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「ゼロから1」が「1から10または100」 −世界に挑戦する急成長ベンチャーの作り方(対談)

投稿日:2014/11/21更新日:2019/04/09

高宮慎一氏(以下、敬称略):今日は日本を代表する、急成長中のベンチャー2社から御三方にお越しいただいた。グロービス・キャピタル・パートナーズでも2社に投資をさせていただいているが、ここからはお二方と私、そしてメルカリによる40億円調達を支えた小泉さんもお招きする。まず、事業については両社長からご案内があったので、次は組織面について伺ってみたい。現在はVASILYが社員40名、メルカリが同90名とのお話だった。本当に急成長中だと思うが、これまではどのような感じで組織を進化させてきたのだろうか。ステージ毎に何か違っていたのか、採用で何か気を付けていたことがあれば併せてお伺いしたい。

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金山:現在、社員が20名で、インターンのバイトを合わせるとおよそ40名。その半分ぐらいがエンジニアだ。ファッションのアプリをやっていて、僕もこんな感じだけれど、強みはデザインとテクノロジー。で、ユーザー数100万を突破するまでは、割りと「気合い」だった(会場笑)。僕らは「天皇制」と言っているけれど、「僕!そして皆!」みたいな(会場笑)。もうレポートラインもめちゃくちゃ。ただ、たとえば登録者数500万をこれからグローバルで目指すにあたっては、正直、気合いだけの人材では勝負できなくなっていく。今はそうした成長痛を思い切り感じている。

高宮:今度はミドルを増やす感じだろうか。

金山:間違いなくミドル。経験を持っている人が1番いい。当然、新卒採用も2013年からやっていて、下から育てるということもしている。ただ、人材の成長速度より会社の成長速度のほうが速く、「気合い系人材」が追いついていない。そこで、「あ、これは知ってるよ」という経験に基づいて予防医学のようなものをしていけるような人材を求めている。小泉さんとかがいいなあ、みたいな(会場笑)。

高宮:インターネット系のベンチャーというと、若者や学生インターンが気合いと手弁当でやるようなイメージもある。しかし、2社が足を踏み入れているようなフェーズでは、それ相応のスペックを持つミドルを、一定以上の給料で採用する必要があると。

金山:そう。ベンチャーだから給料が安いというのは良くないと思うし、その風潮を止めたい。ただでさえ人材の流動性が低いので。「給料は半分で来てくれ」とは言いづらいし、そういう人たちは途中で折れちゃうんじゃないかなという気持ちもある。逆に言うと、そうした資金面のディスアドバンテージを今回の調達で少し減らしたい。

山田:まず、当社では先ほどご紹介した3人の役員にエンジニアリング経験があったし、そのほかにも2人、創業メンバーのエンジニアがいる。その2人は今でもエンジニアとして頂点に君臨している。とにかく創業メンバーとしては、つくることに関して天才的な人材を集めた。そこからその友達のデザイナーやプログラマーに人材の枠を広げていった感じだ。去年7月のリリース時点では社員10人強だったと思う。それでリリースしてみて、そのあとすぐ3億ほど調達した。そして、それ以降はできているものをさらに改善するという作業に加えて、マネージャー層、高宮さんが言うところのミドル採用も始めている。ここは相当慎重に頑張って、本当にできる人を採らないといけない。当社としてはそのタイミングで小泉さんのような人に来ていただいた。今50人以上いるCS部門にも元ミクシィのマネージャーに入っていただいたし、経理にも元グリーの人材に入ってもらった。

高宮:プロダクトドリブンなカルチャーを持つメルカリが、ビジネス側やバックオフィス側の人材を採用する際、どのようなカルチャーをつくっていったのだろう。

山田:どうだろう…。僕は今の会社が以前のウノウにすごく近いと思っている。ウノウで働いていたエンジニアが少なくとも5〜6人は今の会社にいるし、あまり違いがよく分からないというか(笑)。

高宮:ウノウ時代から存じあげてはいるけれど、ビジネス側の人間からするとウノウよりメルカリのほうがとっつきやすくも感じる。小泉さんはその辺、どうお感じだろう。

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小泉文明氏

小泉文明氏(以下、敬称略):僕が入ったのは昨年12月末で、社員が20人ほどいた時期だった。その頃も含めて、ウノウと同様、基本的には明確なプロダクトがあり、それに紐付いた組織やカルチャーが根付いていると感じる。その意味では今のメルカリもミクシィと同じく、強烈な、愛されるサービスがある。で、それに社員が惚れ込んでいるかどうかが1つ、大きなトリガーだ。まずはそれに集まるメンバーをきっちり採っていくという感じになる。だから、カルチャーとして愛されるサービスがあるかどうかが極めて重要だと思う。社員としても多くの人に使われているという前提があれば、それだけで1つの柱ができるというか、かなりのベースになる。メルカリはそれが明確にある会社だ。

高宮:iQONはクリエイティブなカルチャーをつくっているのかなと感じていた。それとも、そういうサービスの会社だからあえて堅くいっている感じだろうか。

金山:その意味では動物園のほうが近い。クラシックのように指揮者に従って決められた演奏をするというより、フリージャズあるいは後期のマイルス・デイビス。そこで生まれるインプロヴィゼーションから突き抜けるものがあればいいと思っていた。ただし、それもなかなか難しい。マイルスのグループはマイルス自身がちゃんと演奏するからすごいセッションになる。でも、僕自身のリソースがプロダクトから経営に入ってしまうと、そうした突き抜けるようなことが起きにくくなっているという感覚がある。だからきちんと計算して、譜面を書いて渡さなければいけないフェーズになったのだと思う。まさに「ゼロから1」が終わり、「1から100」をやるという転換期にいると感じている。

