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ビジネス書で涙を流したこと、ありますか?――『ピクサー流 創造するちから』

投稿日:2016/07/23更新日:2019/04/09

「トイ・ストーリー」「モンスターズ・インク」「ファインディング・ニモ」「カーズ」・・・。子供が、そして大人も大好きなアニメーションを数多く生み出してきた、ピクサー・アニメーション・スタジオ(以下、ピクサー)。このピクサーの共同創業者であり、現在はディズニー・アニメーションの社長も兼務するエド・キャットムル(以下、キャットムル)が、いかにしてこれらの人気アニメーションが創り出されたのか、余すことなく語った本をご紹介したい。お勧めする理由は2つある。1つはクリエイティビティを引き出すための学びが深いから。もう1つは泣けるからである。

まず1つ目の理由について。私はグロービス経営大学院で「クリエイティビティと組織マネジメント」というクラスを担当している。受講生と話していて「創造性やクリエイティビティは天才が持つもので、自分にはない」と思っている人が多いことに気付いた。もしこれが本当だとしたら、革新的な作品を生み出し続けるピクサーには、天才しかいないのだろうか。

キャットムルは、新しい作品を生み出している人がどのように行動しているのか、“創造するちから”にブレーキがかかるのはどのような場合かを、ピクサーでの苦い経験に基づき描くことで、この疑問に答えている。

創造的でない人は、より安全と思える道に進むことで無難になり、気がつけば凡庸になり、人を惹きつけないモノができ上がってしまう。

創造的な人には自信があり、その落とし穴には陥らない。その自信とは、「力を合わせればきっと方法は見つかるという自信」だ。つまり、リスクがあったとしても仲間と共に新たな方法で前に進んでいると感じるとき、人は誰でも創造的になり得るというのだ。天才である必要はない。このことは、一歩踏み出す勇気を私たち一人ひとりに与えてくれる。

では、企業という組織全体として創造するちからを継続的に持ち続け、クリエイティブで魅力的な会社であり続けるためには何が必要なのか――。この点については、巻末の「大事にしている指針」がとても参考になる。33の指針のうち私が好きな3つを紹介したい。

・信頼とは、相手が失敗しないことを信じることではなく、相手が失敗しても信じることである。
・限界を課すことで創意工夫が促進される場合もある。卓越性は、厄介な状況や、理不尽とも思える状況から生まれる。
・「素晴らしいアイディアが生まれるためには、素晴らしくない段階が必要」なことを理解しない人から新しいアイディアを守ることが、創造的な環境におけるマネジャーの仕事である。過去ではなく、未来を守ること。

さて、もう1つのお勧め理由は「泣けるから」。私は本書を読み終えた時、涙が溢れて止まらなくなった。ビジネス書を読んで泣いたのは初めて。なぜ泣くほどに心が動かされたのかというと、“創造する”という営みに純粋に向き合うリーダーとその仲間たちの情熱の物語だからだ。

何よりもドラマチックで、心が強く動かされたのはスティーブ・ジョブスとピクサーとのドラマである。そもそも、キャットムルとジョブスの出会いは、ルーカスフィルムが財政危機に陥って当時キャットムルが務めていたコンピューター部門を売却することに端を発す。1986年にその部門を買収した投資家がジョブスであった。その部門が後に「ピクサー」として独立したのだ。ジョブスは買収後も財政面で支え続け、時にはディズニーとの交渉等で大きな役割を果たした。2000年に完成したピクサーの本社ビルのデザインはジョブスが深く関わり、この建物は「スティーブズ・ムービー」と呼ばれ、社員に親しまれている…。

まさに心打つドキュメンタリー作品である。人生と人生が織りなす物語は、時に奇跡と言えるような出会いへと導かれていく。創造性は天才の専売特許ではなく、新しいものを創り出したいと欲する人たちの交わりから生まれてくるものだと改めて気付かされた時、自然と涙が溢れ落ちてきたのである。

「創造性」「クリエイティビティ」のヒントを得たい方は、ぜひ手に取ってみていただきたい。

 

『ピクサー流 創造するちから』
エド・キャットムル 著/エイミー・ワラス 著/石原薫 訳
ダイヤモンド社
1,800円(税込1,944円)
 

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