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技術・努力・チーム力 五輪で見た日本の長所

投稿日:2016/08/31更新日:2019/04/09

日本中、世界中を感動の渦に巻き込んだリオデジャネイロ五輪が閉会した。日本が獲得した金メダル数12個は世界6位で、メダル総数41個は過去最多だ。閉会式では安倍晋三首相がマリオにふんして登場するなど、日本が存在感を示す意義ある大会になった。

高さ・パワー・スピードで世界に劣ることが多い日本選手が五輪で活躍できた要因を考えてみた。次の3つが考えられる。技術力の高さ、チームワークのよさ、そして努力・練習量からくる粘り強さだ。

例えば陸上男子400メートルリレーは、日本選手の誰ひとりとして100メートルで9秒台を出していないし、決勝にも残っていない。それでもあのウサイン・ボルト選手を擁するジャマイカに次ぐ銀メダルを獲得した。アンダーハンドパスという、他国と全く違うバトンパス技術を使うとともに、絶え間ない練習を通して生まれてきたチームワークで勝てた面が大きい。

女子レスリングでは、膨大な練習量から来る粘りにより終了間際で逆転し、3選手が同日に金メダルを獲得するという劇的な日をつくった。水泳においてもメダルを取ったのは男子400メートル個人メドレー、男子800メートルリレー、女子200メートル平泳ぎ、男子200メートルバタフライなど、粘りや技術が生かせる分野だ。体操の男子団体・個人総合も技術と粘りによる逆転の勝利だ。

技術、チームワーク、努力がもたらす粘りは日本の強さの源泉だ。これはスポーツに限らず、ビジネスでも当てはまる。日本は高度なテクノロジーや職人的な技能が要求される分野が強い。和を重んじチーム力が生きる分野も得意だ。さらにはQC(品質管理)活動に代表される、努力の積み重ねでも世界で優位に立つ。

経済同友会で2008年に「新・日本流経営の創造」というテーマで研究したことがある。日本の強みも弱みも、歴史や地理的要因によってもたらされたと明快に分析していた。島国で農耕民族、ほぼ単一の民族で構成し、地震や台風、火山などの厳しい自然災害に直面する。このような日本的風土が、技術力の高さ、チーム運営力、粘り強く努力し絶え間ない改善・改良を続けるという強みにつながっているという。

半面、長所は短所にもなる。戦略を持って戦う力は弱い。戦う必要性があまりなかったからだ。あうんの呼吸が重んじられているため、コミュニケーション能力も相対的に劣る。他国との折衝における交渉力も日本の弱点と言わざるを得ない。

だが、今回のリオ五輪では変化の兆しが垣間見えた。陸上の50キロ競歩だ。日本の荒井広宙選手が3位でゴールしたにもかかわらず、カナダから「妨害行為があった」と指摘を受け、失格の裁定が下った。日本側はひるまなかった。理詰めで抗議し、違反がないと主張。日本側の言い分が認められ、失格の裁定は覆され、銅メダル獲得につながった。選手だけでなく、フロント、コーチ、あるいは協会も世界と戦っていることを象徴していた。

かつてスキーのジャンプ種目で日本に不利なルール改正が行われ続け、日本は黙って受け入れざるを得なかった。その頃に比べると日本も少しずつ弱さを克服していると感じた。

日本が苦手としている戦略、コミュニケーション、交渉を今後強化しながら、さらにこれまで培ってきた強みである技術、チームワーク、努力からくる粘りをさらに磨いていきたい。スポーツでも経営でも、はたまたその他の分野でも、日本が世界でますます存在感を示すことができたらとても光栄だ。

五輪に続き、9月7日にパラリンピックが開幕する。日本選手団を精いっぱい応援したい。そしてその次はいよいよ2020年の東京五輪・パラリンピックだ。東京都民として、日本人として大いに盛り上げていきたい。

※この記事は日経産業新聞で2016年8月26日に掲載されたものです。
日本経済新聞社の許諾の元、転載しています。

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