『現代語訳 学問のすすめ』―福沢諭吉の名著は実は「最高のビジネス書」だった! 

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グロービス経営大学院の卒業生であるわたくし河野英太郎は、このたび4年ぶりの新刊『現代語訳 学問のすすめ』(SBクリエイティブ)を出版しました。なぜ諭吉の『学問のすすめ』を訳そうと思ったのか。そこに込めた考えを今回、“自身で書評を書く”という新しい形で発信したいと思います。

『学問のすすめ』も著者である福澤諭吉その人も、日本のビジネスパーソンの中で知らない人はいない、と断言できるほど著名です。しかし、この本を実際に読んだ人はそれほど多くないのではないでしょうか。

これはあまりにも有名な「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」という冒頭の言葉の持つパワーゆえ、政治や哲学の要素が前面に出て、世の多くのビジネスパーソンには「自分とは直接関係のない本」のカテゴリーに位置付けられてしまっているのが原因の一つだと思います。私自身も以前は同じように思っていました。

しかし、あるきっかけで原書に加え何冊か出ている現代語訳を含めて複数バージョンを読む経験をしたところ、なんとその内容は日々の仕事でそのまま使える「仕事術の実用書」だったことを知りました。

例えば
「チャンスは平等。学びを継続してスキルを備えることでキャリアが開ける」
「文句ばかり言ってないで行動せよ」
「ビジネス上の意思決定は、情に流されずロジカルに行うべき」
「『いいから黙って言うことを聞け』という関係は社会では成立しない」
「男が女より偉いなんて、ちゃんちゃらおかしい。腕力以外は平等だ」
「計画は甘くなりがち。定期的に進捗管理をしなければならない」
「イノベーションは現状に疑問をもつことから始まる」
「信用こそが財産」
といったメッセージが、身近な例をたくさん用いながら書いてあるのです。

「140年経っているのに、なんという新しさ!」と思うと同時に、技術の進歩や環境の変化は著しいというけれど、人間の営みの深いところは当時も今も同じかもしれないな、とも感じました。

少し調べてみたら、『学問のすすめ』は一説には当時の日本の人口の10人に1人が買った大ヒットベストセラーだったらしく(今で考えれば1000万部!)、そこまで広がった一因として当時としてはとても平易な言葉で書いてあったことがわかりました。それとともに今を生きるビジネスパーソンこそ、この本を手に取るべきだと強く感じました。

一方で、情報の洪水に溺れ、落ち着いて書籍に向かうことが難しくなった現代のビジネスパーソンは、原書はもとよりこれまでに出版された「現代語訳」を手に取る余裕もなかったと思います。これは同じく現場にいるビジネスパーソンとしてよくわかります。ならば、自分が原文の雰囲気を損なうことなく、より平易なわかりやすい表現で再現することで世に出してみたい、という気持ちが大きくなっていったのです。

それ以降数年間、底本として参照した『岩波文庫 学問のすゝめ』は常に私のカバンの中にありました。海外渡航時にさえも肌身離さず持ち歩いたのでボロボロです。この数年間は、福澤諭吉という偉人の思いに近づこう近づこうとした日々でした。

1行あたり2度3度と辞書を引いて、福澤諭吉の言わんとする意味を理解した上で、「です・ます調」「やまと言葉」、時には「イラスト」を駆使してより平易な表現を心がけました。同時に、今のビジネスの現場に置き換えたらこういうことだろう、という解説も加えました。これは文字通り、明治の偉人の言葉を現代に蘇らせる作業でした。

福澤諭吉が140年の隔たりを超えて自分に乗り移った、なんておこがましいことは言いませんが、もし偉大な先人がスマホ片手に現代に現れたらこういう表現をしたのではないかな、と思い浮かべながら文章を作っていきました。

過去に原書を読んだことがある方や、読んでみたいけれど難しい文章を読むには時間がないと思っていた方はもちろん、『学問のすすめ』には縁はないと思っていた方も、ぜひ一度手に取って福澤諭吉の世界に触れてみてください。ご自身の中で何かが変わり、明日からの仕事が変わるはずです。そして感じるものがあったらぜひ、周りの方にも諭吉の志を広めていただきたく、お力貸していただけたらと思います。
 


『現代語訳 学問のすすめ』
福沢 諭吉  (著)、 河野 英太郎 (翻訳)
SBクリエイティブ 
1500円(税込1620円)

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