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パネリスト:
木内博一 農事組合法人和郷園 代表理事
近藤洋介 衆議院議員 民主党国民運動委員長 衆議院経済産業委員会理事・震災復興特別委員会理事
林芳正 参議院議員
早藤昌浩 世界貿易機関(WTO) 貿易政策検討部参事官
モデレーター:
竹中平蔵 慶應義塾大学 教授 グローバルセキュリティ研究所 所長
パネリスト:
木内博一 農事組合法人和郷園 代表理事
近藤洋介 衆議院議員 民主党国民運動委員長 衆議院経済産業委員会理事・震災復興特別委員会理事
林芳正 参議院議員
早藤昌浩 世界貿易機関(WTO) 貿易政策検討部参事官
モデレーター:
竹中平蔵 慶應義塾大学 教授 グローバルセキュリティ研究所 所長
TPP交渉への参加に反対という方・・・いらっしゃらない?(竹中)
竹中平蔵氏
ちなみに冒頭で皆さまにお伺いしたいことがあります。どうぞ挙手でお答えください。昨年はTPP交渉に参加するか否かで随分揉めましたが、TPP交渉への参加に反対だったという方はいらっしゃいますか?(会場挙手なし) いらっしゃらない? 全員賛成? これは…、サンプルとして非常に偏った方々がお集まりになっているという
いずれにせよ本セッションでは参加交渉に賛成の方が多いということを前提にして議論を進めて参りたいと思います。議論はインタラクティブに進めたいと思っております。もし途中で「どうしてもちょっと意見を言っておきたい」という方がいらっしゃいましたらパネル討論の途中でも結構です。どうぞ手を挙げて強烈にアピールしてください。
さて、どなたからお話しいただこうかと思っていたのですが、私としてはまずファクトを明確に頭へ入れたほうが良いかなと思っております。ですから今日は最初に経済産業省の政務官として色々な交渉ごとに当たってこられた近藤さんからお話しいただきましょう。今までどういったことをしてきたのか、そして今後どのようなスケジュールで進めていくのか。そういったことを中心に事実関係のご説明からお願いしてよろしいでしょうか。
近藤洋介氏(以下、敬称略):はい。近藤洋介と申します。今日は交渉に前向きな方がたくさんいらっしゃるということでした。私は東北の国会議員でして地元は山形でございますが、地元に帰ると様相が一変するものですから(会場笑)、なにかこう、今日はホームに帰ってきた感じが致します(笑)。まず私自身の立場をはっきりさせていただきますと、私は「TPP交渉に参加すべし」と申しあげております。ただもちろん、議論のほうはしっかりやっていきたいと思っております。
まずファクトについてご説明致します。間違ってはいけないのでメモを用意しなければと思っているのですが、ご承知の通り、野田総理はAPEC首脳会議で交渉参加のための情報収集といったところからさらに一歩踏み込んで、「用意あり」という表明をした訳であります。それで現在、日本は各国と事前協議をしておりますが、そのなかで米国を除き、ほとんどの国が現時点で日本の参加を歓迎する流れになっている状況ですね。
唯一、ざっくばらんに言えばやはり「米国との事前協議が…」ということですね。先日、2回目の協議を終えたと事務方からは聞いておりますが、ご存知の通り米国は議会が強い国であります。米政府はまず日本と交渉をはじめたいとの旨を議会側に通告しなければなりません。そして通告から90日を経て初めて日本との交渉がスタートするという段取りであります。
では通告がいつになるのかというお話ですが、これがなかなか分からない訳であります。3月に政府が通告をしてくれるのか、あるいは4月になるのか。いずれにせよ、今まではなんとなく半分ぐらい手を挙げていた日本政府は、そのときにいよいよ「はい」と大きく手を挙げる格好になります。政府が議会に通告をした時点でですね。そしてそこから90日ですから、実際の交渉は6月から7月にはじまるのではないかと。現在はそういった局面です。
ここでひとつ認識しなければいけないのは、議会への通告から90日を経て交渉がはじまるという点です。オバマ大統領はTPPを7月にまとめたいと言っておりますが、果たしてそれまでにまとめきれるのかどうか。大統領選挙が8月に本格化しますので、その辺も考慮に入れつつ現状では7月妥結という形で各国とも進んでいる状態ではあります。しかし実際には若干、場合によっては1年ほど遅れる事態も想像されるというのが正直なところだろうと私は思っております。
