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パネリスト:
川本裕子 早稲田大学大学院ファイナンス研究科 教授
小林りん 公益財団法人インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢設立準備財団 代表理事
坂野尚子 株式会社ノンストレス 代表取締役社長
モデレーター:
齋藤ウィリアム浩幸 Intecur, K.K. 創業者兼最高経営責任者
パネリスト:
川本裕子 早稲田大学大学院ファイナンス研究科 教授
小林りん 公益財団法人インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢設立準備財団 代表理事
坂野尚子 株式会社ノンストレス 代表取締役社長
モデレーター:
齋藤ウィリアム浩幸 Intecur, K.K. 創業者兼最高経営責任者
男女格差、日本は135カ国中88位(齋藤)
齋藤ウィリアム浩幸氏
1月末にはスイスのダボスで開催された世界経済フォーラム(以下、WEF)に出席しました。私自身の経歴とは全く関連していなかったのですが、何かのご縁でWomen's Empowermentという会議のGlobal Agenda Council(以下、GAC)のメンバーに選ばれました。世界中から集まった大変タフな女性陣とさまざまな議論を、去年から今年にかけて重ねてきました。先ほど事前の打ち合わせでご登壇者の皆様とお話をしていたのですが、日本の女性は世界の女性たちに全く負けていませんね。今日はあまり皆様のお話を邪魔しないことが私の役割だとも思います。
では議論を始める前に各種統計データを見てみましょう。例えばWEFが2011年に発表した「男女格差報告」では、日本は調査対象135カ国中98位という結果でした。これは非常に低い順位ですよね。こういったデータからも分かるように、日本の女性を取り巻くさまざまな環境は決して良くない状況にあると言えます。
私は現在ベンチャーキャピタルでいくつかの会社に出資をしており、日本のベンチャーも数多く見ています。そこで見ている限りでは、日本企業で元気なところは女性が社長をしている場合が多いということに気がつきます。
また、日本における女性の雇用率がOECD(経済協力開発機構)平均まで伸びるとGDP(国内総生産)がおよそ16%拡大するというデータもあります。女性の就業率が伸びていることでGDP伸び率が日本以上に高くなる国というのは世界に2つしかありません。ギリシアとイタリアです(会場笑)。そういった統計を見ても、やはりそのグループには入りたくないなという気がします。
少子高齢化社会でどのようにすれば女性の力をもっと活用できるのか。世界の経済状況について国際会議で議論していると、「リーマン・ブラザーズではなくて、“リーマン・シスターズ”だったら世界経済はどうなっていたか」なんていう話もよく出てきます。今日はそういった視点も交えつつフロアにいらっしゃる皆様のご意見も伺いながら、インタラクティブで力強いセッションにしていきたいと思っています。それでは川本さんからご意見を伺っていきたいと思います。まずはマクロな視点とともにコメントをお聞かせください。
女性が会社を辞めてももったいないと思わないのは、なぜ?(川本)
川本裕子氏
ウィリアムさんがお出しになった数字でも、日本は女性の活用度が135カ国のうち98位です。同レポートは「健康・長寿」「教育」「雇用機会・経済活動」「政治参加」の4項目から導き出したものですが、「健康・長寿」で見れば日本には男女差がありません。しかし「雇用機会・経済活動」が100位で「政治参加」は101位です。管理職への登用も欧米のおよそ10分の1で、さらに上場企業の役員となるとわずか1%という状態です。
学業のほうは比較的平等になってきています。女性の大学進学率は1958年頃に2%前後でしたが、バブルがはじまる1985年前後はおよそ12%、そして今は50%近くになっています。男性のほうも56%前後ですから、やはりポイントはその後なのです。つまり、企業で女性が活用されていないということが日本の問題だと私は認識しています。
