パネリスト:
尾関好良 株式会社インテグリティ 代表
永沢徹 永沢総合法律事務所 弁護士
林竜也 ユニゾン・キャピタル株式会社 パートナー
ファシリテーター:
木村尚敬 株式会社経営共創基盤 ディレクター/グロービス経営大学院 准教授(ファシリテーター)
木村:本セッションは「企業再生の要諦と落とし穴」というテーマで進めていきます。
昨今は100年に1度の経済危機ということで、「再生」という言葉がクローズアップされています。ニュースなどで取り上げられる、GMやクライスラーのような世界的な大企業だけではなく、国内のごく小さな会社での再生もたくさん行われているはずです。今日は、実際にそうした企業再生の現場に長年携わってきたお三方に集まっていただきました。一言に再生といっても、関わるステージや関わり方は様々です。そこで自己紹介を含め、まずはどういった立ち位置で再生に携わってきたのかからお聞かせください。
尾関好良 株式会社インテグリティ 代表
永沢徹 永沢総合法律事務所 弁護士
林竜也 ユニゾン・キャピタル株式会社 パートナー
ファシリテーター:
木村尚敬 株式会社経営共創基盤 ディレクター/グロービス経営大学院 准教授(ファシリテーター)
木村:本セッションは「企業再生の要諦と落とし穴」というテーマで進めていきます。
昨今は100年に1度の経済危機ということで、「再生」という言葉がクローズアップされています。ニュースなどで取り上げられる、GMやクライスラーのような世界的な大企業だけではなく、国内のごく小さな会社での再生もたくさん行われているはずです。今日は、実際にそうした企業再生の現場に長年携わってきたお三方に集まっていただきました。一言に再生といっても、関わるステージや関わり方は様々です。そこで自己紹介を含め、まずはどういった立ち位置で再生に携わってきたのかからお聞かせください。
再生の成功確率は、決して高くない(尾関)
尾関:私は今、グロービスで「ストラテジック・リオーガニゼーション」というクラスを担当しています。中には既に私のクラスを受講して、同じような話を聞いている方もいるかもしれませんが、そのあたりはご容赦ください。
再生に関して私の立ち位置は3つに収斂されます。1つは、経営の本質は、それが再生の局面であろうが、そうでなかろうが、そんなには変わらないということ。経営に携わっていく中で、自分のやり方、考え方、哲学が出来上がってくるので、それをもう少し知恵を使って実行する。そういうスタンスが大切ではないかと思います。そして2つ目は覚悟。経営者としての覚悟が特に再生の場面においては重要です。最後は、何をもって成功とするかを最初に自分で見定めておくこと。再生の成功確率は、決して高くはありません。ですから、これを決めておくのが肝要なんです。
永沢:まず、本セッションの「企業再生の要諦と落とし穴」というタイトルですが、私は正直言って違和感があります。再生するべきは、「事業」であって「企業」ではないのではないか。企業を甦らせるのが我々の仕事ではなく、その中にある事業を立ち直らせるのが我々のミッションです。私は弁護士なので法律的な仕事をしていると思われがちですが、弁護士の資格は管財人になるために取りました。仕事の半分以上はおよそ法廷とは縁のない、事業再生の現場にあります。
私は栃木県足利市の材木屋の倅として育ちました。高校は、東京の私立校に進学したのですが、同級生のお父さんが勤めていた興人というパルプ会社が、忘れもしない1975年8月29日に倒産したのです。負債額は約2000億円。戦後最大の倒産と言われました。
「倒産」というと、私の育ってきた環境からすると、即ち「夜逃げ」というようなイメージがあったので、「2学期にはその同級生はもういないだろう」「私立高校に通うのはもう難しいだろう」と思っていたら、夏休み明け初日の9月1日から彼は学校に登校してきたんですね。しかも割と元気がいい。そこで、どうも会社更生法という法律があって、都心の社宅もそのまま住み続けられるらしい。若い弁護士が来て采配を振るっているなんていう話を、小耳に挟みました。会社更生法という法律があることも、管財人という仕事があることも、そのとき初めて知ったのです。そうであれば法学部に進んで、弁護士になるのも悪くないな、と思いました。
その後これまで、保険会社やゼネコン、ホテル、ゴルフ場などの再生をしてきました。最近では例えば、突然に破産した、あるアパレル上場会社の破産管財人を務めています。破産したのだからもう企業再生はあり得ないわけですが、ブランドとしてはまだ残っているものがあって、それを別な会社に事業譲渡する仕事に取り組んでいるところです。また例えば、ゼネコンの上場会社に会社更生法を適用し、DIP型手続きと言って、債務者となる経営者がそのまま残って経営再生をするやり方の法的なアドバイザーもしています。あるいは食品会社の民事再生の申し立てもしています。事案によって様々なステージがありますが、基本的には「瀕死期」から「止血期」の中で法的な対応をして、「再成長期」にバトンタッチをしていくというのが、私の立ち位置です(下図を参照)。

木村:「企業の再生ではなく事業の再生」という、非常に良い言葉をいただきました。私自身も自分の仕事を通じあくまでも事業を守るための再生が重要だと常々感じています。では林さん、お願いします。
林:私は、プライベートエクイティの仕事を始めて、今年で11年になります。
プライベートエクイティは間口の広い経営の考え方をするんですけれども、最初の数年間、特に2003年ぐらいまでは、「企業再生」ないし「事業再生」が大きなテーマになってきました。その後、世の中の状況は良くなってきていたので、どうしたら投資ファンドとして「成長」をサポートできるのかを問われることが多くなりました。ところが昨年の後半からまた、「再生」がテーマになりました。
