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AIを使いこなし、AIとともに発展できる経営者をいかに生み出すか

投稿日:2018/01/19更新日:2019/04/09

教育とAIがどのように結びつき、どのような人材創出に役立てていくべきなのか。グロービス経営大学院の教員であり、グロービスAI経営教育研究所(GAiMERi)所長でもある鈴木健一と日本IBMの久世和資CTOが対談した。

久世:本日のテーマは『経営教育におけるAIと、次世代のリーダーの育て方』なのですが、グロービスではいまどのような課題に対してAIの技術を応用したいとお考えですか?

鈴木:私たちグロービス経営大学院は、次世代の経営者やビジネスリーダーを育成するという立場から、AIをつかった教育の効率化と高度化という側面と、AIを使いこなせる人材を生み出す側面の、両方に関心があります。

まず前者のきっかけとして、これはグロービスに限らない教育の現場の課題なのですが、レポートやテストの業務の効率化がありました。

特にグロービスの授業の場合、授業中の発言やフィードバックといったように積極的な人と人のやり取りが学びのなかにあります。また、経営教育においては問いに対してディスカッションをして考えるといったタイプの、唯一の正解がないタイプの学びの場面も多くあります。

久世:AI技術の言葉でいうならば、グロービスの授業は人と人との対話、つまりは「自然言語」のかたまりといってもよいのですね。

鈴木:はい。大きな流れでは、ひとりひとりの学生が自分だけの答えに行き着けるように、教育をパーソナライズしてゆく必要があると感じています。

いまの教育方法は集団教育が主になっていますが、古代にさかのぼればアレキサンダー大王の家庭教師がアリストテレスだったという逸話のように、個別化した教育によって伸ばせる才能もあると思うのです。

教育現場の負担を増やすことなく、こうした個別化した教育を提供してゆくために、おそらくはIBMのWatsonが得意とする自然言語解析といった技術を応用できるのではないかと考えています。

久世:それは非常に興味深い問題認識ですね。すでにジョージア工科大学ではWatsonを使ってTA(ティーチングアシスタント)の業務の一部を受け持つといった取り組みをしていますが、まさにおっしゃられた「答えが一つではない」ような場面ではまだまだ困難があります。

自然言語で蓄積された情報は、企業がまだ十分に活かしきれていない宝の山といってもいいものです。そしてグロービスがもっている講師と学生との膨大な学びとフィードバックのデータのなかには、未来の人材を育成するための鍵が眠っているといっていいでしょう。

鈴木:また、学習効果を測定するためにもAI技術を応用できないかと、私たちは期待しています。膨大な言葉のやりとりのなかで、どの部分で私たちが目指す学習効果が生み出されているのか、学生の『わかった』という感覚はどこから生まれているのかを、そうした技術を使うことで可視化したいと思っているのです。

たとえば学生の発言を文字起こししてテキストマイニングの手法をつかって解析したり、必要があればIoT的な技術も応用したりして学生の取り組み方をデータ化できれば、授業に対するエンゲージメントを客観的に分析することが可能になります。そうしたことを通して、効果的な経営教育の新しい形が見えてくるのではないかと考えています。

AIを使いこなせる経営者を育成する

久世:もう一つの問題認識は、将来必要とされる「AIを使いこなせる経営者の育成」という視点ですね。

鈴木:はい。我々グロービスが社会に輩出したい人物像として「創造と変革の志士」というものがあるのですが、いま起こっている激しい時代の変化の流れのなかで、ICTを抜きにして未来における事業変革や事業創造はありえないと考えています。

私たちの輩出したい人材像も、それに合わせて「テクノベート人材」と定め、最新のテクノロジーを理解し、ビジネスにイノベーションを起こすことのできる新時代の経営者やビジネスリーダーを輩出するためのカリキュラムに変えています。テクノベートとは、テクノロジーとイノベーションを組み合わせて私たちがつくった造語で、「テクノベート・シンキング」など、科目名にも用いています。

久世:私は個人的には経営者もAIを知識として知っているだけではなく、使ったことがあるという経験がないといけないと思っています。

日本の経営者はモノづくりの品質に対する意識、顧客に対するおもてなしの意識はとても高いのですが、逆にAIだけではなくICTの重要性に対する認識はまだまだ不十分なのではないかと危機感を感じています。

「テクノベート・シンキング」というのはまさにそうした、ICTをビジネスの道具として、武器として使いこなせる経営者に不可欠の能力といっていいでしょう。

鈴木:おっしゃるとおりだと思います。私たちも経営大学院という枠組みのなかで可能な限り実地で手を動かしてプログラミングを経験してもらい、テクノロジーに対する理解のエッセンスを汲み取ってほしいと考えて日々取り組んでいます。

テクノロジーに対する正しい理解を得ることによって、それに対して過大な評価を抱くのではない、現実的な応用方法を発想できる経営者が生まれてほしいというのが私たちの願いです。

新しい経営教育に向けて

久世:先程、経営教育の個別化という話題がでてきましたが、明治維新で教育が一律化する前の寺子屋では、少人数で年齢の違う子どもたちが混ざっていて、多様な学びが可能だったという話があるそうです。どこか、グロービスに似ているのではないかと感じました。

鈴木:目指すべき目標があらかじめわからない、不確実性が高い現代世界においては、年齢も、経験も、バックグラウンドも違う人々のあいだで学ぶことで自分を新しい経験に対して開くということが重要だといえます。そういう意味では、グロービスは現代版の寺子屋といってもよいでしょう。

久世:いまはそうした画一性の外側にある体験や経験を得る場所が少ないのかもしれませんね。IBMではAIをArtificial Intelligence(人工知能)ではなく、人間をサポートするAugmented Intelligence(拡張知能)だと捉えています。

AIは人間を追い越すものでも、取って代わるものでもなく、人間に刺激を与えるために協調してゆくものだと考えています。それは技術的創造においてもそうですが、経営においても同じことは言えそうです。

鈴木:新しい場所にいく、知らない人と話すといったような刺激の一つとして、AIがあるというわけですね。よく、組織の中の多様性が必要だと言われますが、個人の中で多様性をつくってゆくことも同じくらいに重要だと考えていて、まさにその話につながると思います。

AIは目的に対して最適化するのが得意ですが、その情報に基づいた「気付き」が得意なのはむしろ人間です。人間には把握しきれない膨大な情報をAIの支援で整理し、仮説を持たずに発想を広げ、大きく踏み出した仮説立案と問題解決ができる、いわば「妄想力」といったようなスキルを伸ばすことが、未来の経営教育では求められているのかもしれません。

私たちの取り組む経営教育も、同様の飛躍が求められている時期といえます。なにが人を成長させるのかを知ることが私たちの目標です。AI技術が可能にする新しい気づきによって、教育における様々なスキルの点と点をつなぎ、人間が成長する一つのストーリーにしたいと、大きな期待を抱いています。

Watsonが切り開く経営教育の新しい知識と経験(Think Watsonより)>>

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