別セッションで岩瀬(大輔氏:ライフネット生命保険 代表取締役副社長)さんが仰っていたのですが、日本は古いシステムをそのまま残している部分が多すぎます。政府には内閣府男女共同参画局がありますが、あまり本気度が感じられないという現状です。
横軸を年齢として労働率の推移をグラフにすると日本はM型になるとよく言われますが、結婚および出産で辞めるという日本の就業構造は欧米にはないものです。ほかの先進国にはないのですが、日本には残っている。そこには長時間労働、女性に対する理解のなさ、保育所などの未整備といった原因もあれば、働かないことを促進してしまう税金や年金の仕組みもあると思います。配偶者控除の問題も同様ですよね。何年も議論されながら全く動かないでいる。そういったことが重なって女性が大変働きにくい社会になっているというのが実態ではないでしょうか。
一方でそれが「今後は変化していく材料になるか」とよく言われるのが、1993年から家庭科が共修になったということです。家庭科の授業を中学生の頃から受けるようになったことで、スキルという面でも家事ができる男の子が増えてきました。役割意識も若干減ってきていますし、そういう部分からは変化が期待できるかなと思っています。また、日本は欧米諸国に比べると女性が参政権を得たのも20年遅いのです。イギリスやアメリカでは1925年前後でした。今後はその辺の意識も変わっていくことで状況は少し変化し得ると思います。
しかし、企業や政治では、そういった動きがむしろ今後退している感があります。現在、私は社会人大学院で教えています。学んでいる生徒の平均年令は33歳でアジアやアメリカといった地域からも学生は来ていますが、彼らもこの国の不平等さにはいつも首を傾げています。ある学生が面白いことを言っていました。日本企業は紙などのモノは一生懸命リサイクルしていますよね。ものすごくコスト意識が高い。「でも、教育した女性が会社を辞めていくことを全くもったいないと思わないのはなぜなのか」という質問を受けたことがありました。とりあえず、私からはこのようなところです。
齋藤:ありがとうございます。最近ニュースになった統計データによりますと、これからの50年で日本の人口は30%減ると言われています。しかし現在は子どもが生まれると7割の女性が会社を辞めて子育てに専念しています。また、6歳未満の子どもを育てている母親で仕事に戻る人は34%しかいません。これがスウェーデンやデンマークになると70%です。全く比較にならないほど低い状態ですね。そういったインターナショナルな状況も見据えつつ、では次にインターナショナルスクールの設立を進めていらっしゃる小林さんからご意見を伺いたいと思います。
「女性はやりたい放題生きていいんだ」と言いたい(小林)
小林りん氏
まず、私個人がどういった人生を歩んできたかというお話とともに、女性として、一児の母として、現状をどのように考えているか。次に公益財団という組織を運営している人間として何を感じているか。財団では現在100人ほど働いておりますが、ほぼ全員がボランティアで99%は女性です。3つ目ですが、私たちはこれから学校を作っていきます。リーダーシップ教育を目指す日本で初めての、そして男女共学の全寮制高校を軽井沢に作るという取り組みを進めています。今は許認可がすべて揃ったところで、2014年に開校予定という状況です。ではその学校でどのような教育を目指していくのか。この3つについて簡単にお話をさせてください。
まず個人としてですが、私は本当に「女性に生まれて良かったな」と思い続けている人生なんですね。ジェンダーギャップと言われていますが、女性としてこんなことを言って良いのか分からないのですが、「お気楽な性別に生まれてラッキー」みたいな形でして(会場笑)。とにかく好き放題の人生を歩ませていただいています。
私は高校1年で国立大学の付属高校を中退し、単身でカナダの高校に留学しました。そちらを卒業してから日本の大学に戻ってきて、20代前半は外資系の金融機関に務めました。それからベンチャーを興し、そして30歳でもう一度「教育をやりたい」と思ってアメリカの大学院に行き直したあと、国連の職員になりました。フィリピンの最貧困層で「ストリートチルドレン」と呼ばれるお子さんたちの教育に携わってきました。