小泉:僕がメルカリに入ったタイミングも、「ゼロから1」が「1から10または100」に変わる転換点だったと思う。入社した翌1月に創業メンバーである役員3人に僕を加えた4人で、かなり深い議論を長時間、何回か行った。そのなかでもう1度、ミッションやビジョンやバリューを再定義している。それがなぜ大事だったのか。当時のミッションは、僕からすると少しファジー過ぎると感じていた。バリューについても同じ。皆、なんとなく価値基準として分かってはいるけれど、ふわっとしている部分があった。「そこをもう1度言語化しよう」と。その頃からすでに海外を意識していたこともあり、それを英語ベースで考えていった。短いワーディングで、多少誤解はあるかもしれないけれども、それを恐れずに作るという作業から入っていった。1月はそれを徹底的に行って、翌2月上旬に全社合宿を初めて行い、それと合わせて制度を変えていった。「1から10または100」をつくるためのベースをつくったタイミングだったと思う。

高宮:2社ともベンチャーといえども外部の株主から10億円以上を調達したわけで、意外とちゃんとした会社で(会場笑)、ちゃんと組織づくりをしているという。

小泉:壇上の人たちは皆、過去になんだかんだで失敗している。コーポレートのメンバーにも、たとえばグリーやミクシィや楽天といった大手ネット企業のマネジメント層にいたメンバーが多い。そこでよく聞くのが、「いやあ、当時は忙しいから採り過ぎちゃったよね」という言葉だ。成長の過程でミッションが響いていない人を採ってしまうといった失敗を数多くしてきている。だから、「もっといい人がいるから頑張って耐えよう」という話をしながら、今も採用活動を行っている。そんなふうにして、本当にA級の人材をシビアに見極めようとしている点は、ある意味で強みじゃないかと思う。

高宮:今度はどんな人材を採用したいとお考えだろう。

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山田 進太郎氏

山田:うちの場合、広報や人事が欲しいと言い続けながらもずっと採用できていない。そのパートであれば、もしかしたら、その部分を成功に導いてくれるような人がいると思う。ただ、プロダクトでは天才性も求めたい。我々はビジネスでは物流や決済といった、わりとオールドエコノミーのような業界とも付き合っていかなければいけないこともある。従って、そこで風穴を空けるぐらいの交渉力も必要かなと思ったりする。結局、パートによると思う。

金山:何かを目指している人がいい。この国では死ぬほうがムズい。日本がすごいのは、死のうと思っても死ねないこと。だから辛い道をわざわざ歩まなくてもいい。気候的にも凍え死ぬことはないし、ごはんもなんとか食べられる。そうなると、なんでわざわざベンチャーで人と変わったことにトライするのかという話になる。だから、何かのゴールから逆算した過程で、僕らの会社が「自分の人生に不可欠なパーツだ」と分かっているような人と一緒に働きたい。ぼうっと毎日、電車に揺られて出勤して、会議に10本出てなんていうのは…、ヤフーには今もいっぱいいるけれど(会場笑)。

小泉:投資銀行出身の僕も、ある意味、ワーカーホリックで働いていた。でも、会社には作品というか芸術性があるものだと思っていて、やっぱり最後は自分の手で作りたいと思った。僕はミクシィが数人で事業をしていた頃から関わっていた。それが最後には500〜600人になるところまで、ずっと外から、あるいは内側から関わってきた。そこで、「やっぱり最後は自分の手で育てたい」という思いがすごく強くなった。メルカリは、エンジニア以外のメンバーもそういう面が強いと思う。大企業から来たような人たちは30代が多いけれど、「理想郷をもう1度つくろうぜ」みたいな感じで働いている。「理想の組織やプロダクトを皆でつくろうよ」と。そんな熱い関係性があると思う。

高宮:ちなみに、新卒を中心にカルチャーをつくる考え方と、中途を採用して短期的に結果を出すという考え方の軸もあると思う。その辺はどうだろう。

金山:新卒採用は2013年から行っている。で、「第2新卒はいらないかな」と。気合いも経験も少し足りない(会場笑)。そのゾーン以外で、“気合い層”の若手とマネジメント層を採用したい。昔、レアルマドリードが採用していた「ジダネス&パボネス」という戦術と同じ。攻撃に関してはジダンのようなスター選手を外から獲ってきて、守りはパボンという地味な選手を下部組織から引き上げる。若手とベテランの融合で、真ん中はあまり採らない。真ん中は、意外と「帯に短し襷に長し」だ。ただ、年齢は関係ない。「エクストリームな経験を積んで、もう見えきっちゃっている人」と、「エクストリームに働ける気合いとアトラクションがある人」という感じになる。

高宮:そこで、新卒でも中途でも経営層へ続くトラックは開かれていると。

金山:もちろん。たとえば現在のネイティブアド事業では大学3年生が責任者を務めて、その部下が電通に5年在籍していた人だ。一般論というか確率論で言えば年齢で分かれるけれど、基本的には能力やスキルが重要。ただ、実力主義じゃなく成果主義。実力があってもそれが表質化しなければ成果にはならないから、評価はできない。

