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【日経コラムおまけ】家族の思いを込めた富士山登頂

投稿日:2017/10/11更新日:2019/04/09

8月下旬に富士山に登った。直近の2年間で3回目の登頂だ。なぜこんなに富士山に登るのかを説明したい。

初回は2015年8月末のことだ。「日本人ならば、一生に一度は富士山に登りたい」。そのシンプルな思いに突き動かされて、登頂計画を立てた。皇太子殿下が08年に登られた「プリンスルート」を選択した。

初日の昼前に富士宮ルートから登り始め、途中で御殿場ルートに移動して、8合目の山小屋に午後4時過ぎに到着した。途中小雨が降り始めたが、夜になると激しい暴風雨へと変わった。台風が富士山を直撃したのだ。高山病で頭痛がする中、山小屋が吹き飛ぶかと思うほどの激しい嵐の下、毛布にくるまって一夜を過ごした。

翌朝目が覚めても嵐は続いていた。「しばらくしてから下山しようか」。そう考えている傍らで、外国人の5人組がおもむろに登頂準備しているのを目にした。香港の大学のボート部の仲間だと言う。アフリカのキリマンジャロやマレーシアのキナバル山に登ったことがあり、日本最高峰の富士山へ挑戦するために来日していた。

「明日、名古屋にSKEのコンサートを見に行く。何が何でも今日登る必要がある」という。僕も迷いを振り切って登頂準備にとりかかった。「こんな嵐の中、富士山を登る人なんていませんよ」。山小屋のスタッフのつぶやきが聞こえてきた。

僕は雨具で完全防備して山頂に向かった。香港の5人組は一度も座らず、短い休憩を挟みながらひたすら登りつづけていた。僕も彼らと行動を共にし、2時間で頂上エリアに到達した。

山頂の神社に入り、大学受験と中学受験を控える長男と四男のためにお守りを買った。最高峰の剣が峰に到達後下山して、東京の家に帰った。

しかし帰ってみると困ったことに気が付いた。せっかく買ったお守りが見つからないのだ。「なくしちゃった、ごめん」などと言うのでは縁起でもない。すぐさまお守りを手に入れるために、再度登頂する計画を立てた。出発は6日後の9月前半とした。

今度は「吉田ルート」を採用した。夜中に車で移動し、5合目で高山病にかからないよう仮眠をとり、朝6時から登頂を始めた。幸い雨はなく、出発して6時間で頂上に到達した。1回目は全く見えなかった最高地点「剣が峰」からの絶景が見えた。火口に沿って一周するお鉢巡りもできた。

神社でお守りを購入後、今度はなくさないよう握りしめて帰り、子どもたち2人に手渡した。苦労のかいがあったのだろう。幸い2人とも志望校に合格できた。

2年の月日が流れた今年度、今度は次男の大学受験と五男の中学受験の年となった。「僕が富士山に登らないで、次男と五男が志望校に入れなかったら、すごく後悔するだろうな」。そう考えた結果、今回も登頂しようと決意した。

再度吉田ルートで登ることにした。7合目付近で山小屋にとまり、夜中の3時すぎに出発。5時ごろ8合目付近でご来光を拝み、10時頃に山頂に着いた。前回と同様に剣が峰を登頂し、お鉢めぐりもできた。帰宅して二男と五男にお守りを手渡して「努力すれば必ず志望校に入れるよ」と告げた。

その日の夜、1通のメールが届いた。「ツイッターを見ていたら富士山登頂の写真を見つけた。おめでとう」。差出人は2年前に一緒に登頂した香港の5人組の1人だった。

連絡先は交換していなかったが、彼はビジネスSNS(交流サイト)のリンクトインで働いており、SNSでの情報収集にたけていたのだろう。2年前に山頂で一緒に撮った写真が添付されていて思わずうれしくなった。

富士山には様々な思いを込めた人々が集まる。我が家は2年後に3男の大学受験を迎える。子どもたちには「みんなでお礼参りをしようよ」と呼びかけている。次は子供たちと一緒に富士山を登ることになるかもしれない。

 

※本コラムは、日経編集部の編集を終えた後、優先順位の高いコラムと差し替えたため、掲載できなかったものです。「おまけ」として知見録に掲載することにしました。

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