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東京一極集中、なんでやねん!関西が今すべきこと

投稿日:2015/05/18更新日:2021/11/30

“関西の時代” 新たな国づくりに向けて果たすべき役割とは[1]

4178 1 秋山咲恵氏

秋山咲恵氏(以下、敬称略):第1部全体会となる本セッションでは、「"関西の時代" 新たな国づくりに向けて果たすべき役割とは」というお題をいただいた。G1サミットは今年で6年目になるが、今回はG1関西ということで地域会議の位置づけになる。初めてご参加いただいた関西の方も多いし、これまでG1に参加していたメンバーとしてもこうした場で関西の皆さまとご一緒できることを大変新鮮に感じる。従って、せっかく関西の大津に来たわけでもあるし、東京でできるような話をしていては面白くないと思っている。また、関西の皆さまとしても普段行っている議論を超えて、俯瞰した視点から議論ができることを新鮮に感じていただけるのではないかと思う。

壇上は私を含めて全員関西出身だ。ただ、仕事のベースは東京にあるので、東京または中央の視点とともに関西の視点もお持ちというパネリストの方々にご登壇いただいた。また、今日はできる限りインタラクティブに進めたい。最初の60分ほど壇上で議論をさせていただき、そのあとフロアとのQ&Aに移りたい。ご登壇予定の山田知事は少し遅れてお見えになるとのことで、そのあたり、状況に応じて進めたい。

あと、初めての方もいらっしゃると思うのでG1における三つの方針もご案内しておきたい。「批判よりも提案を」、「思想よりも行動を」、そして「一人ひとりがリーダーとしての自覚を持つ」という、三つの方針に沿って本セッションも進めたい。また、メディアポリシーについては原則オープンだ。檀上御二方には、「ツイッターやフェイスブック等々、なんでもつぶやいていただいて結構です」とのご了解をいただいた。

さて、前置きが長くなったが、議論を始めるにあたってモデレーターの私から1点、本セッションの視座というか基本のトーンを提案させていただきたい。私自身も関西出身だからよく分かるが、関西は文化水準が非常に高く、さまざまな歴史を積み重ねてきていて、そして人材にも大変恵まれている。そういう関西が、なぜ、東京一極集中と言われる状況に甘んじているのか。「なんでやねん」と(会場笑)。

そうした現状のままでいいと思っている方はいないと思う。では、そこでどういった変革が必要とされているのか。私たちに何ができるのか。何から始めればいいのか。簡単な答えはなく、いろいろなことを数多くやっていかなければいけないのだと思う。ただ、なかなか変革が起こせない背景として、もしかしたら「自分たちはこれが強みなんだ」といったものにこだわり過ぎているという仮説は成り立たないだろうか。または、もう少し引いて見てみると、自分たちが強みだと思っていたところとは違う部分に本当の強みが隠れていたりするのではないかとも思う。

いずれにせよ、今日はその「なんでやねん」からスタートして、新たな国づくりに向けて関西が果たすべき役割について議論したい。まずはその口火を、一昨日お誕生日を迎えられた西村さんに切っていただきたいと思う(会場拍手)。

8c7b38baba89f326d37fe5e0f2063805 西村康稔氏

西村康稔氏(以下、敬称略):私は兵庫県明石市と淡路島が選挙区になる。古事記には、淡路島は日本で最初にできた島とある。オノゴロ島と言われていて、そういう遺跡もいくつかある。私自身も「初めてできた島から新しい日本を再びつくっていこうじゃないか」と、特区をはじめとしていろいろなことを地元でやってきた。一方、今は内閣府の副大臣を拝命していて、日本経済全体のことも考えていかなければいけない立場だ。そこでTPP交渉や社会保障と税の一体改革といったマクロ経済の分野、そして防災を担当している。先日もそれで広島に滞在したし、明日は富士山噴火を想定した訓練で富士に行く予定だ。余談だが、富士山は過去3000年で100回噴火している。平均で30年に1回噴火しているわけで、「ここ300年は噴火していないけれど、いつ噴火してもおかしくない」というのが専門家の意見になる。

本来、関西にはそうした大きな火山がない。台風がときどき来る以外は、この滋賀県も災害が非常に少ない地域として有名だった。ただ、去年から今年にかけては大雨で土砂崩れも起きている。京都も本来は災害がそれほど多い地域ではないのだけれども、福知山をはじめ水害もだいぶ出ている。そういう関西だけれども、本来はその強みを生かせば東京に負けない点が数多くあると思う。

