自分を磨くことに関しては、ストレッチした局面にいるかがすごく重要です。私は20年間経営コンサルタントという仕事に携わってきました。コンサルタントというのは“身の丈を超えた仕事”です。自分の持っている力を120%発揮しないとできないと感じたからこそ、努力もしたし、やりがいも感じた。自分を追い込むことで、成長できたわけです。
鍛錬こそプロの証し
経営の「け」の字も知らない若造が、突然、大会社の社長とか役員を目の前にして、意見を言わないといけない。「そんなの無茶苦茶だ」と思ったけれど、「何か付加価値をつけないといけない」というところまでいきなり追い込まれるわけです。
すぐに自分の底の浅さ、力のなさを痛感しました。自分の言っていることに確証がない。夜も寝られない。最初に入ったプロジェクトで、クライアントにプレゼンするという前の夜は一睡もできませんでした。資料は出来ているけど、「本当にこんなこと言っちゃっていいのか」と考えると、足がガクガク震えたのを覚えています。それから20年間、結果を出さないといけないという切羽詰った状況の中で仕事をやってきました。
その中で、「プロ」とはそもそも何だろう。クライアントは何を求めているのかと考えてきました。クライアントが高いお金を払ってアドバイスを求める。クライアントの方からみて、「あの人はプロだな」と思われる何かを持っていなければならない。地頭のよさ、天性の思いつきというだけでは勝負できません。人並みはずれた鍛錬をする努力というものがあって本当の「プロ」になるんだろうと思います。
ではどう鍛錬するか、学びを深めていくか。三つに大きく分けて考えています。
“遠藤流”学びの要点
ビジネスパーソンとして押さえないといけない「背骨となる考え方」が必ずあります。専門分野に関係なく、土台の部分をしっかりさせないと、その上にビルは建ちません。三つあります。
まず「ビジネスの原理原則」。ビジネスの古典を読むことも大切です。ピーター・ドラッカー、松下幸之助、本田宗一郎なんかを今でも読み返します。経営の基本を常に振り返るという努力をしないといけない。
次に「ビジネスのルール」です。会計、法制度など最低限のルールを知らないといけない。しかも刻々と変わるから、常にアップデートしていく必要があります。
三つめに、「ビジネスの基本コンセプト」です。いわゆる「MBAの知識」で、基本的な考え方や枠組みを学ぶものです。これは基礎にしか過ぎません。グロービスMBAシリーズは13冊全部揃えていないといけない。「マーケティングをやっているからアカウンティングはいらない」という考え方はだめです。ビジネスパーソンとして体系的にビジネスを理解する必要がある。
2)潮流についていく学び
ビジネスは生き物ですから、変化という潮流についていく学びも重要です。MBAシリーズを読んでいるだけではだめです。世の中にはもっと新しい事例がどんどん生まれてくる。その中で当然コンセプトも変わってくるわけです。鮮度の高い情報、知識に常に入れかえていくことが必要になります。
自分の専門以外の潮流にも関心を持って下さい。製造業だったら例えばサービス業にも目を向ける。「今、サービス業ではどんなことをやっているのだろう。製造業にも役に立つのでは」と考えることが非常に大切です。例えばものづくりの仕事をしていたら、逆に営業のことを知らないといけないかもしれない。「お客さんは何を望んでいるのか」という視点からものづくりのあり方を考えるということも重要です。畑違いのことにこそ、実はブレイクスルーのきっかけがあったりする。畑違いということは、もちろん自分の「畑」を持っていることが前提です。
ビジネスパーソンとしての「器」づくりも重要です。サラリーマンになると、自分の専門分野のことは無茶苦茶よく知っている。でも例えば飲みに行って、ちょっと話がそれるとまったく会話のキャッチボールができない。それでは器を広げていくことはできないです。経営者として、ビジネスパーソンとして、引き出しを増やしていくことも大切なわけです。特に経営者を目指す、起業家を目指すには、いろんな引き出しを使い分けないとマネジメントはできない。広く潮流を見ていくということを意識してほしいと思います。
3)アウトプットを生み出す学び
これらに加えて私は、アウトプットを生み出す学びというのを意識してきました。知識をインプットするだけではつまらないですよね。やっぱりアウトプットを出したいじゃないですか。何でもいい。勉強した成果を事業計画に落とし込むとか、ビジネスプランを立てて実行するとか。これが一番分かりやすいですよね。私のように本にまとめて世の中に問うていこうということもアウトプットです。本として発信しないまでも、例えば勉強会で自分が教える立場になるとか、リードをとる。これも非常に大きなアウトプットです。
