「我々が、命を与えられ、生まれてきたからには、そこには、必ず、深い意味がある」(田坂)
冨山:私としては、企業にせよ社会にせよ、変えていかなければならないという状況に直面しているのであれば、その変えていく対象、つまり人間集団についてもう一度きちんと洞察したほうがいいと感じています。さきほどの田坂さんのお話と少し重なりますね。これは株主や完全債権者といった会社の圧倒的な支配者になってみないとよく分からないことですが、日本の平均的な日本人が集まる平均的な日本企業をお金のメカニズムで動かすというのは、実は大変効率が悪い。そこには恐らく、田坂さんのお話が背景にあるのだと思います。
それを変質させろというのは、はっきり言って余計なお世話ですよね。皆がお金を好きになる必要はないわけですから。どのみち、それをやろうとしても百年かかる。カネボウの人間を経済的インセンティブで動かそうと考えるぐらいなら、全員入れ替えたほうが早いでしょう。恐らくそういう視点から見ても、日本はやはり東洋ですし、東洋の中でも日本なんです。言霊というのは“やまとことば”の世界だと思いますが、そんな日本の企業に語りかけるとき、絶対に使ってはいけないのがアルファベットと漢字熟語。やまとことばじゃないと効かない。これは本当にそうなんです。
そこがまさに相手に対する洞察ということなんですが、例えば同じ化粧品メーカーでも、カネボウの方々は典型的な日本人集団。でも、たとえばエスティローダーにいる人たちはまったく異なるんです。そこでのかかわり方、かかわられ方。社会を変革していくとか、社会に働きかけるというのは、結局は人間同士で働きかけを行うということですよね。そのとき、そこにいる人間集団がどのような倫理観、歴史、伝統を持っているかということへの洞察が弱いと、いくら欧米的革命の方法論を持ってきてもワークしません。今なされている多くの議論には、その部分の洞察や想像力が足りていないと私自身は感じています。
さらにその観点でちょっと極端なことを言わせてください。私自身の今の世の中に対する気分としては、閉塞感を切り開くという意味では、まだ機は熟していない感じがしています。危機感というか、少なくとも19世紀の半ばから後半にかけて社会に溜まっていたであろうエネルギーレベルに近いところには達していない。そういったエネルギーが充満していなくても予防的にどうこうしようというのなら、それはインテリとしては正しい議論でしょうけれど、それは私は、下手をすると大塩平八郎の乱になってしまうと思っていて・・・。そこで死にたくはないので(会場笑)、やはり、ある程度は時を待ったほうが良いと思っています。ですから皆さん、そのときに備えて、死なないようにしていてください(笑)。
堀:ありがとうございます。田坂さんはいかがですか?
田坂:我々が、まず腹を定めなければならないのは、我々は、次の世代に対して何を語るべきか、ということです。たしかに、これからの時代は、数多くの困難が待ち受けています。地球環境問題や世界経済危機はもとより、地域紛争やテロの頻発、パンデミック、貧富の格差拡大など、多くの困難な課題が待ち受けています。
そうした状況において、我々は、次の世代に対して、「君たちは、苦労の多い、大変な時代に生まれてきた」と語るべきなのでしょうか。
私は、そうではないと思うのです。我々が語るべきは、まったく逆のことではないか。もとより、これは我々が腹を据えて語らなければ決して伝わらない言葉だと思いますが、本当は、この言葉を、心を込めて、次の世代の人々に贈ってあげたい。
「おめでとう。大変な時代がやってくる。しかし、その大変な時代だからこそ、君たちは成長できる。人間として最高の成長を遂げていくことができる。おめでとう」。そのことを、心を込め、伝えてあげたいのです。
そうではないでしょうか。これから次の世代が直面するのは、我々の世代が残してしまった数々の「負の遺産」です。それを残しておきながら、次の世代の人々に対して、「君たちは、気の毒だ」などと、決して語るべきではない。次の世代が生まれてきたことの意味を、我々の世代が、誰よりも深く理解し、見つめるべきではないのか。
我々は、何のために生まれてきたのか。我々が、命を与えられ、生まれてきたからには、そこには、必ず、深い意味がある。大切な使命がある。そのことをこそ、見つめるべきでしょう。
そうした視点から見つめるならば、次の世代には、大きな使命があることがわかる。
だから、彼らに、こう語ってあげたい。
「たしかに、これから大変な時代がやってくる。けれども、これからの苦労と困難に満ちた時代を超え、人類は大きな成長と進化を遂げていくだろう。新たな時代を切り拓いていくだろう。そして、その新たな時代の扉を開くのは、君たちだ。だから、誇りを抱き、胸を張り、未来に向かって歩んで欲しい。そして、君たちは、その歩みを通じて、一人の人間として、大きく成長していくだろう。このたった一度かぎりの人生を、最高の人生として歩んでいくだろう。我々は、魂ひとつ持って、この世にやってきて、魂ひとつ持って、この世を去っていく。その魂の成長を求め、これからの困難な時代を、勇気を持って歩んでほしい」
私は、次の世代に、そんなメッセージを伝えられるようなリーダーでありたいと、思っています。