山田:今は新卒が1人いる。彼は元々インターンだ。大学院は辞めるつもりでネット企業からいくつか内定をもらっていたという。そこで、「うちのほうがいいよ」なんていう感じで。元々エンジニアだったけれども今はプロデューサー。本当に地頭が良くてなんでもできる。ウノウのときもそうだったけれど、そういう本当に飛び抜けた人たちも毎年1〜2人採用していた。それはもう勝手に来ていたという感じだ。学生でも目ざとい人は、たとえば交流会なんかに紛れ込んで、「インターンさせてください」なんて言ってくる。それで良かったら採る形だったから、新卒一括採用みたいなことはしていない。

高宮:新卒の初期採用というより、中途の延長線上で一本釣りをする感じだろうか。

山田:今は本当にそう。やっぱりプロダクトをつくっているし、相当な経験がないと付いてくるのも難しいので。最終的にはグーグルやフェイスブックのようにばんばん希望者が来て、そのなかから、中途も新卒も関係なく選ぶような形にしたい。

高宮:では、中途採用ではどの辺を見ているのだろう。

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金山 裕樹氏

金山:秘伝のタレを披露したい。「こういう人しか採らない」というのがある。逆に、「この質問にこう答えたら絶対に採らない」というパターン。本を読まない人。人間は外部から何かを摂取しないと成長しない。食べ物と栄養がまさにそれだ。食べなかったら死ぬ。知識も同じ。僕らは労働者じゃない。知的労働者であって、脳みそで勝負している。だから、脳に新しい情報を積極的に摂らないような人は、ちょっと採用できない。まあ、本以外のセミナーや交流会といった手段でもいいとは思うけれど、僕が一番エッセンシャルだと思うのは本だし、読書の習慣がない人とは一緒に働きたくない。

山田:「スーパー天才」のような人はいる。たとえば言語障害のようなところがあって、文字が読めないとか。そういう人も結構いると思うけれども。

金山:もちろん、それは別になる。

山田:そう。それほどすごい才能ならいいのかなと思う。僕としては、「圧倒的にいいよね」みたいな人材に関しては、皆の意見も比較的合致する感覚がある。だから、皆が「いいよね」と言わなければ採らない形になるのだけれども。結局、3〜4人で面接するから、「ここはいいけれど、ここはダメだよね」という評価を皆が下したら、「じゃあ止めておこう」と。逆に、「この人は圧倒的にいいね。あえて言うならこの辺が」という人は、それが逆に強みになったりもするから、そういう人を採るイメージだ。

高宮:全員一致で採用すると単一民族化しやすい気もするが。

小泉:たとえばUSトップの石塚亮はほぼアメリカで育ったから日本人の見た目をしているけれど、ほぼアメリカ人。それに、進太郎さんと僕も性格がまったく違う。だから、かなり違う側面で見ていると思う。ただ、話してみると、「あ、いいよね」と感じる部分がほぼ一緒になる。それは経営経験のなかで、パフォーマンスが高い人の特徴というのを暗黙知的に捉えている部分があるからだろうと思う。たとえば僕はコーポレート系の面接を数多く担当するけれども、サービスに関する質問をかなりする。メルカリのサービスについても世の中に出回っている他のサービスについても、それらをどう捉えているかが知りたい。また、インターネットが将来どのようになるかといったこともよく聞く。そこがないと、プロダクト側と一緒にネットサービスをつくる過程で圧倒的な不利になる。だからそこはすごく見るし、大切なのは、「サービスやインターネットを愛している」といったベースのうえで、どのように多様性を担保するかだと思う。その辺は会社のステージに伴って広がる部分があるだろう。僕らに関して言えば、USのメンバーが日本に来たり、日本のメンバーがUSに行ったり、シャッフルできるようにしている。そのなかで変化が生まれたらいいなと思う。

金山:僕らはオペレーションでなくイノベーションで勝負しているし、イノベーションにはダイバーシティが必要だと皆が思っているので、むしろ全会一致してでも異質さを採り入れようという前提がある。だから単一民族国家にもならないと思う。子どもがいて働いている人もいるし、僕もこう見えても子どもが2人いるし、半分は女性だし、上は45歳から下は18歳までいる。国籍も、アメリカ人、フィリピン人、韓国人、北朝鮮人、フランス人、モロッコ人がいて、ムスリムも受け入れている。「これをやれ」と言って単一の作業をがんがん進めるより、多様性のなかで生まれる輝きを重視している。まあ、マネジメントはしづらいけれど。だから、マネジメントしない(会場笑)。自由な環境をつくったほうがいい。ただ、それでうまくいかなくて今は悩んでいる、みたいな(笑)。

高宮:「グローバル化に向けてこういう人材を選んでいる」というのはあるだろうか。

金山:やっぱり英語が喋れなければ厳しいと思う。そもそも、テクノロジー企業では英語が分からないとダメ。英語で書かれた情報のほうが圧倒的に多いから。新しい技術やマーケティングにトライしようとしても、日本語のブログには何も書かれていない。そこで英語が分からないと入ってくる情報量もまったく変わる。その意味で英語はマスト。うちのエンジニアも英語に関しては全員、しゃべれないけれども読めるレベルだ。

