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「クリエイティビティと経営」 質疑応答

投稿日:2014/09/25更新日:2019/04/09

柳澤:クリエイティビティがなぜ大事か、それが後天的に身につくのか、どんな方法で取り入れていけばいいのかというところで話を進めてきたがさらに深めていきたい。質問を受けたい。(55:46)

会場A:水野さんのお話で、センスの最適化があった。「普通」の感覚との距離感、ポジショニングをどう取るかだが、「普通」とは何かというのをどう捉えていつのか、そのために意識していることは何か。(56:35)

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水野:「普通」の導き出し方は、知識の量によると思う。音楽に例えると分かりやすい。葉加瀬太郎さんと話したときに、「ヨハン・セバスチァン・バッハなんだよ」って言う。バッハが分岐点になっていて、そこがすごく大切なポイントなのだとおっしゃっていた。ゼロポイント、あるいはバッハポイントというか、そこを分かっていないとウォルフガング・アマデウス・モーツァルトの良さも分からないし、ほかの良さも分からない。同じように、ビートルズやボブ・ディラン、エルヴィス・プレスリーが分かっていないとロックは理解できない。

知識の量に対して、「普通」というゼロポイントが存在している。これは、明解にゼロかというと、そうではなく、0.1かもしれないし、マイナス0.2かもしれない。しかし、限りなくゼロに近いポイントを理解できるかどうかは、知識の量による。それを得るために1番手っ取り早いのは、雑誌をたくさん見ること。インターネットだけだと情報量が多すぎる。もうちょっとセグメントされた量を見ていくほうがいい。僕は、月に50冊ぐらいは雑誌を買って、斜め読みだが100冊以上は読んでいる。テレビも1日2時間は見ている。(57:09)

柳澤:情報収集が必要か不要かという問いもしたいなと思っていた。クリエイティブの表現的なことに対しては、まったくしない方もいる。

遠山:ちなみに、私はそっち。

柳澤:僕も全然しない。

遠山:避けているというか。先に見ちゃうと「なぜ俺はやっていなかったんだ」と後悔してしまう。さっきのニューヨークの行列スープみたいな話。最初に思いつきたい、動機として。(59:03)

水野:僕が言ったのはクリエイティビティを上げる方法ではなくて、ゼロポイントを知る方法。クリエイティビティというのは、見なくても、見てもどっちでもできると思う。遠山さんは、ものを作るということに関しては、ものすごい知識の量をお持ちだと思う。

柳澤:情報収集は必要。僕も経営者になって経営の本をたくさん読んだ。それで、「この辺がスタンダードだ」と分かったというのはある。(59:40)

遠山:ゼロポイントの話と合っているか分からないが、うちのSoupStockTokyoの店で言うと、クリンリネスとか、窓に拭きムラが無いとか、きれいじゃないと嫌だというのが皆にある。ポスターがちょっと傾いていて平気か、嫌かというようなことは、クリエイティビティの有る無しというか、美意識のゼロポイントだと思う。(59:50)

会場B:先ほど、遠山さんが、社内のバーのプレゼンで、「うん、そうだよね」と言った話は社内の空気感で理解できたのだと思うが、BtoCで幅広く訴求するにあたって、言語化で難しかったエピソードがあれば伺いたい。(01:01:02)

水野:僕は、言語化を百パーセントやりたいと思っている。言語化できないことは存在しないと思っている。この音楽がいい、この映画いいという説明をしようとすると、すごく時間がかかるし、膨大な資料が必要となる。美術をやる人やデザイナーに向けてはそれを推奨するようにしている。(01:01:50)

なぜかというと、僕は美術の大学を卒業しているので、美大生に躍進してほしいのだが、今、世の中で活躍できなくなってきている。

柳澤:ちょっと時代から遅れている感じがある。

水野:本当に遅れている。定員割れの学校も出始めている。美術が馬鹿にされている。「バ—カ」って言われているわけじゃなくて、「要らない」とか、「ちょっとどうか」と思われている。その代わり、例えばSFC(慶応義塾大学湘南藤沢キャンパス)など、美術を教えている一般大学が、どんどん出てきている。「言語化できない」ということを隠れ蓑にすべからずということを美術系の学校の人によく言っている。(01:02:56)

