『ティール組織』――全社員経営をどうやって実現するか? 

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上司は存在しない。ミーティングもほとんどない。組織図も、職務記述書も、肩書きもない。にもかかわらず高い成果を実現し、社員のモチベーションは高く、文字通り全員が経営にあたっている。こんな進化型(ティール)組織が、すでにたくさん生まれてきているという。

マッキンゼーで10年以上にわたり組織変革に携わった著者は、「社員のだれもが意味のある判断をできるようになるにはどうすればよいか」といった問いを出発点に、12の先進的な組織を対象に調査を行い、進化型組織を見出した。

本書の構成は、組織の発展段階を、人類の歴史と発達心理学の視点から紐とくところから始まる。著者が豊富な先行研究と事例調査により定義した発展段階の概要は以下の通り。それぞれの組織の特長と典型的に抱えている課題も言及されている。個人的には、まず、この分類と名称自体の納得度が高く、価値があると感じる。

・衝動型:集団をまとめるためにトップは常に暴力を行使。マフィア等
・順応型:ピラミッド型の階層構造、トップダウンによる指揮命令。行政機関等
・達成型:目標は競争に勝ち、利益を出し、成長を目指す。今日の多くの多国籍企業
・多元型:文化と権限委譲を重視して、モチベーションを高める。サウスウェスト航空等
・進化型:自主経営チーム、自然体で働く、存在目的を重視する等の独自の特徴を持つ。パタゴニア等

大事なのは、型自体に善し悪しがあるのでなく、環境や目的との整合が重要であるということだ。皆さんの組織はどの型だろうか?自組織の現在地を把握することで、起こりうる課題を想定し、自分の行動を考えるヒントにもなるかもしれない。

続く第Ⅱ章では、調査結果を元にした進化型組織の具体的な特徴(組織構造、意思決定プロセス、慣行、人事プロセス等)と、従来モデルとの違いが詳細にわたって記述されている。進化型組織はこれまでの組織の考え方と根本的に異なり興味深い反面、「こんな組織が機能するのか?」という疑問がすぐに沸く。そういった疑問に対しても、一つひとつ具体事例を元に説明がなされている点も、納得度が高い。

さらに第Ⅲ章では、進化型組織を作るためのポイントが記述されている。特に印象的だったのが、進化型組織を実現するということは、組織の上位にいる人間が人や組織を真の意味で信頼し、管理しコントロールしたいという欲求を手放すこと。そして、それは経営トップが本気でその世界観を理解し、求めなければ実現しない。ということだ。

とはいえ、現時点で従来型の組織に所属している方も、進化型組織のコンセプト、慣行等を参考に、自組織を良くしていくことはできると著者は言う。組織内で起こる様々な不健全な状況に対し、それが起こる背景を、組織の型と特徴を参考にして探索し、解決策として進化型「的」な取り組みを試す等が考えられる。

ところで、手前味噌だが、グロービスは進化型組織との共通点が多いと感じている。オープンな情報共有、社員相互のフィードバックの慣行、自己申告(次年度のミッションと年俸を自ら申告)を柱とした人事制度など、信頼と自律を前提とした組織運営が実践されている。このグロービスの組織運営については、私がコンサルタントとしてクライアントから相談を受けた際に、事例として紹介することがよくある。「とても参考になる」と喜ばれることが多い一方、「グロービスは特殊だから」という反応も時々ある。今後は、本書の整理を借りながら、より体系的に議論していけそうだ。

テクノロジーの進化に伴う社会変化の中で、進化型組織はますます求められるようになるだろう。本書を通じてその世界観に触れることは、多くのビジネスパーソンにとって価値ある体験であり、一読をお勧めしたい。

『ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』
フレデリック・ラルー (著)、英治出版
2700円

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