シミュレーションを提示してマネジメントに危機感を持たせる(木村)
尾関:白旗が上がっていても、受けられる案件かどうかという問題があります。先程の永沢さんのお話に出てきた、配牌がとんでもないというときには、流したほうがいいのではないかといった見極めは大切です。仕事だから結果を出さないといけない。
オーナーあるいは経営者と、何をもって成功とするかを決めることが、再生に携わるときの基本原則だろうと思います。失敗というのは結果なんですよ。失敗と決めたときに失敗になる。再生をやるときには、自分で考えられる限り、あるいは周りの知恵も使って、でき得ることをすべてやる。やったことに対する後悔は少ない。やらなかったことに対する後悔は大きい。そこが原理原則ではないでしょうか。
永沢:私はよく「神風は絶対に吹かない」と申し上げています。治療するのなら一日も早いほうがいい。内科的な投薬よりも、外科的な手術をした方がいいということを、いつも助言しています。それでも、なかなかすぐに申請をしようということにはならず、悪あがきしてしまうことが常だと思います。
そういうときには、本体の再生にかかるのは勇気がいるし大変だろうけれども、「シミュレーションをしてみませんか?」と言います。ある子会社もしくはある部門を、こういう形でプリパッケージ型で再生できれば、同じようなことが本体にも通じるはずではないかと。この部署は誰が見てもどうしようもない。であればここにまずここを治療して、うまくいけば次のステップで本体の大手術をしてみませんか、というようなアプローチをします。
結果的に本体についても、無事に再生案件に取りかかれたということもあります。なかなか手術に踏み切れずに、心肺停止になることもありますが、それは最終的には経営者の判断です。我々の役割としては、経営者に情報をきちんと提供して、選択肢を与えることしかありません。
林:非常に重要なご質問ですね。いま思い出したんですが、2005年頃にも経済産業省の審議会で、同じようなことを議論しました。どうすれば破綻してしまう、もしくは危機に瀕するもっと前の段階で、再生のプロセスはできるのか。そういうことをいろんな方々が集まって議論をしたんですが、どうも妙案はないようです。
先程のお話では大変おつらい状況にいらっしゃるようですけど、こうすればもっと早く白旗が上がるという案は、実のこところなさそうなんです。そういう意味では、シンプルな回答で心苦しいのですが、やはり社内にいる一人ひとりが、勇気を持って問題提起していくしかないと思います。
木村:私からも答えさせていただきます。一つは、問題を先送りしてしまうというところがあるように思います。決めるべきことを決め切れずに、そういう状況に陥ってしまうのではないでしょうか。
意識しているのは、このまま行くと将来どうなるか、を出来るだけ臨場感込めて伝えていくか、ということです。マネジメントの方に対して、このままいったらキャッシュが回るのか回らないのか、そして回らなくなることを想定した場合には、どんな打ち手を予め考えておかなければならないのか、ということをしっかりシミュレーションして見せてさしあげる。
仮に私的整理や法的整理ということを選択肢の一つとして考える、というケースがあったとしても、すぐに出来るわけではないですから、事前に準備しなくてはいけない。そのためには、何カ月前から何をすべきか、というストーリーを組み立てる。その場合には、会社として、マネジメントとして、従業員にとって、というなるべく詳細化した形で現実論を直視できるようにしてあげることが「カギ」と思います。
永沢:是非、補足したいのですが、よく「法的整理は最後の手段」というイメージを持たれるのですが、実は法的整理で企業価値が棄損するというのは、私は幻想ではないかと思っています。もしかすると会社更生とか民事再生というのは、むしろもっと早い段階で取るべき手段かもしれません。
これまでは会社更生の申し立てをすると、経営陣が全員辞めさせられて、株主責任も取るという流れで、突然面識もない弁護士が入ってくるようなストーリーだったんですが、今はDIP型の会社更生を申し立てることで、経営陣がそのまま残って手続きを行うこともできます。また、取引債権を保護する形で、金融債権だけを棄損させて、今までの取引関係を維持することも可能です。
また、100%減資しなくてもいい。つまり会社更生を申し立てたからといって、上場廃止する必然性もない。もう十分に株価が下がっているのだから、株主責任は取っている。そういう形で更生手続きができるとすれば、随分合理的な法的整理になるのではないでしょうか。
それは破綻処理ではなく、再生処理とも言えます。現にそういった形での試みがされていて、「是非、良い案件が来ないかな」と、裁判所も待ち構えているくらいです。しっかりとした会社が準備を整えて、良い形で会社再生をやれば、一つのエポックメイキングになるのではないかと思っています。
社会的価値のある、例えばソーラー発電の設備を製造する電気メーカーなどが、法的手続きを選択するというのも、あってもいいと期待しています。しかし、そういった会社は大概、ホワイトナイトが現われてしまいますが。万策尽きて法的手続きをするものではないということを、我々も啓蒙していきたいと思っています。
木村:最後にMBAを学ばれている皆さんへ、コメントをいただければと思います。