受身ではなくて、出口が見えている学びは緊張感があるし、深さを求められる。逆に出口のない無目的な知識、情報はすぐに消えてしまいがちです。勉強のための勉強になってしまう。アウトプットを意識することで、学びの品質を高めてもらいたいと思います。
外の世界から受信して理解したら、それを加工、編集、創造、発信していく。すると外の世界からフィードバックがある。こうして常に学習するサイクルができてくると、学びの深さができます。
私が普段からやっていることを紹介します。本当に当たり前のことばかりです。
“遠藤流”学びの方法論
情報の宝がたくさん詰まっている。最低でも1時間は読んでいます。経済教室なんかとても良い事が書いてありますよ。正直言ってMBAを学ぶよりも、よっぽどあそこで学ぶことの方が多いです。特に畑違いの情報に関心を持つ。初めのうちは分かなくても、読んでいたらだんだん分かるようになっていきます。
2) 1カ月に最低20冊のビジネス書に目を通す
これは先ほど話した「潮流についていく学び」の部分です。特に興味があるわけじゃなくて、世の中で何が流行っているのかをつかむため、最低限、この程度は読んでおいた方がいい。私は乱読、速読、飛ばし読みです。面白かったらちゃんと読みます。
3)週に1回は新たな現場に赴く
自分の目で見て肌で感じないと納得できない人間なので、週に1回は必ず現場に行くことを自分に課してきました。1年にすると50回。最近も四国で建設機械の部品を作っている企業を訪問し、色々なところを見せてもらった。週末にはよく住宅展示場に行く。顧客になりすまして、その会社の対応とか見ているわけです。コンビニも現場、スーパーも現場です。それで世の中の動きを感じるわけです。スーパーの展示ひとつでいろんなことが分かる。現場の息吹を感じるということは非常に大切です。
4)年に2冊は本を出す
誰に決められたわけでもないけれど、こう設定することで勉強に身が入る。テーマを常に持ってできる。本は自分の主観を世に問うて、生きた証を残そうということで、自分の鍛錬と思ってやっています。
学びの目的は主観を磨くこと
人間は勉強しなくても主観を持っています。でも原始的なレベルで放置するのではなくて、主観を磨くために鍛錬する。主観の品質を高める。そして「こう思う」「これをやりたい」と主張するわけです。その主張に対して相手が「やる気があるな」「なるほどな」と思ったりします。そこに人生を切り開く突破口があるのです。
コンサルタントは客観的な人間だと思われているが、数字やロジックを並べてもお客さんはまったく動いてくれません。最後は自分の思い込みで「おたくの会社こうすべきだ」と言い切る。その主張は、証明や裏づけが不十分かもしれない。でも社長は「そうか」と受け止めるわけです。客観的なデータだけで言っても、相手は全然反応してくれないわけです。「言っていることは、もっともらしい。でも何か気持ちがない」となる。一流のコンサルタントというのは、自分の主観をぶつけて、それをお客さんが飲み込んでくれる人なんですね。
そうは言っても単なる思いつきではだめで、思いつきというものを吟味して、揉んで、裏づけをとって、客観的な分析というのがあって、主観を論理的に説明する能力がなければいけない。質の高い主観というのは洞察、本質を見抜いているものです。
強靭な信念は客観を超える
彼女は元々、国際貢献がしたいということで、国連の機関でインターンをし、金だけばらまいて現地に根ざした貢献ができていない現実に直面した。そこでバングラデシュに飛んでみたわけです。そして考えた。「私に何ができるのか」と。
「ジュートを使って日本を始め先進国でも、高いお金出して買ってもらえる商品を作る。彼らが誇りを持って売り出せる商品を作って、自分たちで稼ぐようなことをやっていかないといけない」。そう彼女は感じたわけです。これは「主観」です。
ビジネススクールで分析したらその合理性は説明できない。早稲田のビジネススクールでケースとして取り上げた経験がある。バングラデシュで、ジュートを使って欧米など先進国で売れる商品を作れるか、可能性を検証しなさいという宿題を出した。GDPは低い、インフラは整っていない、カントリーリスクは高いと学生たちが分析するわけです。そしてみんなNOだった。こんなビジネスは成り立たないと。多分、私でもNOです。
でも彼女は現地で工場を建てて、従業員も雇って、日本で売っているわけです。これって何なのか。彼女の強靭な信念というのは、数十の軟弱な出来ない理由を駆逐した。MBA的な知識を使えば、「出来ない」という証明はいくらでもできる。しかしそれは、「出来る、やる」という思いを覆すものではないということです。
自分は何をやりたいのか、何ができるのか、何を目指すべきなのか。腹から沸きあがってくる強烈な思いを常に意識して勉強してほしい。単に知識を詰め込んでも、ビジネススクールで学んでも、強い主観は見つかりません。自分の心の中で探すものです。