東京の経済規模は100兆円強で、これは韓国よりも大きくメキシコと同じぐらい。中堅新興国1国ぶんぐらいの規模だけれども、面積は日本の恐らく7~8%に過ぎない。そして人口は日本全体の2割。つまり、人々は狭いところにぎゅっと集積して住んでいる。日本全体では人口減少への対応が非常に大きなチャレンジになる。今は、なんとか1億人を維持できないかということでいろいろと施策を打とうとしている。

やはり、ある程度人が集積していることがイノベーションにもつながる。「文殊の知恵」と言われるように、1人より2人、2人より3人のほうが知恵は出る。また、同じような生き様の3人よりも違う生き方をしてきた3人のほうがいい。男ばかりでなく女性がいたほうがいいし、日本人ばかりでなく外国人がいたほうがいい。そうした多様性のなかで新しい発想が求められる時代だ。しかも今は変化のスピードが大変速い。そうした環境下で日本全体をどう変えていくかという課題に我々は直面している。

これまで、日本企業はたしかに成功してきた。会場の皆さまがいらっしゃるような企業には歴史もあるし、これまでも大きく発展・成長してこられた。ただ、これまでと同じ体験や面子でやっていても新しいものは生まれない。そこで、いかに多様な発想を取り入れて変革を起こしていくか。今は日本全体でそういうことに取り組んでいるわけだけれど、関西は元々そういうことをするのが好きな地域だと思っている。たとえば華僑の方や在日韓国人の方もいて、アジアとの距離が大変近い。私の同級生にもそういう方々がたくさんいて、もともと多様な文化が集まっているからだ。神戸港はかつて世界一の港と言われ、私が小学生の頃は外国の方もたくさん来ていた。

ただ、今はその神戸港も世界で45~50番目に落ちてしまった。これを取り戻すのは大変だが、もともと持っている国際性や多様性を生かして新しいイノベーション起こしていくべきだと思う。この会場近くだとファミコンを出した任天堂さんが有名だけれども、他にもイノベーションを起こしていった企業が関西には多い。初めての缶コーヒーを出したのはUCCだし、サプリメントも武田薬品工業が1950年代に「アリナミン」を出している。そうした新しいものを関西の企業は常に生み出してきた。

しかも今回は関西全体で国家戦略特区になった。これに関しては当初から大変な議論があり、神戸は「神戸だけでやりたい」、大阪は「大阪だけでやりたい」、京都は「京都だけでやりたい」と言っていた。でも、「それはあかんやろ」と。せっかく近くにこれだけ集積があるのだから、力を結集して新しいイノベーションを起こすべきだ。iPS細胞についても京都にあって、そして阪大を中心とした再生医療もあり、神戸には理研があって高橋政代先生が網膜の再生をなさっている。また、兵庫には「スプリング8」という、分子の解析も行えるような施設もある。だからこそ、関西でまとまって一つの特区ということに今回はしている。

ただ、「関西は一つ」と言いたいのだけれど、「関西は一つずつ」とよく言われていて(会場笑)。京都・大阪・神戸はだいたい仲が悪くてうまくいかない。その三つのどこかでG1サミットやろうとすると話がまとまらなくなるから、「まあ、たまには滋賀で」と(会場笑)。…なんて言っては失礼だけれども、ごめんなさい(会場笑)。とにかく越(直美氏:大津市長)さんのリーダーシップもあって、仲川(げん氏:奈良市長)さんにも謙虚な気持ちで(滋賀開催を)受け止めていただいたのだと思う。従って、今日はぜひこの地で関西の良さを改めて見つめ直したい。私としては、新しいものを生み出す力を関西特区に強く期待している。

もちろん、「関西は一つ」といっても切磋琢磨はしなきゃいけない。また、仲間内でまとまるのではなく、外国の方々にもどんどん入ってもらいたい。外国人の方々にもいろいろな形でベンチャーを起こして欲しいし、投資をして欲しい。そのためにワンストップのセンター等もつくることにしている。もともと新しいことを生み出す進取の気風がある地域だから、それを生かし、全国に先駆けて新しいことにチャレンジして欲しい。東京の特区が若干遅れているので…、いろいろな要因があるのでこの場でその点は批判しないが、この機にぜひ関西でいろいろなことをやって欲しいと思う。