プライベートエクイティというのは、基本的に会社の経営権を人に渡して、そしてゴーイングコンサーンの危機を乗り切ることだと考えています。それから企業再生に対する関わり方という意味では、例えば尾関さんのように、再生企業のCFO(最高財務責任者)として現場で活躍するマネージャーの立場ではなく、企業再生のためのストーリーを描いて、そのために必要な経営リソースを集め、そこにお金をつけて、全体を進行させる。映画制作で言えば、プロデューサー的な仕事です。したがってこのセッションでは、経営への関与という意味では一歩引いた立場で、同じトピックについても異なる観点からの意見が出せればと思います。
木村:ありがとうございました。それぞれいろいろな角度から再生に携わっているパネリストの方々です。再生のフェーズとして、まず「混迷期」のところでP/L(損益計算書)、C/F(キャッシュフロー計算書)が落ちてきます。大方の会社では、こういうフェーズがあるでしょう。ここで苦境から脱することができなければ、その先にB/S(貸借対照表)まで痛んで、瀕死の重傷になって何がしかの手術をしなければならなくなると思います。それでは最初の質問です。こういった「瀕死期」に入って再生を要する企業の特徴をお伺いします。
再生に関して私の立ち位置は3つに収斂されます。1つは、経営の本質は、それが再生の局面であろうが、そうでなかろうが、そんなには変わらないということ。経営に携わっていく中で、自分のやり方、考え方、哲学が出来上がってくるので、それをもう少し知恵を使って実行する。そういうスタンスが大切ではないかと思います。そして2つ目は覚悟。経営者としての覚悟が特に再生の場面においては重要です。最後は、何をもって成功とするかを最初に自分で見定めておくこと。再生の成功確率は、決して高くはありません。ですから、これを決めておくのが肝要なんです。
永沢:まず、本セッションの「企業再生の要諦と落とし穴」というタイトルですが、私は正直言って違和感があります。再生するべきは、「事業」であって「企業」ではないのではないか。企業を甦らせるのが我々の仕事ではなく、その中にある事業を立ち直らせるのが我々のミッションです。私は弁護士なので法律的な仕事をしていると思われがちですが、弁護士の資格は管財人になるために取りました。仕事の半分以上はおよそ法廷とは縁のない、事業再生の現場にあります。
私は栃木県足利市の材木屋の倅として育ちました。高校は、東京の私立校に進学したのですが、同級生のお父さんが勤めていた興人というパルプ会社が、忘れもしない1975年8月29日に倒産したのです。負債額は約2000億円。戦後最大の倒産と言われました。
「倒産」というと、私の育ってきた環境からすると、即ち「夜逃げ」というようなイメージがあったので、「2学期にはその同級生はもういないだろう」「私立高校に通うのはもう難しいだろう」と思っていたら、夏休み明け初日の9月1日から彼は学校に登校してきたんですね。しかも割と元気がいい。そこで、どうも会社更生法という法律があって、都心の社宅もそのまま住み続けられるらしい。若い弁護士が来て采配を振るっているなんていう話を、小耳に挟みました。会社更生法という法律があることも、管財人という仕事があることも、そのとき初めて知ったのです。そうであれば法学部に進んで、弁護士になるのも悪くないな、と思いました。
その後これまで、保険会社やゼネコン、ホテル、ゴルフ場などの再生をしてきました。最近では例えば、突然に破産した、あるアパレル上場会社の破産管財人を務めています。破産したのだからもう企業再生はあり得ないわけですが、ブランドとしてはまだ残っているものがあって、それを別な会社に事業譲渡する仕事に取り組んでいるところです。また例えば、ゼネコンの上場会社に会社更生法を適用し、DIP型手続きと言って、債務者となる経営者がそのまま残って経営再生をするやり方の法的なアドバイザーもしています。あるいは食品会社の民事再生の申し立てもしています。事案によって様々なステージがありますが、基本的には「瀕死期」から「止血期」の中で法的な対応をして、「再成長期」にバトンタッチをしていくというのが、私の立ち位置です(下図を参照)。

木村:「企業の再生ではなく事業の再生」という、非常に良い言葉をいただきました。私自身も自分の仕事を通じあくまでも事業を守るための再生が重要だと常々感じています。では林さん、お願いします。
林:私は、プライベートエクイティの仕事を始めて、今年で11年になります。
プライベートエクイティは間口の広い経営の考え方をするんですけれども、最初の数年間、特に2003年ぐらいまでは、「企業再生」ないし「事業再生」が大きなテーマになってきました。その後、世の中の状況は良くなってきていたので、どうしたら投資ファンドとして「成長」をサポートできるのかを問われることが多くなりました。ところが昨年の後半からまた、「再生」がテーマになりました。
プライベートエクイティというのは、基本的に会社の経営権を人に渡して、そしてゴーイングコンサーンの危機を乗り切ることだと考えています。それから企業再生に対する関わり方という意味では、例えば尾関さんのように、再生企業のCFO(最高財務責任者)として現場で活躍するマネージャーの立場ではなく、企業再生のためのストーリーを描いて、そのために必要な経営リソースを集め、そこにお金をつけて、全体を進行させる。映画制作で言えば、プロデューサー的な仕事です。したがってこのセッションでは、経営への関与という意味では一歩引いた立場で、同じトピックについても異なる観点からの意見が出せればと思います。
木村:ありがとうございました。それぞれいろいろな角度から再生に携わっているパネリストの方々です。再生のフェーズとして、まず「混迷期」のところでP/L(損益計算書)、C/F(キャッシュフロー計算書)が落ちてきます。大方の会社では、こういうフェーズがあるでしょう。ここで苦境から脱することができなければ、その先にB/S(貸借対照表)まで痛んで、瀕死の重傷になって何がしかの手術をしなければならなくなると思います。それでは最初の質問です。こういった「瀕死期」に入って再生を要する企業の特徴をお伺いします。