堀:いまの田坂さんのお話を聞き、なぜ僕がいまワクワクしているのかが分かりました。この時代は面白いじゃないですか、と。この大変な時代に、面白いことをやってやろうと考えてワクワクしているんですね、僕らは。
冷静に力を蓄えつつ、確実に社会を変革していきたいと思います。本日は本当にありがとうございました。それでは皆さん、本セッションの終了にあたり、盛大な拍手をお願いいたします。
それを変質させろというのは、はっきり言って余計なお世話ですよね。皆がお金を好きになる必要はないわけですから。どのみち、それをやろうとしても百年かかる。カネボウの人間を経済的インセンティブで動かそうと考えるぐらいなら、全員入れ替えたほうが早いでしょう。恐らくそういう視点から見ても、日本はやはり東洋ですし、東洋の中でも日本なんです。言霊というのは“やまとことば”の世界だと思いますが、そんな日本の企業に語りかけるとき、絶対に使ってはいけないのがアルファベットと漢字熟語。やまとことばじゃないと効かない。これは本当にそうなんです。
そこがまさに相手に対する洞察ということなんですが、例えば同じ化粧品メーカーでも、カネボウの方々は典型的な日本人集団。でも、たとえばエスティローダーにいる人たちはまったく異なるんです。そこでのかかわり方、かかわられ方。社会を変革していくとか、社会に働きかけるというのは、結局は人間同士で働きかけを行うということですよね。そのとき、そこにいる人間集団がどのような倫理観、歴史、伝統を持っているかということへの洞察が弱いと、いくら欧米的革命の方法論を持ってきてもワークしません。今なされている多くの議論には、その部分の洞察や想像力が足りていないと私自身は感じています。
さらにその観点でちょっと極端なことを言わせてください。私自身の今の世の中に対する気分としては、閉塞感を切り開くという意味では、まだ機は熟していない感じがしています。危機感というか、少なくとも19世紀の半ばから後半にかけて社会に溜まっていたであろうエネルギーレベルに近いところには達していない。そういったエネルギーが充満していなくても予防的にどうこうしようというのなら、それはインテリとしては正しい議論でしょうけれど、それは私は、下手をすると大塩平八郎の乱になってしまうと思っていて・・・。そこで死にたくはないので(会場笑)、やはり、ある程度は時を待ったほうが良いと思っています。ですから皆さん、そのときに備えて、死なないようにしていてください(笑)。
堀:ありがとうございます。田坂さんはいかがですか?
田坂:我々が、まず腹を定めなければならないのは、我々は、次の世代に対して何を語るべきか、ということです。たしかに、これからの時代は、数多くの困難が待ち受けています。地球環境問題や世界経済危機はもとより、地域紛争やテロの頻発、パンデミック、貧富の格差拡大など、多くの困難な課題が待ち受けています。
そうした状況において、我々は、次の世代に対して、「君たちは、苦労の多い、大変な時代に生まれてきた」と語るべきなのでしょうか。
私は、そうではないと思うのです。我々が語るべきは、まったく逆のことではないか。もとより、これは我々が腹を据えて語らなければ決して伝わらない言葉だと思いますが、本当は、この言葉を、心を込めて、次の世代の人々に贈ってあげたい。
「おめでとう。大変な時代がやってくる。しかし、その大変な時代だからこそ、君たちは成長できる。人間として最高の成長を遂げていくことができる。おめでとう」。そのことを、心を込め、伝えてあげたいのです。
そうではないでしょうか。これから次の世代が直面するのは、我々の世代が残してしまった数々の「負の遺産」です。それを残しておきながら、次の世代の人々に対して、「君たちは、気の毒だ」などと、決して語るべきではない。次の世代が生まれてきたことの意味を、我々の世代が、誰よりも深く理解し、見つめるべきではないのか。
我々は、何のために生まれてきたのか。我々が、命を与えられ、生まれてきたからには、そこには、必ず、深い意味がある。大切な使命がある。そのことをこそ、見つめるべきでしょう。
そうした視点から見つめるならば、次の世代には、大きな使命があることがわかる。
だから、彼らに、こう語ってあげたい。
「たしかに、これから大変な時代がやってくる。けれども、これからの苦労と困難に満ちた時代を超え、人類は大きな成長と進化を遂げていくだろう。新たな時代を切り拓いていくだろう。そして、その新たな時代の扉を開くのは、君たちだ。だから、誇りを抱き、胸を張り、未来に向かって歩んで欲しい。そして、君たちは、その歩みを通じて、一人の人間として、大きく成長していくだろう。このたった一度かぎりの人生を、最高の人生として歩んでいくだろう。我々は、魂ひとつ持って、この世にやってきて、魂ひとつ持って、この世を去っていく。その魂の成長を求め、これからの困難な時代を、勇気を持って歩んでほしい」
私は、次の世代に、そんなメッセージを伝えられるようなリーダーでありたいと、思っています。
堀:いまの田坂さんのお話を聞き、なぜ僕がいまワクワクしているのかが分かりました。この時代は面白いじゃないですか、と。この大変な時代に、面白いことをやってやろうと考えてワクワクしているんですね、僕らは。
冷静に力を蓄えつつ、確実に社会を変革していきたいと思います。本日は本当にありがとうございました。それでは皆さん、本セッションの終了にあたり、盛大な拍手をお願いいたします。