高宮:英語と言っても文法的に正しくきれいに喋る必要はないとも思う。以前、グーグルのお偉いさんが来ていた場で、金山さんが英語でプレゼンしているのを見たことがある。英語自体はめちゃくちゃだったけれど、気合いで言いたいことを伝えていた。物怖じしないコミュニケーション能力も必要だと思う。

山田:英語は悩みどころだ。うちにも苦手な人はいる。ただ、将来的なことを考えると少なくとも文章というか、たとえば社内の技術情報などは英語化したほうがいいと思っている。実は僕も楽天にいた時期が一瞬あるので、楽天の人から話をいろいろ聞いたりもするけれど、どうも英語化は避けようがないなと感じる。それで、「英語の先生を雇うか」という話を今日もちょうどしていた。

高宮:グローバル企業にもグローバルな部分とドメスティックな部分がある。国内事業であれば日本語でいいとは思うけれど。

山田:「開発をどこまで英語化するか」は、直近のちょっとした悩みだ。現状では、たとえばシリコンバレーのエンジニアを雇ってもコミュニケーションコストが高くついてしまう。ただ、先日アメリカで楽天の安武(弘晃氏:取締役常務執行役員)さんという、15年前に僕の上司だった人と久しぶりに会って話をした。で、そこで印象的だったのは、楽天が、たとえばシアトルにオフィスをつくり、他社のチームを丸ごと引き抜いたりしている点だ。そういうダイナミズムが今の僕らにはない。エンジニアリングがすべて日本にあって、日本語でやっているから。そこら辺をどうすべきかが悩みどころだ。

高宮:プロダクトにもよると思う。フェイスブックのように大きなスタートアップは、“oneproductfitsall”的発想をする。なるべく効率的に、1つのプロダクトでグローバルに広く、獲れるところだけ獲りにいく。ローカルなカスタマイズが必要な国は後回しにする。その点、メルカリやiQONはどのようにプロダクトを広げていこうとお考えだろう。

金山:もちろん理想としては1つのプロダクトですべてにヒットさせたい。ただ、Yahoo!JAPANがべらぼうに成功しているのは日本の文化に合わせているから。結局、インターネットのサイトは道具であって、それなら日本人にとって使いやすいボタンの形もあると思う。だから、伝えたい価値観とコアな技術は変えず、細かい部分は現地に落とし込むほうが最終的にはいいと思う。フェイスブックも今は「ええやん!」になっているし。そこはコストがかかるけれど、逆にコストをかけないと勝てないような気もする。

山田:うちもアメリカ版は少し変えている。たとえばシッピングラベルという配送ラベルのようなものを提供して、それを印刷して貼ってポストに入れておけばいいという形だ。日本であれば近くのコンビニからメール便等で送れば安く簡単に送れてしまうけれど、その辺の配送に対する感覚も日米ではまったく違う。従って、そうした機能面では結構分けている部分がある。また、グラフィックについてもコアな部分は一応共通しているけれど、感じ方はまったく違うから分けている部分もある。どこまで共通にして、どこまで枝葉で分けるかという話だと思う。正直、まだ正解は見つけられていないけれど。

小泉:僕らは8月にUIを変更したのだけれど、グローバルなUIを優先し、日本がそれに合わせた。完全にグローバルにしてダサいアプリだと思われないようなUIをつくった。日本人からするとシンプル過ぎて説明が足りないかもしれないけど、「一度、それで日本側の反応を見よう」と。で、実際にやってみると日本でも普通に受け入れられ、ハレーションも起きなかった。そもそも日本のユーザーもツイッターやフェイスブックといった海外アプリをかなり見ているし、ベースはある程度一緒にしても問題ないと思う。

金山:たしかに、よく考えると僕らは日常生活で日本製のアプリを使っていない(会場笑)。OSもメールソフトもSNSもブラウザもアメリカ製。ファッションについては日本製のiQONがあるけれど。あと、フリマも(会場笑)。日本製アプリといえばLINEぐらい。

小泉:逆に言えばメルカリの登録者数が1000万〜2000万になってレイトマジョリティが入ってきたとき、本当に今のままで受けるのかと言えば、ひょっとしたら違うのかもしれない。ただ、今はそれもまったく感じない状態でグローバル化できていると思う。

山田:たとえば「Instagram」も日本語なしで皆使っていたりするから、意外と大丈夫なんじゃないかなという気もする。

金山:スマホネイティブの人たちは大丈夫だと思う。

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高宮 慎一

高宮:少し話が変わるけれど、会場には大企業に務めている方やMBAに通っている方が多い。でも、今回のようなセミナーにいらっしゃったということは、ベンチャーに興味があるのだと思う。で、そういう人たちとしては、「ベンチャーに入ると給料が下がっちゃうんじゃないか?」「ある程度安定したタイミングで入るとアップサイドがないんじゃないか?」と、気になる点も多いと思う。大企業でいい感じにキャリアを積んでいらっしゃる方々に、ベンチャーとしてはどんなアピールがあるだろう。

山田:たとえば大企業から楽天やヤフーといったネット企業に転職して、そのあとうちに来るという人は多い。で、皆、英語ができてMBAなどの資格も持っていたりする。

小泉:僕らは給料を著しく下げていない。だから1000万以上もいるし、それでお金がなくなったら高宮さんのところからまたもらえばいいかなと(会場笑)。優秀な人は成長期のベンチャーにとって超重要なので、本当に選りすぐりをしているし、そういう人たちには2人分でも3人分でも、突破できる分は払う。