竹中:タイムスケジュールのご説明、ありがとうございまし。現状では6月あるいは7月頃ということですね。今日の朝、平将明(衆議院議員)さんがお話ししていらした見立てによりますと、5月27日が総選挙の投票日だそうでありますので、その頃に重なるかもしれないといったところでしょうか。ありがとうございました。では次にTPPの世界貿易における位置づけのような部分について、ファクトとともに早藤さんからご説明いただきたいと思います。よろしくお願い致します。
早藤昌浩氏(以下、敬称略):皆さまこんにちは。スイスから参りました世界貿易機関(WTO)の早藤と申します。私は職業柄、多角的な貿易自由化を進めるということを念頭に置いて仕事をしておりますので、今日もその観点でお話ししたいと思っております。会場にお集まりの方々は皆さまTPPに賛成ということですが、私自身はTPPに賛成でも反対でもないことをまずお断りしておきます。
その上で、まずは、色々と議論されているそのTPPと関連して、私としても少しファクトの整理をしてみました。ですからそちらからご紹介させてください。日本の輸出全体に占めるTPP参加予定各国向けの輸出比率は、2009年の統計でおよそ27%となっております。EU向けは12.5%、中国向けは18.9%ですね。EU向けと中国向けの合計が31.4%ですからTPP参加予定各国向けのほうが少ないことになります。輸入のほうはTPPのほうが20%、EUが10.7%、そして中国が22.2%。EU向けと中国向けを足すと32.9%になりまして、TPP参加予定各国向けはその半分ぐらいと、さらに割合は小さくなります。
従いまして、TPPの日本の貿易に与える影響というものが世間で騒がれているほど大きいのかなという疑問がまず1点ございます。ご承知の通り世界では現在、世界的不況の中にあって保護主義圧力が高まっています。ですからぜひ世界の大国である日本にはより一層開かれた貿易システム形成に関してリーダーシップを発揮していただきたいと思っております。他のWTOメンバーも日本に大きな期待を寄せていると、毎日の仕事を通じて私は感じております。
TPPについてもうひとつ疑問があるとすれば、何故TPPをなさろうとしているのか、実は私にはよく分からないんですね。メリットとデメリットがあると思います。ただ、日本国内の論調を聞いていますとTPPで農業が打撃を受けるですとか、医療制度に影響があるですとか、ネガティブな話ばかりが耳に入ってきます。しかし交渉ごとは本来ギブ&テイクですから、こちらから獲得したいものもある筈なんですよね。それが何かがあまりはっきりしないようなので、一体どんなメリットを考えておられるのか、今日はそういったこともお聞き出来ればありがたいと思っております。よろしくお願い致します。
竹中:ありがとうございます。メリットとデメリットの議論はのちほどまとめて、農業のお話とも絡めつつ進めていきましょう。まず今のお話を少しまとめますと、TPPあるいは自由貿易促進のために日本はもっとリーダーシップを発揮すべきだという大前提があるということですね。ただし貿易全体で見るとTPPのカバレッジは驚くほど大きいという訳でもないと。つまり良い意味でも悪い意味でも、おばけではない。一連のTPP議論では“TPPおばけ”なる表現も出てきましたが、そうではなくもっとクールに見ようといったご指摘でもあったと思います。ありがとうございました。
さて、これまであちこちで交わされてきたTPPの議論を振り返ってみますと、やはり農業に大きな焦点が当てられておりました。ですから農業をどうすべきかについてはあとで改めて深く議論するとしまして、これまでの議論を木内さんとしてはどのようにご覧になっておりましたでしょうか。
プラカードを持って反対しているのは農協の職員(木内)
木内博一氏
一方、農業従事者のなかでもご年配の方々は賛成か反対か以前に中身をよくご存知ないというのが、実は一番近い表現ではないかなと。とりあえず農協と一連託生になっていて「農協が反対しているから我々も郷に従う」といったような、そんな流れになっているというのが私の実感です。
竹中:木内さんのお話を伺いながら「それにしても分かりやすい説明だな」と。その通りなんでしょうね。そこでですね、林さん。農業従事者の方々でも若い人々はほとんど賛成というお話でしたが、私たちがひとつ驚いたのは、これまで政権与党を長年担ってきた自民党の大部分が反対をしていたという点です。その経緯と、そして交渉がはじまっている現状を、自民党としてどのように見ていらっしゃるのか。もしかしたら自民党の考えと林さんの考えも細かいところではまた違うかもしれませんが、ぜひお聞かせいただけないでしょうか。
