何でも貪欲に吸収する姿勢が自信になる
「学生の頃は漠然と経営者になりたいと思っていただけだった。卒業後に就職した旭硝子ではまず、化学品工場で生産管理や品質管理を担当し、1円、2円のコスト削減に必死になっていた」と、玉塚氏は語る。ビジネスリーダーというと、経営者としての明確なイメージを持って、計画的にビジネス経験を積み重ねてきた印象が強い。ところが、玉塚氏はどちらかと言えば“おぼろげな”目標を掲げ、あとはビジネスの自然な流れの中で迎えた転機のたびに、徐々にリーダーとして思いを強めてきた。
ビジネスリーダーとして最初の転機が訪れたのは1989年、27歳でシンガポールに転勤したときである。「当時は円高が急進して松下電器やソニーなど国内の大手メーカーがアジアに生産拠点を移していた。そうした企業とジョイントベンチャーを作る際に、小規模ながらもプロジェクトのビジネスリーダーとして経験することになった」(玉塚氏)。
学生時代はラグビーに専心、社会人になってからは生産管理や品質管理のみを担当していた玉塚氏は「バランスシートもキャッシュフローも分からない」。プロジェクトを円滑に進めるため、本社から人が送り込まれた。「ビジネスにおける自分自身の基礎力のなさを痛感し、悔しい思いをした」(玉塚氏)。しかし、それと同時に、「今、この機会にしっかりと勉強すれば間違いなくビジネスに役立つと思った」と、当時の心境を振り返る。
さっそく会社に留学の希望を伝え、許可が出ると2年がかりで勉強して、アメリカのケースウェスタンリザーブ大学のビジネススクールに入学した。それから2年間は「経営を体系的に学べることがとにかく嬉しく、超ハイテンションで、興奮状態のままアッという間に過ぎていった」(玉塚氏)という。
ビジネススクールでは各学期3〜4科目を受講するのが一般的だったが、玉塚氏は一気に6〜7科目を受講し、貪欲に知識を詰め込んだ。投資会社からの学生の中には「アカウンティングは大体、分かっている」と斜に構えて授業に出る同級生もいたという。こうした同級生に対し、玉塚氏は「四の五の言わず、スポンジのように何でも吸収する気で臨んだ。僕は、新しいことを始める際には、ここから先は勉強する時、次は実践の時というように、過去の経験や栄光にしがみつかず、常にゼロリセットして素直な気持ちで取り組むようにしている。そうやって気持ちを切り換えて全力で学んできたことが、今の自信につながっている」と話す。
ビジネスリーダーとして最初の転機が訪れたのは1989年、27歳でシンガポールに転勤したときである。「当時は円高が急進して松下電器やソニーなど国内の大手メーカーがアジアに生産拠点を移していた。そうした企業とジョイントベンチャーを作る際に、小規模ながらもプロジェクトのビジネスリーダーとして経験することになった」(玉塚氏)。
学生時代はラグビーに専心、社会人になってからは生産管理や品質管理のみを担当していた玉塚氏は「バランスシートもキャッシュフローも分からない」。プロジェクトを円滑に進めるため、本社から人が送り込まれた。「ビジネスにおける自分自身の基礎力のなさを痛感し、悔しい思いをした」(玉塚氏)。しかし、それと同時に、「今、この機会にしっかりと勉強すれば間違いなくビジネスに役立つと思った」と、当時の心境を振り返る。
さっそく会社に留学の希望を伝え、許可が出ると2年がかりで勉強して、アメリカのケースウェスタンリザーブ大学のビジネススクールに入学した。それから2年間は「経営を体系的に学べることがとにかく嬉しく、超ハイテンションで、興奮状態のままアッという間に過ぎていった」(玉塚氏)という。
ビジネススクールでは各学期3〜4科目を受講するのが一般的だったが、玉塚氏は一気に6〜7科目を受講し、貪欲に知識を詰め込んだ。投資会社からの学生の中には「アカウンティングは大体、分かっている」と斜に構えて授業に出る同級生もいたという。こうした同級生に対し、玉塚氏は「四の五の言わず、スポンジのように何でも吸収する気で臨んだ。僕は、新しいことを始める際には、ここから先は勉強する時、次は実践の時というように、過去の経験や栄光にしがみつかず、常にゼロリセットして素直な気持ちで取り組むようにしている。そうやって気持ちを切り換えて全力で学んできたことが、今の自信につながっている」と話す。
急成長を現場で体験し減衰期に社長就任
1998年頃、ファーストリテイリングの取扱商品に占めるプライベートブランド(PB)の割合は5割程度で、残りはナイキやプーマといったナショナルブランドだった。ユニクロの認知度は今ほど高くなく、「知り合いから『なに、のらくろ?』と聞かれることもあった」という。しかし、ユニクロブームに火がつくまで、そう時間はかからなかった。
ファーストリテイリングは間もなく、東京・原宿に都心初の旗艦店をオープンして、同時にPB商品の比率を徐々に高める戦略を打ち出した。その一環で品揃えを充実させたフリースが一気にブレーク。「1、2年の間は現場で色々と修行したいと考えていたが、売上高は1000億円から2000億円、4000億円と年々大幅に増え続け、もはやじっくり修行したいなど悠長なことを言っていられる状況ではなかった。みんなと一緒に急成長するビジネスを体感していた」(玉塚氏)。
だが、「バブルはいずれはじける」(玉塚氏)。2001年になると、ファーストリテイリングの急成長の勢いは嘘のように失速し、売上高が一気に3000億円程度になった。月間売上高が前年同期比20%にまで落ち込む既存店もあった。経営チームのメンバーが自信をなくし、将来に不安を抱えて始めていた頃、玉塚氏にビジネスリーダーとして飛躍する第三の転機が訪れる。イギリスでの旗艦店出店を果たして帰国した玉塚氏は、創業者の柳井正氏に再建を託され、社長に就任。企業再生のプロとして第一歩を踏み出した。