遠山:言葉はすごく大事だ。言葉が決まると業態が1個できるということもあり得るぐらい。

柳澤:おっしゃるとおりだ。

遠山:うちの会社では、美術作品をコレクションし始めているが、それを掛ける場所がないので、ギャラリーのようなカフェやレストランができたらいいなと思っている。でも、“ギャラリーカフェ”とか“アートカフェ”とか言いたくない。すごく格好悪いから。スパッと来る言葉が見つかったらいいなと思っている。(01:03:56)

柳澤:すごく分かる。面白法人カヤックもサービスを考えるとき、言葉から入る。言葉が会社の文化を作ると思う。使い方1つで違いが出る。そこもセンスということになってしまって難しいが。(01:04:26)

遠山:クリエイティブというより、頭の良い人や常識的な人が、パチンと良い言葉生み出すこともある。

水野:“カフェギャラリー”と言ったときに、遠山さんが嫌だと思う感覚を理解できるかできないかというのも知識の量による気がする。安っぽい感じがするとか、でも、“美術喫茶”と言ったら、なんかこう…。(01:04:54)

遠山:ちょっと面白いかも。

柳澤:え?今、逆に有りみたいな話になっちゃうかもしれない。

水野:僕がホワイトキューブ(美術館の展示空間の意)の中でやって、「美術喫茶」っていう名前がつくと面白い。本当に美術、喫茶みたいな感じだとダサイけど(笑)。結局、クリエイティブと経営の判断は表裏一体でくっついてくると思う。

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会場C:先ほど「目的」という話があったが、目的に達するための解は無数にあると思う。その無数の解から1つを通すためのポイントは何か。(01:05:47)

水野:それに対する明解な答えがある。僕は「シズル」を大事にしている。シズルは何かというと、英語で、肉がジュージュー焼ける様子のこと。広告業界では転じて湯気、ビールの泡、コップの水滴といった、それらしく、おいしく見えるものを「シズル表現」と呼ぶ。僕はこれをさらに広義に捉えて、例えば「スポーツ化シズル」とか、「靴下シズル」とか、「経営者シズル」とか、いろんな言い方に広げている。このシズルがあるかないかということは、すごく大切にしている。知識やセンスを集積して判定するポイントは、シズルがあるかないかだということを説いています。詳しくは僕の本に書いてある(笑)。(01:06:07)

遠山:俺なんか良いことに出会えると会社の中で小躍りしちゃうのね。

柳澤:あ、近いですね。小躍りしたくなる。

遠山:「遠山さんの小躍り、出た〜」みたいな。

柳澤:シズルも小躍りも言語化できているようで、できていない。でも、そういうことです。すみません(笑)。(01:07:47)

会場D:リーダーシップとクリエイティビティは、どういう関係があるのか、ないのか。(01:08:11)

柳澤:リーダーシップとマネージメントの違いをどう捉えていた上で質問しているか、補足してほしい。

会場D:マネージメントは、決まったものを管理する。リーダーシップは、目標やビジョンを設定すると考えている。当然、クリエイティビティとの関係があるかと思っている。(01:08:45)

水野:僕は、マネージメントもリーダーシップも、クリエイティビティも何もかも、全部1つで捉えている。綺麗事を言っているようで恥ずかしいが、「1人でも多く幸せにしたい」ということ。それは、スタッフも、クライアントも、世の中のすべてにおいて、1人でも多く幸せにしたいと思っていて、そのためには、自分が犠牲になっても構わないと思っている。それは僕の「志」だと思っている。これは、出世欲だけの人は持っていないビジョンだと思う。

これをきちんと持っている経営者は少なくて、ここが本当に成功する人と、まあまあ成功する人との差だと僕は思う。マネージメントするにしても、何かを話すにしても、それを大切にしている経営者は出世している。遠山さんのスタッフが新宿2丁目で店を開くという話も、思いを大切にしてあげるということだと思う。そういうことは、マネージメントなり、クリエイティブ管理なり、様々な局面に必要になっていくと思っている。(01:09:08)

柳澤:なるほど。何か質問に対する回答とは違ったが、伝わってくるものはあった(笑)。質問がちょっと難しい。

遠山:クリエイティビィティにおけるリーダーシップって聞いて、やっぱり「ときめき」という感じだ。(01:11:25)

