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なぜ人はお金に振り回されるのか?

投稿日:2016/07/01更新日:2019/04/09

前回、数字という世界共通言語でコミュニケーションする、お金に振り回されないための座標軸を身につける、これが会計・ファイナンスを学ぶ意味だと話しました。ではカネに「振り回されている」とはどういう状態なのでしょうか?

「ハゲタカ」映画版にその象徴的なシーンがあります。日本の名門自動車メーカー買収を目論む中国国策ファンドの「赤いハゲタカ」こと劉一華は、派遣工の守山翔をそそのかして労働争議を起こさせます。謝礼として劉は400万円の札束を渡すのですが、守山は「最初から騙すつもりだったんだろう!」とその札束を劉に投げつけます。ヒラヒラと宙を舞う一万円札・・・。劉は守山の首根っこを押さえつけ、命じます。「拾うんだ、守山。お前は、これを拾わなければいけないんだ」…。抵抗をやめた守山は、床に散らばった一万円札を拾い集めポケットに黙々とねじ込みます。

案件(ディール)を成功させるために人の横面を札束で引っぱたくファンドマネージャーも、自身の主義主張を曲げて400万円を手にできるならそうするしかないと考える派遣工も、まさに「カネに振り回されて」います。このシーンが身につまされるのは、「仕事なのだから仕方ない」「生きていくために背に腹は代えられない」という思いをしながら毎日を過ごしている人が多いからでしょう。

ファイナンス・スキルを身につけることで、このやるせない思いを少しは減らすことができると私は考えています。なぜならヒトがカネに振り回される世界の中心にある命題は、

価値を生む活動とカネが儲かる活動はなぜずれるのか

だからです。カネがカネを生むマネーゲームの世界と実直にモノづくりに汗を流す世界の所得格差、年功序列報酬制度の下にある正社員と非正規社員、既得権益を守る側と崩す側・・・。世の中の不安や不満、驕りや妬みの感情の多くは、価値創造とカネ儲けのずれに根源があるといっても過言ではありません。

そしてそのずれが起こる原因は何かとさらに突き詰めると、価値のないものに高いカネを払う人がいるから、そして価値を生んでいるのにもかかわらず「カネ儲けが目当てじゃないから」とお人よしに済ませる人がいるからに帰着します。

カネを手に入れたい欲望は誰しも持っており、これを「強欲な悪者」と押さえつける制度設計はもぐら叩きゲームに陥りがちです。不当に安く売る人と不当に高く買う人が同時に存在する限りその間で「さや抜き」ができてしまうのです。この単純作業の積み上げで“虚業”と揶揄されるウォール街の巨額報酬の大半は稼ぎ出されている。その事実に目を向けねば、いつまでたっても同じことが繰り返されるでしょう。

価値創造と金儲けが一致する社会を作るために必要なことは?

価値に応じて値付けするのが「バリュエーション」、会社の値段を株価等の形で算定するのが「企業価値算定」という作業、それを支えるのがファイナンスの知識・スキルです。

実際のところ、貴方がそれらのスキルを身に付けても、一朝一夕に「価値創造と金儲けが一致する」社会が作れるわけではありません。そのためには以下の2つの前提条件を社会全体として整える必要があります。

1. 価値を生んでいるかどうかの判断基準が共有されている
これはその社会の歴史、文化風土、政治・教育体制による面が大きく、哲学的な難問です。日本は民主主義・資本主義体制の国なので、自由な市場で多数が賛同する行為が「正しい」「良い」という価値判断のベースとなるでしょう。

2. 価値を金額で表現する方法が共有されている
この方法論としてファイナンスが位置付けられます。「カネで買えない価値がある」「なんでも金額に換算する風潮は世の中を拝金主義に走らせる」と批判的に語る人もいますが、価値を測る尺度と手法が人によりまちまちで揃っていないからこそ、安すぎる・高すぎる値段でモノが売り買いされ、結果的にその尺度を持っている人達に上手くサヤ取り機会を提供してしまうのです。

かつてホリエモンは「カネで買えないものはない」と豪語して世間のヒンシュクを買いましたが、当時彼がその発言の真意として補足した以下の言説は正論だと思います。

「お金で買えない価値があるようにみせるからこそ、既得権益であったり権力であったり、いろんなものを生んじゃうんですよ。お金以外の尺度があるとしたら、そこに参入障壁ができちゃうんですよ。バカだったからダメだとか、家柄が悪かったからダメだとか、肌の色が違うからダメだとか。それって差別じゃないですか。」

逆説的ですが、おカネに振り回されたくないと言って価値を金額に換算しフェアに取り引きするという思考を停止させることが、ますますカネの暴走を増幅してしまうのではないでしょうか。

 

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