ビジネスリーダーに求められる資質
ユニクロ再生に当たり、玉塚氏は顧客に直接インタビューするなどして消費者の視点から課題を洗い出し、一つずつ壁を克服していった。「来店客の7割が女性であるにも関わらず、女性が買える商品は当時、全体の25%しかなかった。“ユニセックス”と言いながら、店舗にはMサイズ、Lサイズしか置いておらず、小柄な女性が着られないというようなこともあった」。細やかな視点で課題をあぶり出し、それを解決する過程で玉塚氏はまた、「それまでは柳井という“偉大なアントレプレナー”が頭脳の役割を果たし、それを現場が実行するという既存の企業風土だったものを、現場の社員も自らの頭で考え、動く風土へと変えていった」。
こうした取り組みが着実な効果を表し、業績回復で一定の成果を上げ玉塚氏は、2005年8月にファーストリテイリング社長の座を退いた。
急成長と再生を肌身で感じたファーストリテイリングでの7年間で、玉塚氏は経営への思いをさらに強固にした。特に玉塚氏が“偉大なアントレプレナー”柳井氏から受けた影響は大きく、「規模は小さくてもいいので、自分で経営者になりたいと思うようになった」のだという。「ユニクロで業績を回復させたときのプロセスが忘れられなかった」こともあり、退職して2カ月後には企業再生とスタートアップ、事業継承を手がける新会社を設立。「再生・再活性化・成長」の意を込めて、社名はリヴァンプとした。
リヴァンプの最大の特徴は、事業の当事者として、経営に参画すること。執行責任者として顧客企業の経営に参画すると共に、「経営責任を負い逃げ場をなくすため」(玉塚氏)、資本参加もする。そしてリヴァンプでは、企業がおかれている局面に応じて経営のプロフェッショナルや業界の識者、改革意識が高いプロパー社員、外部コンサルタントなどで構成する最強チームを編成して経営に臨む。「雇われ経営者単独では、孤立するリスクや経験や人的リソースが不足する可能性が大きい。コンサルタントだけではリーダーシップや現場の理解に限界がある。従来型の投資ファンドは、企業ではなく投資家のために働きがちになる。こうした課題を克服するには一人ひとりが考えて動けるチームを組むのが良い」と、考えてのことだ。
幾つもの転機を経てプロ経営者として起業した玉塚氏は今、ビジネスリーダーに求められる資質を、三つ提示している。それは、決してあきらめずに事を成し遂げようとする意思の強さや、自身に負かされた任務に対する責任感を持てる「人間力(心)」。ビジネスの本質を理解したり、課題解決の明確なイメージを伝えたりする「スキル(技)」。そして、逃げ場のない経営の現場に身を置くことや、大きな成功・失敗などの「強烈な体験(体)」である。
「この三つの資質を順番にローテーションさせながら高めていく環境を意図的に作り出す。そうすれば、ビジネスリーダーとして成長していくことができる」。玉塚氏は力強く語り、次代を担うビジネスリーダーたちに明確なメッセージを残した。(文:栗原雅)
こうした取り組みが着実な効果を表し、業績回復で一定の成果を上げ玉塚氏は、2005年8月にファーストリテイリング社長の座を退いた。
急成長と再生を肌身で感じたファーストリテイリングでの7年間で、玉塚氏は経営への思いをさらに強固にした。特に玉塚氏が“偉大なアントレプレナー”柳井氏から受けた影響は大きく、「規模は小さくてもいいので、自分で経営者になりたいと思うようになった」のだという。「ユニクロで業績を回復させたときのプロセスが忘れられなかった」こともあり、退職して2カ月後には企業再生とスタートアップ、事業継承を手がける新会社を設立。「再生・再活性化・成長」の意を込めて、社名はリヴァンプとした。
リヴァンプの最大の特徴は、事業の当事者として、経営に参画すること。執行責任者として顧客企業の経営に参画すると共に、「経営責任を負い逃げ場をなくすため」(玉塚氏)、資本参加もする。そしてリヴァンプでは、企業がおかれている局面に応じて経営のプロフェッショナルや業界の識者、改革意識が高いプロパー社員、外部コンサルタントなどで構成する最強チームを編成して経営に臨む。「雇われ経営者単独では、孤立するリスクや経験や人的リソースが不足する可能性が大きい。コンサルタントだけではリーダーシップや現場の理解に限界がある。従来型の投資ファンドは、企業ではなく投資家のために働きがちになる。こうした課題を克服するには一人ひとりが考えて動けるチームを組むのが良い」と、考えてのことだ。
幾つもの転機を経てプロ経営者として起業した玉塚氏は今、ビジネスリーダーに求められる資質を、三つ提示している。それは、決してあきらめずに事を成し遂げようとする意思の強さや、自身に負かされた任務に対する責任感を持てる「人間力(心)」。ビジネスの本質を理解したり、課題解決の明確なイメージを伝えたりする「スキル(技)」。そして、逃げ場のない経営の現場に身を置くことや、大きな成功・失敗などの「強烈な体験(体)」である。
「この三つの資質を順番にローテーションさせながら高めていく環境を意図的に作り出す。そうすれば、ビジネスリーダーとして成長していくことができる」。玉塚氏は力強く語り、次代を担うビジネスリーダーたちに明確なメッセージを残した。(文:栗原雅)