柳澤:あいまいなキーワードが来た(笑)。

遠山:リーダーがいつも、ときめいているわけじゃない。MBO(マネジメント・バイアウト)をやる前、ずっと落ちている時期があって。でもあるとき、「えい、MBOしよう」という意思が発動された。私の場合、3年に1回ぐらいそういうことがある。(01:11:45)

そうなると、何か、やろうっていう気持ちになる。でも、ときめきがセットになっていないと意思は発動できなくて…。よく社員や、その家族の誕生日に花を贈る経営者がいるが、俺はちょっと無理かな(笑)。(01:02:15)

柳澤:それ分かりますね。

遠山:ちょっと嘘くさい。名前も覚えられないし(笑)。俺がすべきなのは、むしろ背中向けて、「遠山さん1人で向こうに行っちゃってるよ」みたいなことがリーダーシップだと思う(笑)。

柳澤:それぞれのリーダーシップ像を示していただいた。ありがとうございます。もう1問行こう。(01:13:30)

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会場E:昨夜、遠山さんのナイトキャップに出てすごくいいなと思ったのが、「企て」という言葉をおっしゃっていたことです。クリエイティビティに対して、1人ひとりの行動として「企て」って大事だと思う。(01:13:53)

遠山:「夢」って言うとすごく大きくなっちゃうので、一生に1個とか2個とかの「企て」ぐらいでいいと思っている。こんなのできたらいいな、あったら面白いなみたいな「企て」をちょこちょこやっていく。

私自身、能力がない。英語は英検20級(笑)、経営なんかよく分からないし、どうして今に至っているかというと、小さな「ときめき」とか、「企て」をしては、なんとか成功して、ちょっとずつやって自分をだましていくっていうか、自分自身に思い込ませる。子どものころ、「将来大成功するって占いで言われた」と、おふくろから聞いて、これを大事に握りしめている(笑)。(01:14:12)

そういう自分に、少しずつでも自信をつけていって、妄想の度合いも少しずつ広げて、その妄想が実現化できるようにしていく。その1歩が「企て」という感じです。

柳澤:「企て」——。言葉の使い方だ。それならできそうな感じがする。良い話をシェアしていただいた。最後の1問、どなたか。これで締めたいと思います。(01:15:08)

会場F:経営トップのクリエイティビティの感覚を、大きな組織の中で、どうしたら標準化していけるか。(01:15:50)

遠山:SoupStockTokyoでは、最初の企画書に、「スープに彩りがあるから、それ以外の余計な色は使わない、マークも墨1色」と2〜3行で書いた。それはずっと、延々と行われている。店に行くと、木やガラス、モルタルはそのままで、意味なく壁を紫に塗ったりすることはない。リーフレットも、その素材の色以外に意味なく赤い色を塗ることなどはしない。ある種のルール化は、社内では成立している。(01:16:42)

水野:個人個人いろんな色があるとみんな思っているが、実はそんなに幅がなくて、例えば、「秋は何色だと思うか?」という問いには、たいていの人が、赤から茶色、オレンジ、黄色のどれかを答える。赤が圧倒的にいつも多い。何千人に聞いても、同じような答えが返ってくる。これを、「ソーシャルコンセンサス」と僕は名づけている。潜在的無意識とも言い、それを見つけ出す作業がある。これも本に書いてある(笑)。(01:17:25)

柳澤:つまり、ルール化するということか。

水野:表に出して、言語化して、みんなで共通の認識を持つ。まず、持っておくというのがすごく大切で、そこを最初の出発点にする。「海っぽい感じがいいよね」と言っても、海っぽいってどういうことであるのか、人それぞれ違う。「海っぽい」っていうのを言語化していくことをしっかりとやっていくといい。

柳澤:最後に一言、何かあれば。

遠山:21世紀は文化の時代。これで行きましょう(笑)。

水野:数多くの経営者と仕事をしてきて、最近思うのは、勇気がある人しか成功していない。1歩を踏み出せるか、踏み出せないか。遠山さんがさっき言ったように、そば猪口に何かおまけをつけて持って行くって、なかなか会社ではできない。「何言ってるんですか!?」って言われるかもしれない。でもこれも1つの勇気だ。小さな勇気かもしれないが、たいていの経営者はそうした勇気を持っている。この会場にもそういう方がたくさんいることを願って、最後の言葉にしたい。(01:19:33)

柳澤:みなさんも勇気を持って頑張ってください。ありがとうございました。

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