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定量分析をする際は実態に迫れる数字を考えよ

投稿日:2018/01/20更新日:2019/04/09

『ビジネス数字力を鍛える』から「分析の際の前提を明らかにする」を紹介します。

分析の大きな目的の1つは「実態を明らかにすること」です。定量分析では特に「どのような数字を求めれば実態に迫れるか」が非常に大切なポイントになります。たとえば国ごとの経済的豊かさを知ろうとする際にGDPの総額をそのまま比較してもあまり意味はありません。このケースであれば「1人当たりGDP」を見る方が適切と言えるでしょう。また、「1人当たりGDP」という平均値が同じでも、ばらつき方が違うと実感値としての豊かさも異なってきますので「ジニ係数」(富の偏りを示す指標)が手に入るなら、それも併せて見るとさらに実態に迫れます。

ところが、数字を作る人も、数字を読む人も、こうしたことにまで頭が回らないシーンが多いものです。これでは正しい実態把握、さらには意思決定ができません。目的を意識した上で、どのような前提で数字を作れば実態に迫れるかを考えることは、定量分析の基本中の基本なのです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

◇    ◇    ◇

分析の際の前提を明らかにする

いよいよ、データ加工や分析といったステップに入るわけですが、その前にもう一つ大切なことがあります。それは、分析を始める前に、どんな前提を置くかを考える、決めるということです。

このステップは忘れられがちですが、非常に重要です。なぜなら、いったんデータ加工や分析に入ってしまうと、往々にしてその作業に没頭してしまい、そもそもの前提に目が行きにくくなるからです。皆さんもエクセルで大量のグラフを作成しているうちに、結局なにがなんだかわからなくなってしまったという経験があるのではないでしょうか。

また、ある程度まで分析を進めてしまった段階で、そもそもの前提などを変えようとしても、やり直す作業が大変で無意識のうちに心のハードルが高くなってしまうのが人間の性です。そして十分な検討が行われないまま本質を見逃してしまうのです。

一つ例を挙げましょう。チェーン展開している酒販店の店舗の売上げの好不調を分析し、不振店舗のテコ入れをしたいと考えているとします。まずは、次のような考えが浮かぶはずです。

ステップ1「不振店舗のテコ入れをするための示唆を得る」という目的を明確化
ステップ2「A店とB店はなんとなく売上げが下がっている。理由は○○かな」といった仮説を立てながら、データを集める

そのうえで、以下のようなデータをまずは入手したとしましょう。

・販売品目別売上データ
・販売品目別利益データ

そしてデータをエクセルに入れて、売上げと利益額を比較する表を作る加工を始める――通常はそんなアクションを起こすのではないしようか。

ここで、一歩踏み留まって考えてみましょう。さて、図のグラフを見て何か気がつくことはないでしょうか。ここでは、売上げの絶対額を比較しています。見過ごしがちなことですが、そこにはどんな前提があるでしょうか。

一般に、絶対値の直接比較が有効であるためには、少なくとも次に挙げるような前提が成り立っていなければならないはずです。図の作成者は、これを意識していたでしょうか?

・店の大きさには著しい差はない
・立地条件に大きな差はない
・販売担当者の採用などは店舗による大きな違いはない
・販売担当者の能力に大きな違いはない

もし、店の大きさが5~10倍も違った場合、この売上額の絶対値を比較することにそれほど意味はありません。あるいは、A店は東京駅の中にある店、B店は郊外型店舗である場合、つまり店の立地が極端に違う場合も、この比較に大きな意味はありません。前提をそろえなければ、意味のある分析にならないのです。

そろえて考えるためには、例えば、店の床面積で売上げを割り算し、単位面積当たりの売上げを比較する、あるいは、販売担当者の数で割り算し、販売員当たりの売上げで比較をするなどが考えられます。

立地に関しても、店の前を単位時間に歩く人の量で割り算するとか、その地域の昼間人口、夜間人口などをうまく活用するなど、いろいろな方法を検討する必要がありそうです。利益を比べる場合も、絶対額か売上高比率か、といった視点が考えられます。

つまり、数字を分析する際には、まずその前提条件を押さえ、意味あるものにしなければなりません。この感覚がないままにさまざまな加工方法を覚えて使ったとしても、意味のある分析にはならないのです。

(本項担当執筆者:グロービス経営大学院 経営研究科 研究科長 田久保善彦)

『ビジネス数字力を鍛える』
グロービス経営大学院/田久保善彦 (著)
1728円

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