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【日経コラム】世界会議で発言、世論左右(ダボス会議報告3)

投稿日:2017/02/15更新日:2019/04/09

世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)には多様なステークホルダーが参集する。政治家、経済人、国際機関、中央銀行、学者、NPO法人、宗教家、科学者、シンクタンク、ときには俳優――。集うメディアの数も非常に多い。各セッションはほぼ全て生放送で配信され、アーカイブに残る。

ダボス会議で登壇することは、自分たちの意見を広く世界に発信する絶好の機会となる。安倍晋三首相は2014年に日本の首相として初めて基調講演した。アベノミクスの成果や岩盤規制の緩和を「ドリルの歯となって推進する」という強いメッセージは、日本経済の復活と改革の意思を世界に印象づけることとなった。

「グローバリゼーションの旗手になる」。今年のダボス会議の基調講演では、習近平氏が中国の国家主席として初めて登壇し「貿易戦争がどの国の利益にもならない」と訴えていた。トランプ米大統領の誕生やBrexit(英国の欧州連合からの離脱)など、欧米で内向き志向が強まっている絶好のタイミングをつかみ、スポットライトを完全に独り占めした格好だった。

英国のメイ首相、米国のバイデン副大統領(当時)なども登壇していた。政治家のリーダー以外は、原則パネル形式の分科会セッションへの登壇となる。発言すれば多くの人に聞かれグローバルに意見が駆け巡るが、発言しなければ誰にも聞かれずに存在しないも同然となる。このため参加者は登壇機会を得ようと腐心する。

地政学や外交のセッションでは、国の利害に沿った発言が多くなる。「東アジアの安全保障」セッションでは、シンガポールやインドネシアの大臣に混ざり韓国の学者と日本のジャーナリストの船橋洋一さんが登壇した。僕は一聴衆として参加した。

韓国の学者が歴史問題に言及していたため、僕も質疑応答の時間に手を挙げて発言機会を獲得した。「あなたは日韓の間に歴史問題が横たわると指摘されたが、すでに慰安婦問題については15年末に両国で『最終的かつ不可逆的に解決した』と合意したはずだ。だが、韓国では釜山の日本総領事館の前に従軍慰安婦像が設置され、同問題が蒸し返されている。なぜもっと未来志向の関係が日韓で持てないのか」

質問の形式で主張をコンパクトにまとめた英語の発言は全世界に配信された。彼の答えは納得できるものでなく、僕が首を横に振りながら同意しないとの意思を示した映像も流れた。

重要なことは、こういう場での発言が世論形成を左右するということだ。自らが登壇する機会がなかったとしても、会場から手を挙げて発言することで、少しでも多くの人に新たな視点を提供することができるのだ。

一方では、Brexit決定やトランプ大統領の誕生は、ダボス会議の影響を受けない人々が数多く存在することを如実に示している。ダボス会議の議論と選挙の結果が乖離(かいり)し始めた。社会の断絶が起こっているのだ。

だからこそ、既存メディアではない、ソーシャルメディアが重要となる。僕は会議の様子を知ってもらおうと、画像付きで次々とツイートした。ダボス会議のウェブサイトでは、発信力ランキングを刻一刻と表示していた。僕は日本語だけの発信だったにもかかわらずビジネスリーダーの分野で常にトップ5に入っていた。

日本語だけでは、到達する人々が限られている。そこで、ビジネス向け交流サイトのリンクトインや自分のブログの投稿を英語で執筆して、世界中に発信している。世界の人々にどれだけ到達し影響力を行使できるかが、グローバルリーダーの要件になっていくだろう。

ダボス会議の場で発言し、メディアや動画に登場し、ソーシャルメディアなどに英語で発信する。その地道な努力が、世界のオピニオンリーダーになる方法論の1つなのであろう。

※この記事は日経産業新聞で2017年2月10日に掲載されたものです。
日本経済新聞社の許諾の元、転載しています。

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