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パネリスト:
河北博文 社会医療法人河北医療財団 理事長
古川俊治 参議院議員
三谷宏幸 ノバルティスファーマ株式会社 代表取締役社長兼 CEO
モデレーター:
山本雄士 株式会社ミナケア 代表取締役社長
パネリスト:
河北博文 社会医療法人河北医療財団 理事長
古川俊治 参議院議員
三谷宏幸 ノバルティスファーマ株式会社 代表取締役社長兼 CEO
モデレーター:
山本雄士 株式会社ミナケア 代表取締役社長
日本の医療制度の雲行きが怪しい(山本)
山本雄士氏
このセッションに参加くださっている方々は、医療問題についていろいろご存知だと思いますが、超高齢社会や医師不足、財源不足あるいは医療従事者の労働環境が悪い、患者側からするとなかなか薬にアクセスできないなど、日本の医療制度は将来的に雲行きが怪しくなっています。
高齢化率がどんどん上がり、30年もすると4割を超えてくるだろうと言われています。一方、生涯にかかる医療費は1人当たり2200万円ぐらいだと推計されていますが、その半分以上が70歳を超えてから使われる。つまり70歳以上の人口、あるいは65歳以上の人口が4割を超えてくるような時代に、医療費の社会負担がどれだけ多くなるのか、というのが非常に大きな課題としてあります。
また、ある薬が世界のどこかで使われるようになってから日本に届くまでのタイムラグは、平均して4.7年と言われています。世界で売れ筋の薬100個のうち日本で使えないのは20もあるというような状況で、本当に日本の医療技術は言われるほど先端なのか、という疑問も出てくるわけです。
さらには、糖尿病が重症なのに1度も病院にかかっていない方が半数ぐらいいるというデータもあります。医療費をいくらかけても一向に症状が良くならない糖尿病の方がたくさんいるというデータもあります。こういう方々が仮に人工透析を受けることになった場合、1年間の医療費は500万円から600万円と言われています。いま糖尿病予備軍を含めて、2000万人を超えており、国民の6人に1人が糖尿病になるという時代に、これだけ多くの方がまだまともな治療を受けていないという状況です。
私がボストンにいた頃の師匠のマイケル・ポーターは、「質の高い医療というのは結果的に安く済む」と言っていますが、こういう日本の現状を知って、彼は“Wasting Money by Saving Money”、つまり「節約するつもりで、実は無駄遣いしている」「目の前のコストを下げようとしているつもりで、将来コストがどんどん増大している」とおっしゃっています。
でも、ここはG1サミットなので、「批判よりも提案を」ということで、我々は将来に向けてどういう明るい医療、あるいは経済成長につながるような医療をつくっていかなければいけないのか、そういったお話を今日は3人の先生にお聞きします。
私が流行のドラッカーの言葉の中で好きなフレーズに、「問題設定を間違えているのにもかかわらず、正しそうな答えを出してしまうことが一番厄介である」というものがあります。例えば財源の問題。これをクリアできれば医療は良くなるのかというと、そんなことはないわけです。お金がいくらあってもダメなものはダメ。そうすると本質的な医療の問題とは何か。そういった問題の深堀り、あるいは課題を明確化した上で、それに対してどういう手を打つべきなのかということがいくらかでも見えてくれば、意義のあるセッションになると思います。
医療業界の大きな特徴は、医療を提供する人、サービスを受ける人、お金を払う人が、全部バラバラだということです。多くの産業では、サービスを受ける側と払う側がだいたいの場合は同一ですが、医療に関して言えば支払う側は患者ではなく保険者になっています。
もう1つの特徴は、医療技術の研究開発のペースが非常に速いことです。新しい技術が生まれるのは良いのですが、裏を返せば“不確実な技術”がどんどん市場に投入されていくのです。これは医療問題を複雑にしている要因の1つです。
開発側である三谷先生からは研究開発がどうあるべきか。医療の提供側である河北先生からは医療提供の現場、あるいは医療提供側の問題点にどういうものがあるのか。そして古川先生からは公的皆保険が整備された日本でコスト負担をどうすべきなのか。そんな話をしていただきたいと思います。まずは河北先生からお願いしてよろしいでしょうか。
医療とはいったい何か?(河北)
河北博文氏
医療とは何でしょうか。私はWhat思考をしています。How思考ではありません。Howはどうすればいいかということですが、Whatでものを考えるというのは、物事の本質を捉えるということです。医療とはいったい何でしょうか。
1950〜60年代に武見太郎という日本医師会長がいました。武見先生の医療の定義は、「医学の社会的適用」でした。それは間違っていないし、本当に武見先生らしいと思います。当時の医療の中心は誰であったか。それは医者です。中心にいる医者の立場で医療を考えると、自分が学んだ医学を社会に適用してやるということが定義だったわけです。
今、医療の中心は患者です。誰でもそう言うと思います。患者を中心にして医療を再定義してみてください。自分の健康を支えてくれるのが医療です。では健康とは何ですか。WHOの定義では「身体的、精神的、社会的に調和が取れている」ということです。
武見先生の時代と今の時代とで言葉の定義が違うというお話をしましたが、社会の状態によっても言葉の定義は変わります。政策の軸も変わります。どこに座標軸を持っているかが大切で、僕の座標軸は「Fair」「Reasonable」「Simple」です。
医療制度を考えるときに、医療保険制度と医療提供体制の2つに大別することができます。医療保険制度というのは所得再分配であり、財源と分配の問題です。昨年、2011年は1961年に国民皆保険制度ができてから50周年でした。9月1日に武見敬三さんが、イギリスの有名な医学雑誌の『ランセット』で日本特集を組んでもらい、その中に日本の国民皆保険制度の達成50年がありました。1961年というのは、1945年からたかだか16年しか経っていなかった。あの焼け野原の敗戦の時から16年しか経たない時に国民皆保険制度を達成した。これは本当に驚くべき成果だったと思います。
TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)などの議論を進めていく中で、この国民皆保険制度というものをどのようにしてほかの国に広げていくのかという視点があると思います。これからすべての国が高齢化社会を迎えていきます。昨年10月末に地球上の人口が70億人になりました。一人っ子政策を取った中国は、日本よりも速いスピードで高齢化していきます。そういった成熟社会の中で医療のあり方を考え、国民皆保険制度をどのように普及させていくのか。これは、我が国から世界に訴えていく大きなポイントになるのではないかと思います。
山本:ありがとうございます。続いて三谷さん、お願いします。