そこで感じたのが、先ほどの議論にもありましたお話です。どれほど国民や民意のレベルが高くても、リーダーシップのある人間がいなければ大きな変化は生まれないのではないかという点です。焼け石に水…という言葉が適切なのかどうかは分かりませんが、そういった思いを持って現在の活動を始めたのが4年前でございます。
私個人としては本当に好きなように生きさせてもらっていると思います。岩瀬君は同級生で、彼も私も東大生としては決して普通ではないキャリアを歩んできました。彼は男性でもあんな風に自由に素敵に生きているので、女性に限ったことではないかも知れませんが、私は“リスク取り放題”の人生を過ごしてきて良かったなと思っています。ですから女性にはぜひそういったポジティブな思考で「やりたい放題生きていいんだ」と言いたい。もちろん女性も男性もないのかも知れないですが、そんなふうに考えていただけたらいいなと思っています。
2点目の公益財団についてですが、実は組織の中では2人だけがフルタイムでして、あとは全員がボランティアとして働いてくれています。「ボランティアをしたい」と言ってくださる方は本当にたくさんいらっしゃいます。実際に働いてくださっている方の10〜15倍ほどいらして、もう毎日レジュメが送られてくるような状況なのです。ほとんどの方は30〜40代の女性で、だいたい2人以上のお子さんがいらっしゃいます。しかし、職場には全く復帰できていません。ほとんどの方が高学歴なのですが、活躍の場がないと言うのです。先ほど「子育てをすると70%が辞めてしまう」というお話がありました。実際、これだけ優秀な人たちが行き場を失ったまま、それでも「何かをしたい」という思いを抱えているという現実問題があることを、私としてもひしひしと感じています。
私たちの場合はそういった方々にソーシャルセクターとして、トラディショナルではない雇用形態でご活躍していただいています。かなりフレキシブルな雇用体系、勤務体系です。今までとは違ったトラディショナルではない働き方、あるいは働く場を提供させていただくことで、そのギャップを埋めているのです。その後で再び社会というか雇用される場に戻っていけるようなルートもこれから作っていくことができたら面白いかなと、公益財団としては考えています。
そして3つ目の学校について。これは男女共学の高等学校で、ミッションとしては次世代のリーダー、フロンティアを創造できる人材を育てていくことを掲げています。新しい時代の新しいリーダー、新しい価値観をリードできる人を育てたい。「なぜ男子校ではないのか」と仰る人も中にはいますが、もうそういった時代ではないと私たちは考えています。
私たちの学校では性差だけでなく、国籍の違いによる格差、社会的な格差、あるいは宗教の格差を超えることも含めてダイバーシティというものを捉えています。学校名に「インターナショナル」と入れているのは、生徒さんの半分以上が海外から来ることを想定しているからです。奨学金についても同様の考え方をベースにしています。最低でも5人のうち1人には奨学金を出して、本当の意味でのダイバーシティを実現していきたいと思っています。
「女性だからどう」とか「男性だからこう」という発想ではなく、本当の意味でダイバーシティを実現させていきたい。その中で「違う」ということを自然に理解できて、自分の強みが何なのかということも強烈に認識できる人が育ってくれたらと思います。その中の1つに女性というファクターが入っている状態です。生徒さんたちにはそういった価値観や認識を持った人材に育っていただきたいと感じています。
齋藤 :ありがとうございました。すごくチャレンジングで力強い目標をご紹介いただいたと思います。先ほどもWEFの「男女格差報告」で少しご紹介した通り、日本における女性経営者の割合はつい最近まで10%に上がっていたのですが、最新データでは8%にまで落ちています。逆行してしまっているのです。これがOECD平均ですと倍以上の20%ですし、韓国などでは4〜5倍になっています。WEFのレポートを見ていると、そういったデータと経済の活力はかなり連動しているのではないかということを私自身は感じていました。
坂野さんの会社ではほとんどが女性の従業員であると伺っています。少子化が進んできた中で雇用とのバランスを考えるのは非常に難しいことだと思うのですが、いかがでしょうか。




