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ドリコムCEO・内藤裕紀氏 -走るなら""新幹線""の中で走れ

投稿日:2006/09/09更新日:2019/04/09

学生時代に起業し 弱冠27歳でIPOを実現

岡島:内藤さんは京都大学在学中の2001年に、ブログ(日々更新される、日記的なウェブサイト)システムの開発などを手がけるIT企業ドリコムを設立。弱冠27歳にして、IPO(株式公開)を目前にしていらっしゃいます(注:インタビュー時。2006年2月9日に東証マザーズに上場)。企業に就職するのではなく、自ら起業するということは最初から決めていらしたのですか。

内藤:大学に入学した時点から起業を考えていました。僕は子供の頃から「発明家になりたい」と思っていたのですが、高校生の時分に日経新聞を読み始めたのをきっかけにビジネスの世界に興味を持つようになりました。紙上で報道される新製品や新サービスの話はどれも面白く、「新しいものを作り、それを世の中に提供していくことは、僕自身が考える"発明"のイメージに非常に近い」と感じたのです。任天堂のファミコンやソニーのウォークマンのような、世の中にインパクトを与えるイノベーションを自分の手で作り出したいと思いました。
製品の開発者ではなく、起業家を目指したのは、「1人の人間ができることには限界がある」と考えたためです。新製品や新サービスを"発明"する仕組みとしてまず、会社を作る必要があると考えたのです。

岡島:既存の企業に就職して、新規事業開発に携わるというような道筋は考えなかったのですか。

内藤:大企業では、「新規事業の担当になりたい」と言っても、実際に任せてもらえるまでには長い時間がかかりますよね。30歳、40歳になるまで職位が上がるのを待つ…というのは、自分の性分には合わないと思いました。

岡島:そうした考え方をするようになったのには、ネットバブル期に若い経営者が成功を収めた事例を見ていたなど、周辺環境からの影響もありますか。

内藤:僕の場合は、特にそういうことはありませんでした。実はその当時は、ネット業界への関心は薄く、Yahoo! が上場したことすら知らなかったんです。ビットバレーの存在を知ったときには「東京にビットバレーというものがあった」と、既に過去形になっていたし (笑)、初めてウェブを見たのも20歳を過ぎてからでした。

岡島:そのような環境にいながら、インターネット関連業界にビジネスを興そうと思ったのはなぜですか。

内藤:まだまだホワイト・スペース(未開拓の領域)が多い業界だと思えたからです。起業のタイミングが50年前であれば、(ドクター中松氏が開発した)「醤油チュルチュル」とかを作っていたかもしれないし、今であればバイオビジネスに関心を持ったかもしれません。起業のタイミングと、ネット業界の動きが、たまたま合致したということです。

ベンチャーで働く醍醐味は 目標を共有する仲間と出会えること

岡島:ビジネスは最初からうまく行きましたか。学生時代の起業というと資金調達一つを取っても大変ですよね。

内藤:苦戦しました。ドリコムは2001年11月、パソコンの使い方を教える"家庭教師"の事業からスタートしたのですが、翌02年3月の決算期までの売り上げは、ごくわずかで赤字でした。「これは、イケる」と思って始めたのに、全然、イケなかった(笑)。ビジネスモデルが固まったのは、2003年になってからです。

岡島:企業向けにブログシステムを開発して提供し始めたのですよね。

内藤:そうです。米国でブログなるものが人気を集めているらしい、ということを聞き、これは日本でも広がりを見せるな、と直感しました。そこで、ブログサービスを提供したいと考える企業などに向けて、導入の簡易なシステムを開発して販売したのです。リーバイスはゴールドラッシュの時、金鉱を探しに来た人々に向けてジーンズを提供し、大きな成功を収めましたが、僕達はそれと同じように、ブログという金脈に群がる人に向け、ブログシステムというソリューションを用意したわけです。現在は、ブログに特化した広告配信サービスなども行っています。

岡島:起業当初は苦労されたということですが、なぜここまで頑張ってこられたのでしょう。

内藤:僕は経営者に必要な資質というのは3つあると思っていて、それは「楽観主義」「負けず嫌い」「諦めが悪い」ということ。僕は楽観主義で、負けず嫌いで、諦めが悪いので、頑張ってしまったのだと思います(笑)。

岡島:ベンチャー企業で頑張り続ける醍醐味は、どこにあると思われますか。

内藤:岡島さんは「スラムダンク」という漫画をご存じでしょうか。弱小のバスケットボールチームがインターハイに出場するまでを描いた物語なのですが、「インターハイに行くぞ!」と頑張っていると徐々に強い選手が集まってきて、最後は本当に夢を実現してしまうんです。僕はこの漫画を読んだときに、「ベンチャーと同じだな」と思いました。大きな目標を掲げると、そこに共感する人が集まって、1歩1歩目標に近づき、近づきながら目標もさらに大きくなっていく。これを肌で感じられることが、ベンチャーで働く醍醐味だと僕は、思っています。

