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オプションの機能と具体例: 不確実性と戦え

投稿日:2016/08/27更新日:2021/11/24

『グロービスMBAファイナンス』から「オプションの機能と具体例」を紹介します。

NPVによる投資評価は洗練された手法ではあるものの、「計画が予定通りにいく」ということを大前提としている点に弱点がある。実際のビジネスではそのようなことはなく、状況に応じて追加投資を止めたり、逆にさらに投資を増やすということもあるだろう。一般に、そうした戦略オプションをたくさん持っている方がプロジェクトの価値は上がることが知られている。不確実性の高いビジネスになればなるほどその傾向は強い。オプションの意義やその価値を理解することは、不確実性の高い時代のビジネスリーダーの必須要件となりつつあるのである。

ところで、オプションの意義や経済価値を求める基本的な考え方は、プロジェクトのオプションも金融商品のオプションも同じである。そこで、まずは金融商品としてのオプションの機能を理解することが、プロジェクトのオプションの価値を理解する早道となるのである。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

オプションの機能と具体例

オプションの具体例を説明する前に、ますオプションの基本用語を押さえておこう。

●原資産……派生元の証券や商品(例えば、A社の株式)
●行使期間……オプションを行使できる期間(例えば、1年間)
●満期日……行使期間の最終日(例えば、1年後の最終日)
●行使価格……あらかじめ決められた、オプションを行使する価格(例えば、100円)
●プット……売る権利
●コール……買う権利

それでは、実際にオプションがどのように機能するかを簡単な数値例を使って説明しよう。

A社の現在の株価は100円である。1年後にA社の株価は120円に値上がりするか、80円に値下がりするか、どちらかだとする(どちらになるかはわからない)。現在A社の株を持っていて、値下がりのリスクをヘッジしたいあなたは、行使価格100円、行使期間1年のプットオプションを買う。プットオプションというのは売る権利のことである。これによってあなたは、1年後に100円でA社の株を売る権利を手に入れることになる。

1年後の満期日におけるあなたのアクションは次のようになる。

株価が120円になるということは、A社の株は市場で120円で売れるということなので、A社の株を100円で売れる権利であるプットオプションの価値はない。その場合は、オプションを行使する意味がない。一方、株価が80円になると、A社の株を100円で売れる権利は、20円の価値を持つ。なぜならば、市場でA社株を80円で買って、プットオプションを行使すれば100円で売ることができるからだ。

最終的な結果は次のようになる。A社の株価が120円になった場合は、保有している株式からのリターンで20円の手取りとなる。一方、株価が80円になった場合は、株式で20円の損失が発生するが、オプションを行使することで20円を手に入れることができるので、合計するとゼロとなる。このようにプットオプションによって保有している株式の値下がりというリスクをヘッジすることが可能になる。

当然のことながら、このようなリスクヘッジがタダでできるわけはない。リスクヘッジができることの対価として、オプションには値段が付いている。それをオプション価格、あるいはオプションプレミアムと呼んでいる。この例から、オプションとは保険のようなものだということがわかるだろう。

同じケースで100円のプットオプションの代わりに、100円のコールオプション、つまりA社株を100円で買う権利について考えてみよう。その場合、結果は次のようになる。


株価が120円になると、100円で買えるという権利を行使してA社株を100円で買い、市場で120円で売却して20円のリターンを得ることができる。保有しているA社株の価値も20円上がるので、合計で40円のリターンが手に入る。逆に株価が80円になると、100円で買う権利は価値がないので、コールオプションは行使しない。保有しているA社株の価値が20円下がるので、全体として20円の損となる。この場合、コールオプションにリスクヘッジの効果はない。逆にリターンのレバレッジを効かすことになる。

オプションのペイオフダイアグラム

オプションを理解するうえで役に立つのが、オプションのペイオフダイアグラム(Payoff Diagram)と呼ばれる図である。これは原資産(ここでは株式とする)の価格変動に伴うオプションのペイオフ(手取り)を図に表したものである。

先ほどの行使価格が100円のオプションのケースを使って、プットとコールのペイオフラインについて説明しよう。プットオプションの場合、株価が0円から100円の間に100円で売る権利から得られる手取りは、「100円-株価=手取り」となる。株価が100円を超えるとオプションを行使する意味がなくなるので、手取りはゼロとなる。

コールオプションの場合、株価が100円以下の場合は、100円で買う権利は意味がないのでその価値はゼロだが、100円を超えると、100円で買う権利から得られる手取りは、「株価-100円=手取り」となる。これを図で表すと下図のようになる。

オプションの手取りを図で把握することは、オプションの本質的理解に直結するので、非常に重要である。オプションの議論を深めるに当たっては、常にこの図が基本となる。


プットオプションの買い手がいるということは、同時に売り手がいるということである。プットの売り手は、買い手がオプションを行使した場合は、それに応じる義務がある。先ほどの例で言えば、株価が80円に下がると買い手がプットオプションを行使するので、売り手は買い手から100円で株を買い取らなければならない。買い取った株式を市場で売ると、80円-100円=▲20円の損失が出ることになる。したがって、オプションの売り手のペイオフラインはちょうど買い手と正反対の形状になる。当然のことながら、オプションの売り手は値段を付けてオプションを売らないとやっていけない。したがって、オプションの売り手の実際のリターンのペイオフを表現すると、点線のようになる。実線と点線のギャップがオプションの価格である。コールも同様である。

(本項担当執筆者: グロービス・エグゼクティブ・スクール講師 山本和隆)

次回は、『グロービスMBAアカウンティング』から「財務諸表」を紹介します。

 

『[新版]グロービスMBAファイナンス』 
グロービス経営大学院 編著
ダイヤモンド社
2,800円(税込3,024円)

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