山田:むしろ中長期的に考えると大企業にいるよりずっと高い報酬になる気がする。

小泉:そう。それに加えて僕らはボーナスをすべてストックオプションにして、「アップサイドはそこで取ってください」という設計にしている。報酬面に関する不安感は絶対に与えないようにしている。ただ、優秀な人は報酬面に加え、自分がどのようにコミットできる環境かということも大事にする。だから、その人が入ってきたらどう変わるのかという夢を、どこまで一緒に描けるかという視点でいつも口説いている。僕の下のマネージャーは僕より年上ばかり。30代後半の方々が多い。お子さんが2人いる方もいるし、元官僚の方もいる。彼らは彼らで大企業などの決められた枠から出てくるとき、何かしらの期待感と不安感の両方を持っている。だから、僕もある意味では大企業出身なので、その辺は一緒に、じっくり話していくようにしている。

山田:ベンチャーでキャリアを積んだほうがアップサイドは大きい。たとえばグリーやDeNAといった一部上場しているネット企業の執行役員は2000万以上貰っていると思う。で、そうしたベンチャーからの転職となれば、僕らとしてもそれだけ必要とする人材ということだから、それなりの待遇でオファーする。だから自分に才能があって仕事ができると思うなら、大企業から飛び出したほうが圧倒的に良いキャリアを積むことができるし、面白い仕事もできるんじゃないかと思う。

金山:本当にそう思う。普通の人々より高い教育コストをかけられている皆さんが大企業にいるのは、社会的損失だ(会場笑)。皆さんの仕事で、どれぐらい新しいものをつくることができるだろう。つくっている方もいらっしゃると思うけれど、僕らのほうが世の中へのインパクトは大きいと思う。だから、もう制度をつくったほうがいいんじゃないかなと。「10%ぐらいはベンチャーに入る」みたいな(会場笑)。もったいない。能力も意識も高いのに大企業でスポイルされているようにしか見えない。1つの意思決定をするのに稟議を5つも通したりして。僕らの環境ならやりたい人はすぐできる。

小泉:僕もミクシィにいたときは26歳で役員になった。それでマネジメントができたことは、同世代のなかで圧倒的アドバンテージだと思う。退任したときは32歳。32歳なのに役員を6年間務め、600人の社員をマネジメントしていたという経験は、若いときに大企業を飛び出したからこそできた。そのあと1年半ほどニートをしていたけれど(笑)、それでもいろいろなところから声を掛けていただいた。

高宮:日本でも社会のベンチャーに対する見方も変わってきたのかなと感じる。

山田:そう思う。今当社に来る人は、大企業からの転職者もいるけれど、大企業からネットベンチャーに移り、それが数十人〜数百人あるいは数千人になるところを見て、そこからまた当社にやってきたという人が多い。昔はそんな人材いなかった。

高宮:一昔前のドロップアウト感みたいなものが、今はむしろ「優秀な人から来ている」というイメージになってきた。

山田:そう。ウノウの頃は大企業から直接来る人も、大企業からネットベンチャー経由で我々のところに来る人も少なかった。今は違う。楽天やグリーに感謝しなきゃいけない(笑)。最近は「なんか、めちゃめちゃいい人材がいるよね」という感じだ。

高宮:ベンチャー側の層が厚くなって受け皿も増えたから、仮にベンチャー1社がうまくいかなくても、「ベンチャー経験あり」ということで別のベンチャーが雇ってくれる。グリーや楽天のような大企業もベンチャー経験者を欲しがっているし。

金山:それに、僕らのようなスタートアップもリスクじゃないと思う。社員が20人ということは、会社がやばくなっても1人頑張れば大逆転できるということ。むしろヤフーにいたほうが超リスク(会場笑)。僕は結構成績が良かったのだけれど、個人目標で150%を達成しても全社で80%だからボーナスは下がると(会場笑)。「なんだコレ?」みたいな(笑)。だから本当に成果を出せる人にとっては絶対にリスクじゃない。

小泉:投資銀行にいた時期の最後に、僕は10年間の「レール」を敷かれたことがある。傍から見ると出世コースだ。10年間で10兆円といったプロジェクトだから、投資銀行にいれば手数料もむちゃくちゃ入るし、10年間はキャリアが固定される。「レールに乗った」という感じだった。ただ、僕はその瞬間、「ああ、今後10年間の人生が決まっちゃったな」と思って嫌になっちゃった。逆に、「常に自分で意思決定をしながらレールを敷いていきたい」と思って辞めたというのもある。そこは感覚の違いかもしれないけれど、とにかく未来を創る感覚が楽しいし、そっちのほうがリスクも低いと感じる。結局、自分を1番正しく評価しているのは自分だから、能力が高い人は絶対に自分で決定権を持つポジションにい続けるべきだと思う。

高宮:今、具体的にはどんな職種を募集しているのだろう。

金山:全職種(会場笑)。僕はほかの場所でも能力を発揮できるから、僕より経営がうまい人がいればその方が社長だっていい。営業、マーケティング、広報、人事、経理、CFO、CTO、COOも募集中だ。社歴にも年齢にも興味はなく、成果しか見ない。ベンチャーは成果を挙げる人に正しいポジションと権限を与えて伸ばすしかないから。

