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「成長上手な人」と「成長ベタな人」の差

投稿日:2016/03/10更新日:2019/04/09

私たちは長く働いていく中で、実にさまざまな出来事に遭遇し、いろいろな経験をしていきます。そうした過程で技術的成長や精神的成長といったものがあるわけですが、どうもそこには「成長上手な人」と「成長ベタな人」との差があるように思われます。

雑多な経験をいくつもいくつも重ねているのにあまり成長に結びつけられない人。逆に、経験の数や幅は限定されているものの、そこからぐんぐんと成長していく人。そうした個人差はいったいどこから来るのでしょう──。理由はさまざま考えられますが、本稿では私が昨今考えている「コンセプチュアル思考」のフレームで切り取ってみることにします。

雑多な事象・経験の中から本質を抜き出す「抽象」の力

コンセプチュアル思考とは、「コンセプチュアル=概念的な」という語が示すとおり、中軸は概念化の思考です。それがどんなものかイメージしていただくために、一つ簡単なワークを紹介しましょう。

〈作業1〉これまでの仕事経験のなかで、「自分が成長できたな」と思える出来事・エピソードをいくつか挙げてみましょう
〈作業2〉「成長とは何か」「成長についての解釈」を自分なりの言葉で表すとどうなるでしょう

まず、これまで遭遇してきた雑多な出来事を振り返り、自分を成長させてくれた経験を見つめなおします。そしてその経験から本質的なことを引き出して、成長とは何かを短い文言に凝縮します。この〈作業1→作業2〉の思考の流れがいわゆる「抽象化」です。ちなみに、どういった回答が出てくるかといえば次のようなものです。

このように成長の定義は人それぞれに出てきます。私はこのワークを主に20代の若手社員向けに企業内研修でやっていますが、受講者にとっては「同じ会社の同期の中でもこんなに成長のとらえ方がいろいろあるんだ」という刺激になります。自分が書き出した定義をグループで発表し共有するとき、各自は「自分のとらえ方は浅かったな」とか「あの人の表現は本質を突いているな」とかがよくわかるものです。そして社内には成長の機会がたくさんひそんでいるんだなということにも気づきます。

コンセプチュアルに考えるときの答えはこのように主観的であってよいものです。コンセプチュアル思考は、サイエンスが目指すような論理的思考と違い、ある客観的な唯一無二の解を求める思考ではないからです。しかし、そのときに客観を軽視していいかというと、そうではありません。まずは客観の高台に立って考える。そして客観を超えたところで、いかに自分独自の表現と出合っていくかという姿勢が大事です。そこでの主観は、いやおうなしに分厚さや堅固さをもったものになるでしょう。

π(パイ)の字思考プロセス

そして次の作業に移ります。

〈作業3〉作業2の定義をふまえて、「成長」を図や絵で表してみましょう


〈作業4〉成長を持続的に起こすための「行動習慣」としてどのようなものが考えられますか。3つ挙げてみましょう

作業3は概念化を深める流れです。言葉だけでなく、図的に概念を表わそうというものです。概念をビジュアル的に描くと、言葉の定義では表わしにくかった全体の構造や要素間の関係性が見えやすくなります。この作業は別の言葉で言うと「モデル化」です。

作業4はこれまでの作業をふまえて、今後の自分への行動の具体的展開です。抽象化・概念化だけで終えてしまうと、頭の中だけの観念論で閉じてしまいます。思考は具体化され実践されることが重要です。

これら一連の作業は端的に言うと次の3つの思考フローになっています。

1) 抽象化(引き抜く)

2) 概念化(とらえる)

3) 具体化(ひらく)

この流れを私は、その形から「π(パイ)の字思考プロセス」と呼んでいます。

漫然と経験を積むだけでは不十分、「観」に変えよ

このコンセプチュアルワークは、いわゆる自分の成長「観」の分厚さを試すものです。観の分厚い人というのは、豊かな経験を持ち、そこから本質的なことを引き抜き、自分の言葉やイメージで独創的に表現ができます。そしてそれをもとに具体的な行動に展開することができます。逆に、もしこのワークをやってみて、成長経験がうまく思い出せない、成長をうまく定義できない、そして行動にも落としづらい、というのであれば、おそらく成長観が弱いのでしょう。

観というのはものごとの見方・とらえ方です。観は知識や技術よりも下層にあって、自分の仕事・キャリアの“あり方”に大きく影響を及ぼします。

漫然と忙しく働いているだけでは、自分の仕事・キャリアが思うように進化/深化していかない状況に早晩突き当たるでしょう。30代以降の仕事・キャリアは、単純に知識や技術面の習得だけでは打開できない“あり方”が問われるフェーズに移ってくるからです。みずからの観を土壌として、方向軸となる志を定め、モチベーションの源泉となる意味を掘り起こし、その上で知識・能力を生かしていく。そういう太い構え方が求められるようになります。仕事には仕事観が、キャリアにはキャリア観が、事業には事業観が必要になります。組織観、人財観しかりです。

さて、冒頭に掲げた問い──「成長上手な人」と「成長ベタな人」との差はどこにあるか。それは結局、成長観をどれだけ堅固に醸成しているかどうかの差であると思います。

確かにどんな出来事でもそれを試練として乗り越えれば成長は得られます。が、漫然とそれをくぐり抜けているだけでは“モグラたたき”がうまくなるだけの上達です。それは「成長ベタな人」のすることです。「成長上手の人」は、観のもとにその試練に意味づけをしたり、あるいは成長機会を意図的につくり出したりして進んでいくことができます。

キャリア・人生においては、どのみち試練・苦労は絶えません。同じ苦労をして成長をしていくなら、観をしっかりと醸成させて、よりよい成長を引き寄せたいものです。しかし、観もまた漫然と放置しておくだけでは堅固に醸成されないものです。観をつくるために、「抽象化→概念化→具体化」というプロセスで物事をとらえていく。そうしたコンセプチュアルに思考する訓練を日ごろから意図的にやっていくことが大事です。観はそうした思考習慣の堆積物だと言っていいものですから。

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