通りで、コミュニティをアクティブに面白く運営するってすごく大変で。私も1か月限定でコミュニティをやったことがあるんですけど、なかなか盛り上がらないんですよね。会っていない人ってコメントくれないし、「いいね」もしないし。余程のアイドルとか本人にすごく魅力がないと難しいですね。

荒木:本屋に大量の本が毎日送り込まれる中で、どうやって出す本を知ってもらうかを考えるのは難しくなっていますよね。

中川:箕輪さんが一番そうだと思うんですけど、編集者が前に出ていかなきゃいけないのかなとは思いますね。日本って取り次ぎという素晴らしいシステムがあって、作ればある程度配本して店頭に並べてもらえるので、そこに少し甘えていたところがあると思うんですけれど。本が溢れて、インターネットとかいくらでも時間を奪われるものがある中で本を読んでもらうには、編集者が頑張らないと。

箕輪:情報が爆発する時代ってDJとかキュレーターの時代なんですよね。選ぶ人の価値が上がる。要は出版業界もテレビ業界もラジオ業界もそうですけど、単純に独占市場だったから作れば売れただけで。今はそれが全部フルオープンで、インターネットで誰でもラジオやれるし、誰でもブログ書けるし、誰でも動画流せるってなった瞬間、「おまえ雑魚じゃん」ってバレるっていう。要は目利き力、情報が溢れすぎて選べないから良いものを選んでくれっていう信頼に足る人物であるっていうのが、編集者に求められるんですよね。

AIとBI時代の組織とは?

荒木:最後に一言ずつお願いします。

中川: アンディ・グローブさんが2年前に亡くなって、訳者の小林さんも見本が出て発売になる間に亡くなられてしまってすごく残念なんですけれど、お二人にこのことをお伝えできたらなと思います。

私も管理職で部長をやりながら本を作っているんですけど、この本を読むとマネージャーやリーダーの仕事は自分のアウトプットを上げることじゃなくて、自分が関係してるところのアウトプットを上げること、それに尽きるというか。部下が仕事をしてないのは上司がモチベーション上げてないからだし、「教育する時間がない」って言うのは、お腹が空いてるのに「食べる時間がない」って言ってるぐらい馬鹿だとか、マネージャーとかリーダーにはグサグサ来る言葉がいっぱい書かれているので、ぜひ読んでいただければ。

箕輪:僕のオンラインサロンの「箕輪編集室」は会員が600人ぐらいいて、これこそ未来の組織だって思う。例えば「『お金2.0』のPOPを作りたい」と急に幻冬舎のデザインの人に頼んだら、「2週間もらわないと無理です」となる。でも、オンラインサロンのFacebookに「『お金2.0』のPOP作って」て言ったら1時間以内に十数個でてくる。人って金もらって働いてると、仕事が増えると損したって思うんですよ。でも、オンラインサロンって僕にお金を払って仕事をしようとしてる人たちなんで、コミットしようとするんですよ、その分。要はお金とか関係なくて、寝る間を惜しんで考えて夢にも出てきちゃうみたいなことが一番大事なんで。

僕が担当したビジネス書の文脈で言うと、AI(人工知能)とBI(ベーシックインカム)時代は働かなくても食っていけるから、もう仕事をしなくていいってなると楽しい仕事はむしろエンタメになるんですよね、「金払ってでもやりたい」って。だから、僕とかホリエモンのオンラインサロンって未来の労働組織で。

今、地方にこの支部を作ろうとしていて、そうしたら日本全体で変わるなと思って。落合陽一さんの本とか、メタップスの佐藤さんだとか、 SHOWROOMの前田裕二さんの本とかもその1つ。本は日本っていう国自体をアップデートするための1つの手段で、メインはオンラインサロンかなって今は思ってます。

荒木:箕輪さん、ヒロミさん、ありがとうございました。

 

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