山田:まったく同じ答えで面白くないと思うけれど(笑)。今は広報のように人がまったくいないところもある一方、社内では「それぞれのポジションを2名以上にしよう」と話しているから、どのポジションも空いている。今は無限にやることがあるというか、たぶん、優秀な人がいればいるほどすごいことができる状態だ。良い人が金銭的に採れない状態でもない。我々は10月からマネタイズとして販売手数料をいただくようにしていて、キャッシュフローもポジティブになっていくし、今は本当に、超拡大フェーズに入るタイミングだと思う。

小泉:全ポジションで募集しているけれど、実は広報がいない。これほど採用をしているのに人事も1人しかいない。だから僕も現場に入りながら言っているけれど、そこで一緒に議論する、もしくは前に動かすメンバーが欲しい。僕は去年12月に入ったときは平社員だったけれど、僕からするとそれはどうでも良かった。やりたいことをやれて、成果を出して前に進めば結果として評価してくれるだろうというのがあったから。何ができるかを大事にしている会社だから、その意味で僕らも成果主義だ。実力のあるメンバーが集まってきて、世界を舞台に1歩ずつ物事を進めるメンバーが欲しい。

山田:経営陣も今は1人向こうに行って、僕も半分ぐらい向こうにいるから日本に2.5人ぐらいしかいない(笑)。だから、「CFOとか欲しいよね」という話を実際にしている。

金山:僕らにも広報がいない(会場笑)。あと、COO。今は僕がCOOを兼務している。数字を見てビジョンと照らし合わせつつ、「これをやろう。絶対にいける」と。で、労使を整えて、「いや、CSでこんな質問が来るかもしれないから」と言って想定問答集を書いて、それでKPIをチェックして、それで「うわー、うまくいかなかった」なんていうことをやっている。COOに求めるのは、とにかく実現力。形はむちゃくちゃだっていい。僕らは出さないとどうにもならないから。「世の中にどれだけ出すか」しかない。思いつくは思いつくので、それを世の中に出すためのスループットを高めたい。

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高宮:では、そろそろQ&Aに移ろう。

東京会場A:「ゼロから1」のフェーズにおける組織づくりや人材採用についてお伺いしたい。どのように経営陣を巻き込んでチームをつくっていくのだろう。

山田:当社では富島という取締役がプロダクトを見ているけれど、彼はエンジニアでもある。1人目はエンジニアリングができるということが絶対的に重要だった。かつプロダクトが分かるということで、まず彼に話をした。すると興味があるとのことだったから、「じゃあ、一緒にやろう」と。それで、あとはエンジニア。先ほども少しお話しした、株主でもあるエンジニアの2人だ。流れとしては、元々ウノウにいた6〜7人ぐらいの超優秀なエンジニア達に、「こういうことをやろうと思っているんだけど」という話をした。あと、辞めた人のなかでも優秀な人に声をかけ、かつツイッターでもエンジニアを募集した(笑)。それで応募というか、反応してきたおよそ20人全員と会った。そのなかで、タイミング等もいろいろ重なって一緒にやってくれることになったのが現在の2人だ。その後、2月につくって3月には石塚にアプローチした。彼もソーシャルゲームをやっていたので元々知り合いだったけれど、「会社を辞めます」という話を聞いたので、「次は何やろうと思ってるの?明日めしでも食おう」と。それで翌日話を聞いてみると、「アメリカで会社をやろうと思ってる」と言う。「それなら僕もアメリカで会社をやろうと思っているから一緒にやろう」という感じで口説いた。その辺が創業メンバーだ。

ただ、やっぱりエンジニア達は当時の会社でも当然ながら超重要なポジションにいたから、すぐに辞められない。それでどうしたかというと、年末頃まで土曜を出勤日にして、火〜土曜というシフトにしていた。それで土曜日にはそのエンジニア2人も来てくれて、仕事も進む。当時はアグレッシブなことを結構やっていた。いろいろやり方はあると思うけれど、うちの場合はそういう感じだった。

高宮:メルカリは初期メンバーにきっちり生株を渡している印象がある。そこは戦略?

山田:「次は世界で」と考えていたから、そこで優秀な人が必要になるという気持ちが強かった。だから優秀なエンジニアやプロデューサー、あるいは海外に強い人は全員チームの一員として考えて、株主としても入ってもらった感じだ。

金山:今、「エンジニア募集」とツイートしてみた(笑)。VASILYのファウンダーは僕とCTOの2人だけれども、CTOもヤフーにいた人間だ。彼は当時、26歳。新卒3年目のなかでは一番有名で、腕があったその彼を僕は洗脳した。「独立しよう」と言ったわけじゃない。当時、僕は「Skype」のようなチャットをつくるプロジェクトを担当していたのだけれど、とにかく「TechCrunch」とか海外のサービスを見せて、「こんなの必要じゃない?」「こんなの便利じゃない?」と、2年間言い続けた(会場笑)。それで匂いを出しつつ、iQONのアイデアということで「コラージュでSNSをつくる。これだ!」と思った瞬間、「ちょっと打ち合わせしよう」と、彼を会議室に呼んだ。そこで5分ほど、「こんな感じで、ここはこうで」と説明したうえで、「やる?」と聞くと「やります」と言う。それでスタートした。これは巡り合わせが良かった。彼の次に腕のいいエンジニアも何人か引っ張ってきた。3番目〜7番目の社員までは全員元ヤフーだ。彼らは超シンプル。自分より優秀な人がいるところにしか移らない。だから2番目の彼を抜いたらあとは上から順に抜いてきただけで、簡単だった。