林芳正氏(以下、敬称略):林と申します。よろしくお願い致します。去年開催されたAPEC首脳会議の場でしたでしょうか、野田総理のお話は当時、「交渉に参加する」ですとか「参加を検討する」ですとか色々とブレていました。我々としてはそのなかで、「APEC首脳会議の時点で参加を表明するのは反対です」というのが正確なポジションでした。
ただ、TPPそのものについてマルかバツかというお話はしておりません。何故なら当時、当然ながらTPPの条文をすべて持っている人は世の中にほとんどいなかった。それでどうなるのかまだ分からなかったというのが、ひとつあります。国会というところは最終的に条約を批准する場所ですから、その時点で権限を持つことになります。それまでは、いくつか理由から「やはりこの時点で表明するのは早いのではないか」と。最大の理由はやはり国民への説明が不十分であるということだったと認識しております。
TPPについて、我が党では議員ならば誰でも参加出来る平場という形で議論していました。ただ、これは全員に出席義務がある訳ではないので強い意見を持っている人がたくさん来るといった形になりやすいんですね。郵政民営化の際は、まさにそれで反対派などが一気に集まってくるなんていうこともありました。今回はそういうことにあまりならなかったのですが、これはあくまで最初の段階であり、まだ何も決まっていなかったからです。とりまとめ役をしていた私の印象ですと、だいたい7対3前後でしたでしょうか。7が慎重論のような意見でした。それが事実関係です。
そして現在ですが、我々は与党として政府のなかにいる訳ではありません。ですから野党として批准前に出来ることは「こういうものは取ってください」あるいは「こういうものは絶対に守ってください」といった条件などを政府にはっきり示すことです。大事なのは我々がもし政権交代を成したときに、それらが後出しとならないようにすること。「あのとき自民党はこういう風に言っていた」ということが選挙公約になり、それで政権交代をしたのだからその通りにしていくという、その整合性をとることです。そういった二つの意味で条件を詰めておく必要があるだろうと考えております。
で、ここから先は私の個人的見解になりますが、たとえばISD(国家対投資家の紛争処理)条項については主権に関わることでもあるので外したほうが良いという考え方はたしかにあると思います。関税をすべて外すというのもかなり問題があるのではないのかと。また、現在議論されている事前条件のなかにはたとえば自動車が入っておりますよね。この分野では「数値目標を入れろ」なんていう、もう自由貿易とまったく逆のことを言われている訳です。そういったことはやはり受けてはいけないのだろうなと。このほか、食品安全基準も重要です。現時点ではそういったことを色々と検討をしている段階です。
一方、まさに先ほど早藤さんが仰ったことなのですが、現状で「これだけは取ってね」というのがあまりないんです、実は。たとえばライトトラック区分の関税25%が撤廃されたら、日本企業は米国内の生産機能を国内に戻して輸出していく体制になるのかというと、そういうことには恐らくならないだろうなと思います。では一体、ひとつや二つ何を取りたいのかという話が見えてこない。たしかにそういう面は、詰めをやっている現在も感じておる次第です。
それからもうひとつ個人的な見解があります。ヨーロッパのたとえばエコノミストですとか、そういった方々と話をしていてると言われることがあるんですね。彼らが遠くから見ているせいか、「アメリカと一緒になって中国を追いやろうとするのは良くない」といった見解を耳にする機会があります。意外に思ったのですが、よく言われます。
これについては本来であれば早藤さんがいらっしゃるWTOがご本家な訳ですが、そもそもWTOあるいはGATTが誕生した経緯まで遡って考えてみる必要もあろうかと思います。ブロック経済が第ニ次大戦の背景になった歴史への反省が現在のWTOにも繋がっていた訳ですね。ですからTPPも本当にブロック化していかないのか。この点についても我々はよく考えるべきだろうと思っております。
それともう1点。これはブロック化のお話とも関連すると思いますが、アメリカ側の相手はUSTR(Office of the United States Trade Representative:アメリカ合衆国通商代表部)なのか国務省なのか。まあペンタゴンではないと思いますが、いずれにせよ、そもそもこれが本当に貿易のイシューだけに留まる話なのかと。その点も十分に考える必要があると私は思っています。