ベンチャー企業のリスクその大半は「常識のウソ」

岡島:キャリアの選択肢の1つとしてベンチャー企業を考えたとき、「大企業と比べてリスクが高い」と思う人は、まだ多いですよね。

内藤:そうですね。僕は正直、「ベンチャーのリスクって何?」と思っていますが、そのように考える人が多いのは事実だと思います。ただ、Yahoo!が500億円の利益を出して、既存の大企業が巨額の赤字を抱えていたりする現状を見ると、企業価値をその歴史の長さや規模だけで測ることに疑問を感じる部分もあります。

岡島:「24時間、働かなければならない」「給料が下がってしまう」「失敗した時に次の転職が難しい」「即戦力が求められる」など、いわゆる「常識のウソ」も散見されます。

内藤:うちは早く帰る人は早く帰っていますよ(笑)。給料に関しては、人によっては、最初は何割か下がるかもしれませんが、1年間でグッと上がるケースも多い。良い人材が来て、その成果として業績が上がり、給料も業績に比例してグンと上がる。そういうのが、ベンチャー企業だと思います。

岡島:ベンチャー企業には経営資源が不足しているため、即戦力になれるスキルがないと転職できないのではないか、と思っておられる方も多いようなのですが。

内藤:そうですね。「即戦力が求められる」ということについては、こちらが求めている以上のスキルを持っている人は逆に、別なポジションを探したほうが良いのではないかと思います。スキルは足りないけれど、仕事を任され頑張るうちに、従来にはなかった力が付いてくる…というような形のほうが、転職されるご本人にとっても益があるのではないでしょうか。

岡島:「即戦力」より「即戦力化する力」が大切ということですね。

内藤:はい。例えば昨年秋に、御社(注:グロービス・マネジメント・バンク)にご紹介いただいて、当社で採用した社員は、通信関係の大手企業で仕事をしたあと、コンサルティング会社で戦略立案を担当、その後、米国UCバークレーでの留学経験を経て、当社に入社された方ですが、彼は当社では、戦略の実行部分で力を発揮してくれています。新しいことにチャレンジするためには、業界への土地勘など何らかの「糊しろ」はもちろん必要ですが、足りないスキルは走りながら埋めていっていただければ良いと考えています。むしろ大切なのはポテンシャルで、採用時には「この人は、どこまで伸びそうか」ということを予測しながら、面接をさせていただいています。

岡島:ビジネスパーソンとしての成長を求める方にとって、ベンチャー企業は成長機会を得られる良い環境と言えそうですね。

内藤:そう思います。僕はよく、ビジネスパーソンが身を置く環境を「新幹線」に例えて話をするのですが、速く走っている人は誰か?というと、新幹線の中で走っている人なんですよね。もともと猛スピードで走っている新幹線のなかで、さらに走る、ということは、世の中的にみれば最も早いスピードで走っていることになります。ビジネスパーソンとして成長を求めるのであれば、そうした新幹線、すなわち、急成長している舞台で働く、ということも、非常に大切な要件のひとつだと思います。
また、仕事の質、という意味でもベンチャー企業は成長機会を得られる良い環境である、と思います。というのも、ベンチャー企業には何をするにしても"前例"がありません。マニュアルのないなか、無から有を生み出していく必要があります。基本的には、すべての場面において、自分自身で課題設定をして、考えたり学んだりしながら、それを解決していかなければならないわけですから、大企業のなかで与えられた仕事だけをこなしていくのとでは、成長スピードがおのずと変わってくると思うのです。

岡島:ドリコムでは新卒採用もしていますよね。

内藤:ええ。来年4月には30人の採用を予定しています。

岡島:社会人経験のない方にとっての、ベンチャー企業で働く意義は、どのように考えられますか。

内藤:他社のケースは分かりませんが、当社では最初の2年間で僕がこれまで学んできたことを全て教え、3年目からは自身で事業を立ち上げられるところまで育てようと計画しています。

岡島:それは凄いですね。ところで新卒にせよ、中途採用にせよ、ベンチャー企業ならどこでも、これまで話してきたような環境を得られるというわけではないと思いますが、良い企業を選ぶ指標があるとすれば、どのような指標を挙げられますか。

内藤:そうですね。1つは「成長していること」。これがない企業は、ベンチャー企業というよりむしろ、中小企業ですから、先に述べた、新幹線の中で走るような成長機会は望めません。売り上げの数値などを公開していない企業の場合は、どの程度、人材採用に力を入れているかを訊ねてみるといいでしょう。人材を多く必要としているということは事業拡大を進めているという表われですから。
もう1つは、「その人自身が走れる場所があるかということ」。今あるスキルで十分という仕事の場合、走る必要はありませんから、自分自身が成長できる可能性や余地がある仕事か否かを見極めることが大切です。
最後は、「凄いなと思える人が1人でも良いので、社内にいるかということ」。ロールモデルとなる人物が身近にいると、成長の方向性がつかみやすくなります。もし2人いたら、その企業に転職してしまって、まず間違いはないのではないかと思います。
僕は先に出てきたような、ベンチャー企業の「常識のウソ」は、(就職先として)どのベンチャー企業を選ぶか、それは(就職する人自身の)スキルやキャリアの方向性にマッチしたものか、という2点を解決することで、ほとんどが回避できるものと考えています。キャリアを選択する際には、「ベンチャーか大企業か」というような表層的なことに捉われず、もっと中味に踏み込んで考えていくと良いのではないでしょうか。

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