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「説得のレバー」を引いて相手の琴線に触れる

投稿日:2017/03/04更新日:2019/04/09

『グロービスMBAクリティカル・シンキング コミュニケーション編』から「説得のレバーを押さえる」を紹介します。

人を説得する際、何が相手の琴線に触れるポイントなのかは、相手によっても変わります。また、同じ人間であってもシチュエーション(個人なのか組織の代表者なのか、緊急度の高い場合と低い場合など)によって変化します。それを正しく見極めることが説得の効率を大きく左右します。特に昨今はグローバル化が進んでおり、多様な文化の人々と接する機会が増えています。そうした場面では、必ずしも自分の常識や過去の経験が通用するわけではありません。これまで以上に相手の琴線を正しく把握し、そこに働きかけることが求められるのです。ひょっとしたら、それは自分がいままで経験したことのない新しい価値観という可能性すらあります。また、世界共通の傾向として、相手の感情にまずは配慮するというやり方は効果的です。こうしたセオリーは忘れないようにしたいものです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

◇ ◇ ◇

説得のレバーを押さえる

説得するためには、相手の感情に配慮し、納得のいくような論理性を話に持たせ、互いの利害を十分理解しておくことが必要になる。つまり、「感情」「規範(大義・価値観)」「利得(利害)」という要素を押さえておく必要があるのだ。これらの要素を「説得のレバー」と呼ぶことにする。

●感情
一般的に使われている「感情」という言葉の意味と同じである。根源的なものとしては、喜び、怒り、悲しみ、恐怖などがある。より高次な感情としては、嫉妬、自尊などがある。

●規範
「△△たるもの、○○すべきだ」「□□することが、日本のためになる」といった、単なる利害関係を超えた価値観や美意識である。

●利得
金銭的な利得に加え、昇進や知名度アップといった、最終的には金銭に換算できる損得を指す。利害と言い換えることもできる。交渉では、この見極めが特に重要となる。

感情、規範、利得という3つの説得のレバーは、どれも同じような意味を持つわけではない。説得のそれぞれのフェーズにおいて、重点を置くべきレバーがある。ます、説得のどのフェーズにおいてどのレバーが重要となるのかについて見てから、それぞれの概要を見ていこう。

説得レバーの位置付け

それぞれの説得レバーは、コミュニケーションの各フェーズにおいて重要性が異なっている。感情に配慮した説得が、相手を議論のテーブルに着かせることを主目的とするのに対し、規範や利得による説得は、合理的にコミュニケーションを行うことで、相手に納得してもらうことを主目的とする。

(1) 感情に配慮する
まず、相手の感情に配慮して、説得のための土台をつくる。これは説得の初期段階に非常に重要な役割を果たす(なお、感情そのものに働きかける説得の仕方もあるが、これについては別途議論する)。

いくら「べき」論を論じても、目の前においしい話があると持ちかけても、相手が気分を害していたり、話を聞く気になっていなければ、何も始まらない。そこで説得の初期段階では、相手の感情に配虚し、「話を聞こう」という気にさせることが重要である。もちろん、説得のプロセスを通して相手の感情がどのように変化しているかを確認することも必要だが、まずは基本として、話し合いのテーブルに着いてもらうために相手の感情を害さないようにすることが必要である。

たとえば、退職を考えている社員を翻意させようとする時、いきなり「いくら欲しいんだ」と利得で説得しようとしたり、「懸命に働いているほかの社員を見捨てて辞めるのか」と規範に訴えたりすれば、その社員は話し合いを行う気持ちにすらならないだろう。「結局、自分のことは考えてくれていないんだな」と気分を害しかねないからだ。まずは、退職しようと考えるに至った経緯を親身になって聞き、相手の感情に配慮したうえで、そこから解決策を共に探ろうとする姿勢を示すことが重要だ。

(2) 合理的なレバーを探る
本格的に説得や交渉のプロセスが動き出すと、今度は、規範や利得といった合理的な要素が、説得の重要なレバーとなる。順に見ていこう。

人は何かを決断する際、自分なりに決断の理由付けを無意識のうちに求めている。そして、その理由付けのもとになるのは、その人が従来から持っている規範、つまり価値観や美意識であることが多い。特に説得の最終段階で相手が躊躇しているような時には、相手の気分を良くしたり得られる利益を強調したりするより、決断のための明確な理由付けを示すほうが有効な場合が多い。

退職しようとする社員の例でいえば、いつまでも社員の心の内を聞いていても話が進むわけではない。仮に、年俸の少なさが原因になっていることがわかったとしても、社員の要求金額に応えることができなければ、いくら話し合っても平行線をたどるだけだ。このような時は、「ほかの社員はあまり高くない給料でも必死に働いている。もう少しの我慢だと思って一緒に働かないか」と、価値観(「自分だけわがままを言うのはみっともない」「利己的な人間と見られたくはない」)に即した説得を行うことで、合意に至る可能性が高まる。

もちろん、利得も説得の有効なレバーになる。人によっては規範、すなわち「べき論」にはまったく動じないが、金銭的・経済的な効用に対しては敏感に反応することもある。特に、組織対組織の交渉では、具体的な利得が最大の関心事項となることが少なくない。

なお、合理的な説得のレバーである規範と利得は、必ずしも順序立てて用いなくてもよい。また、図に示したように、必ずしも180度対立する概念でもない。相手の関心や立場に応じて、高い次元で適切に使い分けていくことが望ましい。

(本項担当執筆者:グロービス出版局長 嶋田毅)
 

『グロービスMBAクリティカル・シンキング コミュニケーション編』
グロービス経営大学院  (著)
2800円(税込3024円)

 

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