高宮:最初のメンバーはどうしても時間がかかる。だから何かを思い立ったときには、すでに当てがあるどころか、ほぼ決まっているぐらいでないと難しいように思う。

山田:インターネット企業ではエンジニアが特に重要。先ほどお話しした2人も、1人は昨年9月ぐらいまで、もう1人は同12月まで加われなかった。だから土曜に出ていたのだけれど、今はもうその2人がコアになっている。ほかのエンジニアも皆、彼らに求心力があるから来ている状態だ。それほどエンジニアは重要だ。

金山:これは誘導尋問のようになっちゃうけれど、独立して「ゼロから1」を考えるとしても、今エンジニアと接点がない人は、そのまま接点を持てないと思う。だからVASILYとかメルカリのようにすでにエンジニアがいる会社に加わったほうがいいと(会場笑)。

東京会場B:私自身も今年1月に起業したが、うまくいかずに落ち込む、あるいは心配することも多い。そこで経営者の皆さまから、「こういう失敗は自分もしたよ」という励ましのエピソードがあれば(会場笑)、ぜひ伺いたい。

金山:僕は1年前にCFOが入るまで、CEOとCFOとCOOを兼任していて、シリーズA/Bの調達も経理もやっていた。こう見えても経理ができる(会場笑)。で、キャッシュフローで計算ミスをして給料が払えなくなりそうなときがあった。シリーズBの入金タイミングをなぜか勘違いして、「給料が払えない」と。「これは恥ずかしい。これじゃあ皆辞めていくぞ」と、焦った。結局、たまたま恵比寿のローカルな銀行に400万ほど預けていたので、そこで14時59分に下ろした現ナマを配布した(会場笑)。「たまにはお金の大切さとか、分かって欲しいから」なんてどきどきしながら言ってたけど、すげー恥ずかしかった(会場笑)。キャッシュフローは読みきらないと本当にやばい(笑)。

小泉:お金の心配事は必ず生まれる。

金山:お金と人の心配しかない。事業の心配はない。

小泉:僕も違う会社で同じことをやった。最後は36万円残っていなくて。実際、キャッシュフローを読み間違えるという経験はある。

山田:失敗は数限りないけれど、…なんだろう。思い出せないけど、ただ、創業したばかりの若手経営者に対しては、「もっとアドバイスを求めてもいいのに」と思うことがある。僕はエンジェルでもお金を出しているけれど、起業したての創業者を見ていて感じるのは、内側に籠もっちゃうところだ。経営は無限に打ち手がある将棋のようなもの。でも、その打ち手を知らない。それで、「あ、『歩』ってこんなふうに動けるんだ」と。ベテランの人が苦もなくやっていることを、知らないためにできないということが結構ある。そこで、「これこれ、こういう状況なんです」といろいろな人に相談すると、「それなら誰々に話してみなよ」といった感じですぐ解決できることもある。それはたぶんVCから投資を受けるメリットの1つだ。つまり、味方をつくって相談する。それで解決するのが起業家の仕事であって、逆に解決できない起業家は無能という話になる。だから、なんとしても、誰かの助けを借りてでも、解決しなきゃいけない。その意味で、「もっと相談すればいいのにな」と思うことがある。

金山:自分の能力を落としてしまう要素の1つに、「恥」の概念がある。「恥ずかしいから」と。恥ずかしくない。相談されたほうは皆忘れている。僕がこの壇上で大きなほうを粗相しても、皆さんは3日後に忘れてる(会場笑)。

小泉:たとえば3年前に起業したネット企業には潰れているところもあると思うけど、僕らは覚えていない。そんなものだ。今、失敗談を思い出せずにいた進太郎さんを横から見ていて、「たぶん起業家ってこういう感じであまり思い出せないんだろうな」と(会場笑)。「辛いことをあまり辛いと思ってないんだろうな」と思いながら見ていた(笑)。常に「前へ前へ」と考えているから、振り返る必要もないのだと思う。

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仙台会場A:起業という考えに到ってから何を考え、実践してこられたのか。企業勤めをしていた頃はどのようにモチベーションを維持していたのだろう。

仙台会場B:2社のサービスでは、サービスイン以降のダウンロード数やアクティブユーザー数が爆発的に増えているが、初速を出すためには何が必要だろう。

金山:ヤフーには、辞めるために入った。今も昔も日本で1番良いネット企業だと思うので、「ベストのところに入ってノウハウも人脈もすべて盗んでから出よう」と。だからモチベーションが途切れることもなく、逆にヤフーが楽し過ぎて(会場笑)。いい会社です。すげー楽しかった(会場笑)。とにかく、大企業にいたときから「やろう」と考えていたわけではなかったけれど、僕は元々ミュージシャンだったし、「自分で何かやりたい」という思いは常にあった。とにかく、常にゴールから逆算して物事を考えていたという面はある。逆算したうえで、そのときに足りないものを、そのときの仕事でどのように学べるかを考えていた。また、それを学べるところに行こうとも考えていた。

