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リーダーシップ・パイプライン: 組織を無能な上司で埋めないGE流リーダー育成

投稿日:2015/12/19更新日:2019/04/09

『グロービスMBAリーダーシップ』の第3章から「リーダーシップ・パイプライン」を紹介します。

組織に関する有名な法則に「人は無能になるまで出世する」の言葉でも知られるピーターの法則があります。これは、人は出世したとしても、それまでのやり方が通用しなくなる段階がいつかやってきて、どこかで「無能な上司」になってしまうというものです。グローバル競争が激化する昨今、これでは負けてしまいます。こうした落とし穴を避けるには、昇進するにしたがって、リーダーとしての能力開発を進め、それまでのやり方やメンタリティを変えるしかありません。さらに言えば、これを属人的努力に頼るのではなく、組織として推進する必要があります。これがリーダーシップ・パイプラインの考え方です。特に、ある職能のチャンピオンが出世しがちな日本の企業においては参考になる考え方と言えるでしょう。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

リーダーシップ・パイプライン

リーダーシップ開発を進めるうえでは、育成に必要なチャレンジを、いかにして脱線することなく乗り越えていくかが課題になる。その解決のヒントになるのが、リーダーシップ・パイプライン・モデルだ(図表)。これは、係長、課長、部長、事業部長、事業統括役員、経営責任者へと、段階を経てリーダーとして成長していくなかで、通過する転換点とそこで直面する問題を明らかにし、転換点のハードルを越えるための支援(コーチング等)を行おうとするものである。

ポイントは、各転換点において、スキル(新しい責務をまっとうするために必要な能力)、業務時間配分(どのように働くかを規定する新しい時間枠)、職務意識(重要性を認め、注力すべきだと信じる事柄)の3つについて、前職位での古いやり方を捨て、新職位で求められる要件を満たしていくように促すことにある。

たとえば、部長から事業部長へとステップアップする転換点においては、さまざまな職務機能を理解しているだけでなく、それらを統合し、長期的・安定的に利益を出すことを考えなければならない。これは、それまで1つの機能分野だけで仕事をしてきた人にとっては、非常に大きなチャレンジになる。機能の壁を越えた問題に敏感にならなければならないし、慣れ親しんだ部門以外のさまざまなタイプの人々に対し、明確かつ効果的にコミュニケートすることも必要になる。

またトップ・オブ・トップの経営責任者に至る最終転換点では、職務意識において大きな変化が求められる。全社のリーダーとして、長期的な思考や洞察力が必要になると同時に、四半期ごとに業績を把握し改善していく仕組みを開発しなければならないし、自らの強い意志で経営する一方で、取締役会の助言にも耳を傾けなければならない。何より、こうしたトレードオフに意義を見出すことを学ばなければならないのである。

このモデルのねらいは、管理職全体の育成の目詰まりを解消し、より多くのリーダーが職位の階段を上って成長していけるようにすること、そして、少数のスーパーリーダーに依存することなく、組織全体に十分な数のリーダーがいるようにすることにある。このフレームワークは、リーダーシップ・エンジンと同じくGEで重用されているほか、シティコープやマリオット・インターナショナルなど、人材育成の面で高く評価されている企業でも活用されている。

たとえば、マリオットはリーダーシップ開発を自社の最重要課題に位置づけているが、その土台となっているリーダーシップ能力開発プロセスは、各転換点の候補者の状況を評価し、「次の段階に進む準備ができている」管理職を見つけ出すためのプロセスだ。すべての管理職がパイプラインのフレームワークに沿って、リーダーに求められる能力を身につけることができる。管理職は積極的にコーチングを行い、部下の成長に合わせてフィードバックを行うことが求められていて、新たなチャレンジに挑むだけの力量のある人材には、必ず昇進の機会を与えるようにしている。また、仕事を通じたリーダーシップ開発を支援するために、内外の育成プログラムも用意されている。

さらに、さまざまな情報を一元的に管理する、ウェブベースのシステムをつくったことも見逃せない。ウェブ上で、各人が過去の職務経歴、現在の仕事上の課題、開発ニーズ、キャリアに対する期待などを入力し、上司や同僚がその人のコンピテンシーやマネジメント・スキルについて、コメントを付ける。創造性や発言力など、何かその人の成功要因だったのか、実態を把握する仕組みも整備されており、さまざまな情報を統合し、高い業績を上げている人、あるいは要注意人物を特定している。

こうして集められた情報に基づいて本人面接が綿密に行われ、直近の成果の評価や、スキルと職位のマッチングを判断するだけでなく、上級管理職にとって重要な3つの要素(学習能力、逆境に立ち向かう能力、心の知能指数)が重点的に評価され、昇進のポテンシャルのある人材が発掘されている。

同時に一連のプロセスの中で管理職候補たちには、「どのような行動をとるべきか」が一貫して問われるので、パイプラインの各段階において必要とされる条件について、共通認識が行き渡るという副次的効果もある。

(本項担当執筆者: グロービス経営大学院 竹内秀太郎)

次回は、『新版グロービスMBAリーダーシップ』から「徒弟的アプローチ」を紹介します。

◆グロービス出版

 

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