特区と言ってもまだメニューが決まっているわけではないから、会場の皆さまからもどんどん新しい提案をしていただきたい。「こういう規制があるからできないんだ」といったお話でもいい。商慣行に関して、「こういうことを変えなきゃいけない」といった提案でもいい。そういったお話をどんどん受け入れていこうという方針で我々はやっている。変化の時代に相応しいスピードと多様性を持って、関西を変えていく大きな原動力になっていただきたいと思う。今日はそういうメンバーが集まっておられるわけで、今日明日でいろいろな提案がなされるといいなと思う(会場拍手)。

F859ccdd35fd2a8185e6336709f7a9f8 前原誠司氏

前原誠司氏(以下、敬称略):私の選挙区は本会場の向こうになるので、帰りはぜひ京都にもお立ち寄りいただけたらと思う。さて、すでに国会議員を21年間やらせていただいている私が、「これからコレをします」と言うのもおかしいので、オンゴーイングな取り組みに関して、「こういう風にしていけば良いのではないか」と思うことを、問題意識とともにお話ししたいと思う。

まず、私は国土交通大臣やらせていただいたので、今回はインフラに焦点を絞って「世界と関西」という観点のお話を少しさせていただきたい。先ほど西村さんから神戸港のお話があった。たしかに20年前の神戸港は世界6~7位の港だったと思う。でも、今は恐らく46位前後にまで落ちている。それには、もちろん阪神・淡路大震災の影響がまったくなかったわけではないと思うけれど、違う要因があると思っている。かつて、国が直轄して整備・管理する重要港湾は126もあった。しかし、126もの港を総花的に国が直轄して良い港ができる筈はない。従って、そこから60の港湾を外し、現在の重要港湾は66となっている。そのうえで、それぞれ特化しようということで、現在は阪神港や京浜港が国際戦略コンテナ港湾として集中的に投資されている。

現在、アジアの港でコンテナ取扱量が最も多い港はシンガポールだ。2位は上海で3位は香港だったか…、上海と香港の順位は逆かもしれないが、それらの港に続いて釜山があり、その次は台湾の高尾になる。台湾の人口は日本の1/5以下だし、韓国の人口も日本の半分以下だけれども、高尾港も釜山港も日本のどの港より取扱量が多い。これは、簡単に言うと総花的な港湾整備をして選択と集中をしてこなかったツケだ。それが日本の港湾の競争力低下につながっていった。

たとえば、拡幅によってパナマ運河を通過できるようになる大きな旅客船やコンテナ船は、日本ではどの港に停泊できるか。126におよぶかつての重要港湾のうち、停泊できる港はゼロ。総花的にやってきて、水深を深くしてこなかった。現在は横浜の南本牧という港でようやく水深18メートルのバースが建設されている。それでも日本で初めてで、とにかく遅れている。いずれにせよ、今後はそうした集中投資で阪神港も釜山や高尾や上海や香港に負けない港にしていく必要がある。これはまさにオンゴーイングの話だけれども、2~3周ほどの周回遅れだから取り戻すのは相当大変だ。やはり西日本のコンテナを神戸や大阪に集めない限り、釜山や上海には勝てない。集配機能を高めないと阪神港の復活はなかなかないと思う。

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で、ご存知の方はおられるかもしれないが、実は阪神港と京浜港に関しては、現在、「役所がやっていてもダメだろう」と、公設民営化ということで民間に任せている。御立(尚資氏:ボストン・コンサルティング・グループ日本代表)さん、柳川(範之氏:東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授)先生、星野(佳路氏:星野リゾート代表[以下、肩書き略])さんといった方々の知恵で、コンセッションという形にした。「民間の知恵を借りて、民間で運営をしよう」と。それで今、大阪港の社長さんは野村證券の方で、神戸港の社長さんは神戸製鋼の方だ。それもまた統合するけれど、とにかく民間視点で経営する形になっている。

これは港の話だけれど、港というインフラに関する遅れを取り戻し、復活させて荷物の取り扱いが増えればそれだけ経済が潤う。もちろんその中身というかコンテンツも大事だが、今後はそうしたインフラ面でも協力体制をしっかりと考える必要がある。先ほど西村さんがおっしゃった戦略特区、あるいはさまざまな分権の取り組みでも、互いに協力していく必要があると思う。私としては、そこで最終的には道州制のような形にして、広域で物事を考えられるような行政にしなければいけないと思う。とかく、先ほどのように、「滋賀だ」「奈良だ」「京都だ」という話になりがちだから、広域の視点で物事を捉える。そのうえで、日本には東京に加えて関西というもう一つの極があるという形にするため、さまざまな取り組みをしていかなければいけないと思う。

→"関西の時代“ 新たな国づくりに向けて果たすべき役割とは[2]はこちら

※開催日:2014年10月18日、19日

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