小泉:僕も実は自分で事業をやろうと思っていた。で、結局のところ、事業ではどうやってお金を稼ぐかが大事になると思ったので、お金の勉強をするために投資銀行に入ったという次第だ。それで3年半ほど在籍していた。当初からベンチャー系をやりたいと思っていたので、その意味では僕も金山さんと同じ。そこで人脈やノウハウを吸収し、3年半後に辞めた。先ほどお話しした通り、「レール」を敷かれたのと、ミクシィやDeNAといったいくつかのネット企業をコンサルさせていただいたことが影響している。そこで、「同世代が世界をつくろうと思っている」といったようなことを考えると、「やっぱりこっちが心地いいな」と。それで、スパッと辞めてスパッと転職した。棺桶に入るとき、「不幸だったな」という人生にしたくないなと思ったし、そんなふうに死を強く意識したら、すぐにでも辞めたいと思った。

山田:僕は大企業に入っていないから(笑)。楽天には大学4年のときに半年働いていただけだし。ただ、そこをなぜ辞めようと思ったかというと、とにかく自分でやりたくなっちゃった。やっぱり、「こういうものをつくってね」と言われてつくるより、自分で好きなことをやりたい。「できるだろう」とも思ったし、それで辞めた。で、当時は大学4年生だったこともあって、経理から何からすべて1から勉強して、会社をつくっていった。まあ、性格的な問題という感じもする。

高宮:楽天を辞めてウノウをつくるまでの助走期間はどうしていたのだろう。

山田:僕は2001年に有限会社をつくり、それを2005年に株式会社とした。そこからが僕にとってのスタートアップという感じだ。僕は2004年、アメリカに1年間行っていたのだけれど、行く前にいろいろな思いがあった。「英語ができるようになりたい」とか、「アメリカに住めるようになりたい」とか、「インターネットより不動産や飲食のほうが面白いんじゃないか?」とか。でも、実際に行っていろいろ動いてみると、「やっぱりインターネットサービスをつくりたい」という気持ちになった。また、「それって別にアメリカでやる必要もないよね」と、すごくクリアになった。だから思い切って行ってみたのは良かったと思う。すべてやってみて、削ぎ落とされて最後に残ったものがやりたいことだったという感じだ。

あと、初速については、うちの場合は当初から、DAU(dailyactiveusers)を見ていると、日々少しずつ伸びていた。もちろん最初は大変だったし、100人が105人になったのを見て、「5人しか増えてないのかよ」なんて苦しんだ時期もある。ただ、それが積み重なった結果、1万人が1万500人になるというビジネスになった。だから最初のうちは、数は少なくとも訪れた人たちがどんな行動をしているのかをよく見て、少しずつでも改善していくしかないと思う。広告を買う等、テクニカルにはいろいろなやり方がある。ただ、アプリビジネスでは地道さが大切だ。問い合わせが来て改めて見てみると、「あ、このUIは確かに勘違いするよね」ということで変えていく。そういうことを何百〜何千と改善を繰り返して、だんだん良くしていくものなのだと思う。

金山:今思い返してみると初速については2つの作戦があった。空中戦と地上戦。地上戦としては、とりあえずネットサーフィンをしまくって、そこで見つけた可愛いブログやおしゃれなブログに片っ端からメールしていた。だからアメブロには30回ほどアカウントを停止された(会場笑)。それでも、「素敵なブログですね。こんなサービスつくりました。ぜひ使ってください」と、ひたすら泥臭くやっていたと。実はそれで最初のユーザーがかなり生まれ、その人たちが残ってくれたのが良かったと思う。それともう1つ。ほかのサービスがどのようにスケールしていったかという歴史を振り返ると、アマゾンはヤフーのショッピング担当で、グーグルはヤフーの検索担当だった。だから、大きなところから「用水路」を引くのが分かりやすい。となると、当時唯一のでかい用水路はブランドさんのECサイトだったから、「こちらの広告メニューは、今はバーターでやります」と。たとえば「HYSTERICGLAMOUR」のデニムを自腹で購入し、それが当たるというコーディネートキャンペーンのメールを、同ブランドのメール会員に投げた。そういうことをサテライト的に行い、各種ブランドとコラボしながら少しずつ用水路を引いてユーザーを増やしていった。

山田:たぶん、その辺は後々振り返れば「あれが効いたよね」となるけれど、やっている最中は何が当たるか分からない。僕も「ヤフオク!」のユーザーさんになんとかしてメールを送れないかと、いろいろやっていた。それを1つずつ実践し、効果検証を行い、そのうえで、「これ、意味ないから止めよう」というふうにするべきなのだと思う。

金山:手数が大事。営業と一緒だ。見込みリストを見て片端からアプローチしていく。

小泉:ミクシィの立ち上げ時、笠原(健治氏:ミクシィ会長)さんは朝5時頃までCSのメールを返していた。プラットフォームにはコミュニティ性がかなり出てくるし、その空気感がメルカリにはあるのだと思う。初期のミクシィにもそれがあった。それをつくるのは運営者だ。笠原さんはそのために、丁寧にメールを返し続けていた。とにかく、DAUは1%でもいいから上がり続けていけば、いずれとんでもない数になる。だからDAUが減らないことだけはいつも意識していたし、今でも僕らはすごく見ている

高宮:大きな志を持って、意外と泥臭い地道な地上戦を行っていけば、これほど急成長できるケースもあるというお話だったと思う。では、時間になったので本セミナー締めたい。改めて御三方に拍手をお願いします。ありがとうございました(会場拍手)。

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